『わたし史上最高のおしゃれになる!』『お金をかけずにシックなおしゃれ』などの著書があるファッションブロガー小林直子さんが、愛用しているアイテムをご紹介します。
ファッションの悩みは千差万別だけど、共通しているのは
どんな美男美女にも、どんなお金持ちにも、生きている限り何かしら悩みがあるもの。しかしその悩みがどんなものなのか、私たちにはわかりません。
本当の悩みなどというものは、誰かから聞かれたからといって簡単に答えるようなものでもない。私たちはただただ、想像するしかありません。しかも想像したからといって、それが合っているかどうかはわかりません。
私のファッションレッスンを受けにいらっしゃる、20代から60代の男女のクライアントさんたちの悩みも千差万別。お話をうかがうまでは、一体どんな悩みがあるのか聞いてみるまで私にはわかりません。
もちろん多くの人の共通の悩みというのもあります。今の日本で生活している人にとってのおしゃれに関する大きな悩みは「十分なお金がなくておしゃれ」ができないというもの。
なぜそれがわかるかといったら、「家計調査」という統計を見たから。可処分所得の減少とともに、年々、被服費も減っています。少ない被服費の中でどうおしゃれをするのか、それがここ何年間かの多くの人の悩みだと推測できます。しかしそのほかに共通の悩みがあるかどうかは、私には知る由もないのです…。
洋服における「女性らしさ」の表現で悩む人が多いよう
さて、私は長年『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』という題名でブログを書いています。このブログは誰かから命令されて書いているわけではないので、その時々で思いついたことを気の向くままに書き散らかしています。
あるときふと、そういえばまだ洋服における女性らしさの表現について書いていなかったな、と思いました。女性らしいとかフェミニンとか、女性誌やファッション誌ではよく取り上げられるテーマです。
画像もほとんどなく、文章ばかりの私のブログで、わざわざ取り上げることもないのではないかと思っていたので、今まで特に書くことはしませんでした。ところがそのときはなんとなく、「女性らしさ」の表現について書きたいな、と思ったので書いたところ、驚いたことにアクセス数が通常の10倍もありました。
どうやら多くの人が洋服を着てどうやって「女性らしさ」を表現したらいいのか、悩んでいるようなのです。
洋服における「女性らしさ」の表現とは、何のことはない、男性が着ないものを選んで着ることなのですが、最近のカジュアル服の流行りで、ジーンズ、Tシャツ、スニーカーに代表されるような、男性と全く同じ服装の女性がふえたため、皆さん、わからなくなってしまったようです。
男性芸人が女性キャラクターを演じるときの服装を見てみると
「女性らしさ」の表現で私がいつも感心するのは、男性の芸人さんたちが女性のキャラクターを演じるときのスタイル。
特にいつも女性にしか見えないわ、と感心するのがコットンきょんさん。きょんさんはいろいろな女性キャラクターを演じるのですが、服装、髪型、メイク、言葉遣いで、女性にしか見えないキャラクターばかり。特に最近の私のお気に入りはきょんさんが演じる「エディターえり子」。気配りが素晴らしいエディターえり子、本当に存在していそうです。
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なぜ生物学的には男性とされている人が服その他によって「女性らしさ」を表現できるのかというと、洋服の世界ではルールが決まっているからです。
これは一種のゲームのようなものだと考えればいいでしょう。このゲーム内で「女性」を演じるためにはこういう服装を着用すること、と決まっています。芸人の皆さんはそれを熟知しているから、いろいろなキャラクターの女性を表現することができるのです。
今では女性らしいと思われているフリルもレースもタイツもヒール靴もスカートも、ピンクも赤も、歴史的には男性も着用しています。
肉体がどうであるかの問題ではありません。ゲームのルールは時代によって変わってきますが、基本的には「男性が通常着用しないもの」が「女性らしさ」の表現として使われます。ゲームのルールの中では何を着れば「女性らしさ」になるかは決まっている、ただそれだけのこと。
誰にでもわかりやすい「女性らしさ」を表現する1枚
私が持っているヴェロニク・ブランキーノのジャンパードレスも、そんな女性らしさを表現するのにぴったりの1枚。
起毛してふわふわした素材、ぱっきりと明るい黄色、袖なし、そして何よりドレスであるということなど、1枚にぎゅっと「女性らしさ」を詰め込んだこのドレスで11月の街を歩くと、街行く人の目がこちらにくぎ付けになっていることがよくわかります。
友達にも貸してみましたが、同じことを経験しました。とにかくこのドレスは誰にでもわかりやすい「女性らしさ」なのです。
女性らしさの表現は洋服というゲームのルールの中で決まっている。女性らしさを表現したい人はそれを利用すればいい。表現したくない人は逆なことをやればいい。
多くの人が悩んでいるようですが、コットンきょんさんを見習って、お悩みの方はチャレンジしてみるといいのでは? それほど難しいことではないと思います。
◆ドレス(筆者私物):ヴェロニク・ブランキーノ
<文/小林直子>
【小林直子】
ファッション・ブロガー。大手ブランドのパターンナー、大手アパレルの企画室を経て独立。現在、ファッション・レッスンなどの開催や、ブログ『誰も教えてくれなかったおしゃれのルール』などで活躍中。著書『わたし史上最高のおしゃれになる!』など。
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