ソロキャンプや車中泊の楽しさを伝えるYouTubeチャンネル「まるみのキャンプと車中泊」が人気を博している。発信者であるまるみさんのサバサバとしたユニークなキャラクターも功を奏し、チャンネル登録者は9.67万人(2024年11月20日現在、以下同)に上る。
元来アウトドア派というわけではなかったというまるみさんが、なぜソロキャンプや車中泊を始め、YouTubeチャンネルが多くの人々に支持されているのか。その理由を聞いた。
退職日を決め、ギアを買いあさっていた
――まるみさんの活動エリアはどのあたりですか?まるみ:愛知県、岐阜県、三重県などは、自分が住んでいる場所からアクセスがいいのでよく行きます。
――東海地方は全国的にキャンプが盛んな地域なのでしょうか?まるみ:キャンプが好きな方が比較的に多いと思います。私がいる愛知県は車社会ですし、ちょっと高速道路を走れば岐阜県や三重県、静岡県とキャンプ場が多い地域へ行けるので。
――ソロキャンプや車中泊を始めたきっかけを教えてください。まるみ:以前とあるメーカーで営業の仕事をしていたのですが、毎日大変で心身が疲れ切っていたんです。そんな時にたまたまYouTubeを見ていたら、女性の方のソロキャンプの動画が流れてきたんです。映像を見ながら「私もこんな風に過ごして癒されたいなぁ。もう仕事を辞めてキャンプをしよう」と思って、その先どうするかはあまり深く考えずに退職日を決め、それまでにキャンプのギアを買いあさっていました(笑)。
キャンプと車中泊の違いは?
――一度何かを決めたら突っ走るタイプですか?まるみ:やるって決めたら、だいたい突っ走ってしまいますね。
――それまでにソロキャンプや車中泊の経験はありましたか?まるみ:幼い頃に家族で何回かキャンプへ行ったり、大人になってからは友達とコテージを借りて何回か泊まったり……。頻繁に行っていたわけではなく、何年かに一度のペースで行っていました。
――前提としてキャンプと車中泊の違いをお聞きします。人によって解釈が異なりそうですが、まるみさんはどのようにお考えですか?まるみ:私の中では線引きがあるんです。車中泊であっても、キャンプ場で行うのであればキャンプです。一方、RVパーク(日本RV協会(JRVA)が認定する車中泊施設)や道の駅、サービスエリアなどに車をとめたりして、車1台で完結するのが車中泊っていうイメージですね。人によって定義は違うと思うのですが。
YouTubeを始めたきっかけは“教えたがり”気質にアリ
――4年ほど前からYouTubeチャンネルを始められていますが、コロナ禍の時期ですよね?まるみ:始めたのは2000年3月で、ちょうど緊急事態宣言が出る直前だったんです。外出することに対しての世間の目が厳しかったですし、その頃のキャンプは自宅の庭でよくやっていました(笑)。
――YouTubeチャンネルを始めたきっかけは?まるみ:ソロキャンプとかいろいろなキャンプ動画を見ていたのですが、これからキャンプを始めようとする初心者がわからないことが多いなと。例えば、「たき火で燃え残った木はどこに捨てればいいの?」とか、わからないことがけっこうあったので、「初心者が初心者に教えるような動画があってもいいのでは?」と思ったのがきっかけです。たぶん私って“教えたがり”なんです。何か役立ちそうなことがあったら広めたくなりますし、良い商品があればおすすめしたくなるんです。営業の仕事をやっていたこともあってか、もともとそういう気持ちが強いんでしょうね。
キャンプのハードルを上げたくない
――他のキャンプ系YouTuberとは違うご自身の特長は何だと思いますか?また、意識していることはありますか?まるみ:常々、等身大の自分を映そうと思っています。例えば私みたいに4~5年もやっていたら、失敗したシーンってカットする人が多いと思うんです。「そこで失敗するのか」と思われてしまいますしね。でも私は器用な人間ではないので、起きたことをそのまま伝えたいというか。キャンプのハードルを上げたくないんですよね。
マニアックなギアを紹介したり、過酷なことにチャレンジしたり、キャンプのやり方にこだわる人も多いと思いますが、私は外で美味しいご飯を食べて、のんびり焚き火を見てっていうのが好きでやっているので、「難しいことをしなくても楽しめるよ」「キャンプってこんな手軽にできるんだよ」っていうことを伝えたいんです。
――初心者でも簡単に楽しめるようなことを伝えたい?まるみ:そうですね。愛知県で開催されている日本最大級のアウトドアイベント「フィールドスタイル」に出た時に視聴者さんが会いに来てくれたのですが、私のチャンネルを見て「キャンプのハードルが下がったからやってみようと思った」っていう方も多くてうれしかったですね。それと私はソロキャンプなのですが、ファミリーキャンパーの方がけっこう見てくれていたりもして「参考にしています」と声をかけてくださったり。
熊に襲われないように車の中で寝たことも
――自然の中ではいろいろなトラブルがありそうですね。まるみ:夏に思ったより暑くて熱中症になったり、冬は思ったより寒くなって風邪をひきそうになったり……。気温や天候に左右されること多いですね。数ヶ月前にレビュー動画を撮りにいった時に熱中症になってしまったのですが、行く場所に気をつけないといけないなって改めて思いましたね。
それと動物の恐怖もあります。去年の夏に岐阜のキャンプ場に行ったのですが、受付で「一週間前に子熊を見ました」って言われて熊鈴を渡されたんです。怖いなと思いつつも夕方まぐらいまでは全然平気だったのですが、真っ暗になるとやっぱり少しのガサっという音が怖かったりとか。子熊がいるってことは親熊もいるはずなので。
――まるみさん以外、誰もいなかったんですか?まるみ:私のほかに2組の男性のソロキャンパーの方たちがいたのですが、お二人ともけっこう離れた場所にいて、私が森に一番近い場所だったのでめちゃくちゃ怖かったですね……。怖すぎて、テントではなく車の中で寝ました。車内であれば、窓さえ割られなければと思うのですが、割られる可能性もなくはありません。割られちゃったら、もう諦めるしかないです。これは特別なケースですが、そうでなくてもけっこう体を張る場面は多いので、自宅に帰ってくる頃にはいつも疲れ果てていますね。
DIYは車検時に困らないよう配慮
――春や秋の方がキャンプに行く頻度は高いですか?まるみ:冬はよく行きます。ストーブや寝袋を持っていったり、かなり対策を万全にしていくので。夏は厳しいですね。暑いより寒い方が対策ができますし、まだ耐えられます。
――車中泊はトヨタのシエンタでされていますよね?まるみ:まず車の運転がそれほど得意ではないので、できれば軽自動車より加速がしっかりしていて高速も安心して運転できる普通車がいいなと。加えて税金面も考慮したり、大きすぎる車は運転が難しいなとか……いろいろ考えたら、自分にベストなのはシエンタだなって思いました。
あと車の天井を木にしたり、すごいDIYしてる方っているじゃないですか。そういうのに憧れたりもするのですが、やっぱり車検の時とかによくわからないと困るなって思って。なので、私の場合はあくまで車内で手軽に快適に過ごすことを重視しています。シエンタは寝る所が少々斜めなので、そこをフラットに調整したり、テーブルを工夫してみたり……車から簡単に出し入れできるものは作ったりしていますけどね。
視聴者の方もそこまで本格的にできる人って少ないと思うんです。シエンタはもちろん、フラットになる似たような車に乗っている方の参考になればいいなと思っています。ギアもその辺のお店で手に入るものばかりです。
――まるみさんにとってのキャンプの魅力とは?まるみ:自然の中でご飯を食べることがすごい幸せなんです。普段はほとんど料理をしませんし、簡単なものしか作らないのですが、外でご飯を食べる時は簡単なものでも美味しさが増しますよね。あとはちょっと大げさかもしれませんが、生きている実感があるんです。キャンプで泊まって次の日の朝起きた時に「よかった、生きてた」みたいな(笑)。それが感じられるのがキャンプですね。
<取材・文/浜田哲男>
【浜田哲男】
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界を経て起業。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ・ニュース系メディアで連載企画・編集・取材・執筆に携わる。X(旧Twitter):@buhinton
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