11月22日(金) 18:00
健康的な生活を送るのに大事なのは、適度な運動、バランスのとれた食事、じゅうぶんな睡眠です。しかし日々の生活を振り返ってみると、こんなにシンプルなことなのに、難しさを感じている人も多いはず。
運動をしようと思っても面倒くさかったり、体に悪いものほど食べたくなったり、ついスマホを見てしまいちゃんと眠れていなかったり......。その結果、埋め合わせをしようとして、張り切っていつもの倍以上の運動をしてみたり、1日1食にしてみたりと、過激な方法をとってしまいがちです。そして3日坊主でやめて自己嫌悪、までがワンセット。なぜなのでしょうか......。
そんな負のスパイラルから抜け出すために読んでおきたいのが、書籍『Life is Wellness「健康な生き方」の科学』です。著者は、不調を改善する「ゼロトレ(ZERO TRAINING)」を考案したことでも話題になった石村友見さん。ハーバード大学医学部「Health and Wellness」で世界最先端の栄養学、コミュニケーション学を学び、延べ5万人に健康指導をしてきたウェルネスの第一人者です。同書では、科学的データに証明された病気にならない健康習慣を惜しみなく紹介しています。
ここでは運動について解説した章の一部を紹介します。
そもそも運動を面倒くさいと感じるのは、人間に備わっている「現状維持バイアス」と「確証バイアス」が大きく影響しているようです。
「現状維持バイアス」は文字通り、今の状況が変わるような出来事を避けて、現状を維持しようとする心理的傾向のことです。石村さんは、現状維持バイアスが働きやすい人の特徴を以下のように記します。
・レストランでいつも同じメニューを注文する
・毎日の生活パターンがほとんど変わらない
・週末は出かけるより家で寝ていたい
・職場で「新しい方法」を試すように言われることがストレス
・ルールを変えることに抵抗がある
・「もう少し考えてからにしよう」と思いがち
(同書より)
そして自分に都合のいい情報ばかりを集めてしまう心理的傾向が「確証バイアス」です。
たとえば、健康のために筋トレを始めようと思っても、「筋肉痛になったら明日の仕事に響くかも」「疲れてしまってこのあとの作業ができなくなるかも」など、いつもの生活が崩れることを恐れる「現状維持バイアス」が働き、行動しなかったとします。
そうすると、自身のおこないを肯定するために「確証バイアス」が働き、「筋トレをしてもムダだ」「正しく筋トレをしないと体を壊す」など、「筋トレをしなくてよかった」「行動しない選択は間違いじゃない」という思考に切り替えてしまうのです。これは運動以外にも、英語が話せるようになりたいのに勉強していない、投資をしたいと思っているのに行動していないなど、さまざまな場面で見られます。
そこで石村さんは、こうしたバイアスがあることを理解しつつ、少しずつ習慣化させることが大事だと説きます。おすすめは「スナック運動」。
普段歩かない人が「1日1万歩歩くぞ!」と目標を掲げても挫折してしまう人がほとんどでしょう。しかしスナック(軽食)を食べる感覚でスキマ時間に体を動かすことで習慣化しやすくなるそうです。そのため最初は「1日100歩」から始めてもいいとのこと。
石村さんの運動嫌いの知人は、「ゴミが溜まったら歩く」「ゴミが溜まっていない日は歩かなくていい」という小さな目標から始めて、ゴミを出すついでに5~10分だけ歩くようにしたところ、歩くのが好きになり、運動が習慣化したそうです。最初から気合いを入れ過ぎてしまう人は、やらないよりマシかなと思える程度の「スナック運動」から少しずつ始めてみてはいかがでしょうか。
さらに「体に悪いものほど食べたくなる」理由も同書で解説されています。石村さんは、"野菜や果物は食べすぎないのに、なぜポテトチップスは止まらないのか"について、ミシガン大学心理学部の准教授アシュリー・ギアハートの研究結果を紹介しながら、こう記します。
「最も快感をもたらす成分を精製し、血流にすばやく吸収される製品に仕上げることで、脳を活性化し、満足させる作用が強められている。(中略)これだけ計算されて作られているのだから、おいしいに決まっている。こうして添加物によって『中毒化』させていく手法は、ギアハート曰く『タバコと手口は同じ』」(同書より)
この「止まらない現象」を抑えて、何をどう食べればいいのかについては、ぜひ同書を読んで確かめてみてください。食べ過ぎないテクニックや2週間の「ウェルネス・フード」のススメなどが紹介されています。
同書では他にも、"睡眠不足の人は嘘をつきやすくなる"という実験結果や、誰か1人に親切にするとそれが波のように広がり間接的に64人を助けることになるという研究結果など、ウェルネスに関する非常に興味深い情報が満載です。
健康や美容のために頑張ってきたのに、けっきょくいつもうまくいかない......という人は、この機会にぜひ同書に目を通してみてください。生活習慣を改善するヒントがきっと見つかるはずです。
[文・春夏冬つかさ]