11月23日(土) 4:20
そもそも不動産売却時の税金はどのように課税されるのでしょうか? 売買契約に伴う印紙税などを除けば、売却に伴う税金は、売却の翌年に給与などほかの所得とは分離されて所得税(復興特別所得税含む)と住民税が課税されます。
ただ、課税されるのは売却代金ではなく、あくまでも売却によって得た利益である「譲渡所得」です。「譲渡所得」を算出するには、まず、売却代金である譲渡価額から「取得費」や「譲渡費用」を差し引きます。
「取得費」は売却した不動産を当初取得した際にかかった経費であり、不動産の購入代金やその際の仲介手数料などの合計です。逆に「譲渡費用」は売却時に不動産会社に支払う仲介手数料や測量費、建物解体費用など今回の売却にかかる経費になります。
さらに一定の要件に該当し「特別控除」の適用を受けられれば、その控除額を差し引くことが可能です。そのため課税される譲渡所得金額の計算式は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(該当する場合)」となり、この金額に税率を掛けたものが所得税額や住民税額になります。
税率は不動産の所有期間で異なり、5年を超えていれば「長期譲渡所得」として所得税15.315%、住民税5%となり合計20.315%です。相続の場合の所有期間は被相続人である親の所有期間を引き継ぐため、築40年の実家の売却ではこの税率が適用されます。
では、自宅の売却と相続した実家の売却の2つについて、どのような場合に税金の差が生じるのでしょうか。実は自宅の売却時には「マイホームを売ったときの特例」として3000万円を上限とした特別控除があります。
そのため、居住用として使っていた自宅の売却であれば、3000万円までの譲渡所得は相殺できます。そのため、自宅の購入時から不動産価格が大きく上昇するなどの要素がなければ、自宅の売却に税金がかかることは少ないでしょう。
一方、相続した不動産の売却にも「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」として、自宅の売却同様3000万円を上限とした特別控除があります。
しかし、この「空き家特例」の対象となる家屋には、「昭和56年5月31日以前に建築」「区分所有以外の建物」「相続時に被相続人以外は居住していない」の3つの要件全てを満たすことが必要です。そのため、築40年の建物の場合は、昭和59年ごろに建築されているため空き家特例は適用できません。
また、相続で取得した不動産は、所有者が親であったことや、年数がかなり経っていることで取得費の詳細が分からないこともあります。取得費が分からない場合は譲渡価額の5%の取り扱いとなってしまい、税額が大きくなる可能性があります。
このように、相続した実家の売却では自らが所有する自宅の売却とは違い、多額の税金が課税される可能性もあります。それではどうすれば、少しでも節税できるでしょうか?
まず、親が不動産を購入したときの書類など、購入経費の手がかりを丹念に探してみましょう。取得費が判明すれば、譲渡所得を減らして税金を抑えられる可能性があります。
また、相続にあたって相続税を支払っている場合は「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が活用できないか検討してみましょう。この特例の適用を受けられれば、支払った相続税のうち一定の金額を取得費に加算できるため、譲渡所得を減らすことで節税につながる可能性があります。
相続した実家の売却は、自宅の売却と比較すると、状況次第では売却時の税金がかかりやすくなります。しかし、活用していない実家は、維持管理の費用や固定資産税などがかかり続け、遠方であれば管理そのものが難しいこともあるでしょう。
思い出が詰まった実家であれば、売却をためらったり、遺品の整理などに手間がかかったりすることもあるかもしれません。しかし、空き家になるようなら売却を前向きに考えることも大切です。まずは実家の資産価値や取得時の書類を調べ、不動産会社などに売却を相談してみてはいかがでしょうか。
国税庁 土地や建物を売ったとき
執筆者:松尾知真
FP2級
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