『ハイキュー‼』×SVリーグコラボ連載(16)
広島サンダーズ フェリペ・モレイラ・ロケ
(連載15:Astemoリヴァーレ茨城の雑賀恵斗は「王様」影山飛雄を見て思う「セッターはスパイカーの気持ちを汲み取ってこそ」>>)
(c)古舘春一/集英社
サッカー大国、ブラジルで生まれただけに、幼い頃に立っていたのはバレーボールコートではなかった。
「サッカーではいい選手じゃなかったね(笑)。小学校の頃はGKをやっていたんだけど、あまり向いていませんでした。ストライカーをやっていたら?いや、体の大きさを生かすんだったら、バレーでよかったよ」
フェリペ・モレイラ・ロケは、そう言って大きな目をくりくりとさせた。バーリトゥード(「何でもあり」という意味の総合格闘技)もやっていただけに、鍛えられた大きな体躯は迫力満点だが、少しも周りを威圧しない。柔和で、謙虚で、誠実な印象だ。
「バレーは15歳で始めました」
フェリペは言う。212cmの身長は天分だろう。
「始めるタイミングが遅かったので、うまくなるためには周囲の倍以上の練習をしなきゃいけない、と思っていました。最初の3年間は、『ノー グッド』って怒られてばかりいましたね(苦笑)。アタックは、自分が打ってもアウトになるかネットにかかってしまったので、対戦相手からは『ブロック要らないぞ』という野次も飛んできて......」
しかし、彼はハードワークが実を結ぶことを信じていた。だからこそ、人気バレー漫画『ハイキュー‼』の世界観にハマったという。
「主人公である日向(翔陽)には共感しました。日向にはジャンプ力が、自分には高さがありましたが、それだけではダメ。足りなかったものをどうにかするため、何倍も努力が必要になるんです。だから、日向の成長には勇気づけられましたし、自分と重なるものがありました。自分は速く動けなかったけど、少しでもできるようになって成長したので」
ブラジルでは強烈なサーブとスパイクを引っ提げ、7チームを渡り歩いてきた。2019年にはブラジル代表としてワールドカップ優勝、2022年には世界選手権で銅メダル。南米有数のオポジットとして、今シーズンは日本の名門チームに迎えられることになった。
――来日の目標は、やはり優勝ですか?
そう訊ねると、フェリペは明るく笑みを洩らしながら答えた。
「もちろん!今は優勝するためにハードワークしていますよ。アタック、ブロック、サーブという持ち味を出したいですね。ただ、日本はディフェンス力がものすごく高い。ブロックもすばらしく、"本当にボールが落ちない"という難しさがあるから、そこでどう戦っていくか。自分は機敏に動けるわけではないけど、前に落ちてくるボールはしっかり上げて繋がないといけない。ディフェンスの質も高めていきます」
できないことに何度も何度も挑み、やがて克服することこそ、フェリペのバレー人生だ。
【フェリペ・モレイラ・ロケが語る『ハイキュー!!』の魅力】
――作品の魅力とは?
「自分の体験と重なる点ですかね。たとえば、強い相手とどう戦うかなど。それに、(ブラジル)代表に入って、上のレベルの選手と一緒になった時にどう自分を表現するのかとか......いろんな場面が重なりました。とにかくリアル。ブラジルでも、バレーボール関係者の間では人気ですよ」
――共感、学んだことは?
「日向が『もう一回!!』って言うシーンは好きですね。自分も練習でできなかった時、もう一回、もう一回とトライしてきたので。できるまでやるというのは共感できます」
――印象に残った名言は?
「さっきの『もう一回!!』というセリフも好きですけど、作品のなかで『頑張ってみよう』というシーンが何度もあるのもいいですね。同じ練習の繰り返しだったり、大きなチャレンジに向けて疲れている時だったり、自分をあらためて奮い立たせる日本語だなと思い、覚えました」
――好きなキャラクター、ベスト3は?
「1位が日向で、2位は牛島(若利)。牛島は同じポジションで、同じレフティで、シリアスで強い男の感じがいいですね(笑)。3位はセッターの影山(飛雄)。本当にスマートな選手ですね。セッターは特別なポジション。オポジットの自分は、試合でボールにタッチする回数は50回くらいですが、セッターは毎回のようにトスがあるからその2、3倍。頭を使うポジションですが、影山はいいセッターです」
――ベストゲームは?
「烏野vs白鳥沢学園ですね。烏野目線で、牛島と対決する視点で読みました(笑)。強い相手とどう戦うか、リードされた状況でどう振る舞うか。たとえば自分たち(広島)も、王者のサントリーが相手だと、ドミトリー・ムセルスキーという大砲がいるので、そんな力のある選手にどう対応するかを常に考えながらプレーする。烏野の選手たちのような気分です(笑)」
【プロフィール】
フェリペ・モレイラ・ロケ
所属:広島サンダーズ
1997年5月19日生まれ、ブラジル出身。212cm・オポジット。15歳からバレーボールを始める。ブラジルで7チームを渡り歩き、ブラジル代表としては2019年にワールドカップ、2022年には世界選手権での金メダル獲得に貢献した。2024年5月、広島サンダーズへの入団が発表された。
【関連記事】
女子高生プロレスラー山岡聖怜・インタビューカット集
国立競技場が世界一のスタジアムである理由 神宮外苑地区の樹木伐採はその価値を貶める
【ハイキュー!!×SVリーグ】Astemoリヴァーレ茨城の雑賀恵斗は「王様」影山飛雄を見て思う「セッターはスパイカーの気持ちを汲み取ってこそ」
鍵山優真、坂本花織、りくりゅう...2024NHK杯フォトギャラリー
【ハイキュー!!×SVリーグ】Astemoリヴァーレ茨城の長内美和子が語る中心選手としての覚悟 落ち込んだときの支えは田中龍之介の言葉