11月23日(土) 4:10
通常、財産を受け取ると1年間で受け取った金額の合計が110万円を超えていれば贈与税が課されます。
しかし、仕送りを生活費のために使用していれば課税はされないと考えられます。国税庁によると、「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」は贈与税がかからない財産とされているためです。病気やけがの治療費も生活費に含まれます。
ただし、非課税となるのは生活費として「必要な都度直接」仕送りが使われたときです。生活費として送られても、貯金に回すと課税対象になる可能性があります。
生活に必要な分は贈与税の課税対象にならないため、税額を計算するためにはまず受け取ったお金から生活費を差し引いた金額を求めます。生活費以外の仕送りと同じ年に受けた贈与を合算した金額から基礎控除額である110万円を引いた額が課税対象です。
総務省統計局が公表している「家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要」によると、65歳以上かつ夫婦のみの無職世帯の食費や水道光熱費といった平均消費支出は、月額25万959円でした。さらに、税金や保険料などの非消費支出は月額3万1538円なので、月額の支出は平均28万2497円です。
日本年金機構によると、令和5年度における夫婦2人が受け取る標準的な年金額は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を含めて合計22万4482円でした。月額の平均支出と比較すると、5万8015円不足する計算です。
先述した支出の不足金を補うために、2人の子どもから毎月5万円ずつ送金してもらったとしましょう。計10万円のうち、不足している5万8015円を仕送りから補い、残額4万1985円を貯金したとすると、仕送りのうち年間50万3820円が贈与の対象になります。
年間110万円を超えていると贈与税の課税対象なので、仕送り以外に59万6180円を超える贈与があれば贈与税の納付が必要です。今回は、以下の条件で贈与税の金額を計算しましょう。
・贈与対象となる仕送りが年50万3820円
・同年に仕送り以外の贈与が100万円
条件を基にすると、課税対象になる贈与額は合計150万3820円です。そのため、基礎控除の110万円を引いた40万3820円に対して課税されます。国税庁によれば、今回のケースだと税率は10%なので、贈与税額は4万382円です。
贈与税はその年の1月1日から12月31日までの1年間で受け取った贈与の合計額を基に計算されます。仕送り額だけ、あるいはほかの贈与だけでは110万円を超えていなくても、合計額が超えていれば課税対象です。
それぞれ受け取った金額が110万円を超えていないからと放置していると、あとから過少申告や無申告として追加で税金が課される可能性があるため、注意しましょう。
仕送りは口座に直接送金してもらったうえで何に使ったかを明確にしておき、同年に仕送り以外の贈与を受け取っているときは合計額がいくらかをこまめに計算しておくことが大切です。
老後に必要な生活費を年金で賄えないときは、子どもからの支援も選択肢のひとつです。生活費のための仕送りであれば、非課税で受け取れるでしょう。
ただし、生活費として送られていても貯金に回したり目的外の用途に使用したりしたときは、課税対象となる可能性があります。年間の贈与額が110万円を超えていると贈与税の納税が必要なため、受け取る金額はしっかりチェックしておきましょう。
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2023年(令和5年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯)図1 65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支 -2023年-(18ページ)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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