女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「びっくり体験」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2022年11月17日記事は取材時の状況)
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「オタサーの姫って、何歳になったら姫じゃなくなるの?」
取材中に真顔で質問を投げかけてきたのは、都内に住む吉村美央さん(仮名・32歳)。
そもそも“オタサーの姫”とは、比較的男性の割合が多く、かつオタクと呼ばれる人たちが集まりやすい同好会やサークルに属する女性のこと。男性が多いのでアイドル的扱いを受けることが多く、その様子から「姫」と呼ばれています。
社会人の登山サークルで“オタサーの姫”状態に
吉村さんが所属しているのは、登山好きの社会人が集う登山サークル。そのうち女性は1割ほどのため、自然とちやほやされるようになり、結果的に姫扱いをされることが増えたようです。
「べつに私は特別扱いは求めていないんですよ。でも、
勝手に周りのおじさんたちが過保護になんでもやってくれちゃう
。登山初心者の私に合わせて、登りやすい山をピックアップしてくれて、スケジュール表やペース配分を考えて事前に資料をくれたり。
“行動食”っていって、のぼりながらエネルギー補給で食べる軽食も、都内のちょっと有名なラスクやマカロンをいくつも買ってきてくれて、『どれが好きか分からないから、選んで』って選ばせてくれるんです。頼んでないのに(笑)」
登山にマカロン……。すぐ崩れそうですが、それでも男性たちは『女の子が好きそうなおしゃれな食べ物』をわざわざ買ってきてくれるそうです。
登山中はペットボトルしか持ったことない
「それに毎回ご飯もすごいんですよ。山の上に大きいコンロや炭火のBBQセットを運んでくれて、高い和牛のステーキを焼いたり、車エビとほたてのアヒージョを作ったりとか。フランスパンと、お取り寄せしたバターにワインとかも用意してくれて。
火が使えない場所だったら、峠の茶屋とか現地のごはんどころで、フルコースかっていうくらい好きなものを食べさせてくれる。もちろんおごり。頼んでないのに……(笑)」
この、「頼んでいないのに」は吉村さんの口ぐせだとか。とにかく至れり尽くせり状態で、「
登山中の荷物は全部男性たちが分担して持ってくれるので、ペットボトルしか持ったことがない
」そう。
さらに、「お気に入りの可愛い登山靴に、泥がつくのがいや」という理由で、にわか雨が降ったあとは男性に“おぶられて”登山をしたとか。
「一体なんで山にきた?!」と喉まで出かかった言葉を飲み込み、取材を続けます。
山までの道のりも「姫はゼロ円」
姫の特別扱いは、登山にかかる交通費も例外ではありません。
「え、だって新幹線や飛行機を使うわけじゃないし、道路走るのってそこまでお金かからないじゃないですか(笑)。車は誰かが出してくれるし、ガソリンだっていつの間にか入れてくれているから、まあいいのかなって。割り勘したら微々たる額だし。でもこっちが頼んでるわけでもなくて、勝手にやってくれてることですからね。だから
特別お礼とかは面倒なのでしていません
」
それこそ、ちりも積もれば“山”となるのですが……。
しかし、最近吉村姫を頂点とした登山サークルのヒエラルキーに、ある異変が起きているそうです。ズバリそれは、“姫の新旧交代”劇です。
新しい“姫”がやってきて、転落が始まった
「最悪ですよ。24歳の生意気な子が入ってきて、しかも登山経験者とかでバリバリ体育会系なんです。私は文系だから話も合わないし、筋トレとか登山グッズの話ばかりでつまらない。男どもも専門用語を使って勝手に盛り上がっちゃって、私のことを前ほど気にかけてくれない。
この間なんて、ごはんも行動食も用意してくれなくて、『荷物を持とうか』っていう最低の気遣いもなくて。レディーファーストが皆無なんですよ! さらにガソリン代も普通に請求されちゃって、もうなんなの!?って……」
サークル内の構造が入れ替わり、ちやほやされることが少なくなってしまった吉村さん。
仕方なく数少ない女性メンバーと交流をはかりますが、
それまでのワガママっぷりから仲良くしようと声をかけてくれる人はいなかった
そうです。
“姫は女王にはなれない”と言われハッとした
「正直もう辞めようと思って、サークルの副リーダーのおばさんのところに行ったんです。40代後半くらいかな。辞める理由は『人間関係が辛くなった』って伝えました」
すると、今まで姫の行いを見ても黙っていた副リーダーからこんな言葉が……。
「『あなたね、“姫は女王にはなれない”のよ』って。家に帰ってじっくり考えてみました。結局私より若い子が入ったら、みんな手のひらを返したようにそちらに行ってしまって。そして私のことは放置状態ですよね。
サークルの姫っていう自覚は自分ではありませんよ。でも、冷静に振り返ってみると、若い子に勝てる要素なんてありません。そして
女王になるような知識や経験も、人徳だってあるわけじゃないし
……。その女性の言葉が痛いくらい沁みました」
人からの好意を“当たり前”と思ってしまっていた
サークルを辞めた今も、ときどきその言葉を思い出して自分を見つめなおしているとか。
勝手に姫としてまつりあげて、いらなくなったら放置する側もどうかと思いますが、人からの好意を“当たり前”と思ってしまう、姫も、姫。
相手の好意を“当たり前のこと”と思った瞬間から、関係がゆがみ始めてしまうのかもしれませんね。
<取材・文&イラスト赤山ひかる>
【赤山ひかる】
奇想天外な体験談、業界の裏話や、社会問題などを取材する女性ライター。週刊誌やWebサイトに寄稿している。元芸能・張り込み班。これまでの累計取材人数は1万人を超える。無類の猫好き。
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