立川立飛歌舞伎特別公演開幕片岡愛之助、市川中車、中村壱太郎ら出演の “新しい”歌舞伎で客席を沸かす

「立川立飛歌舞伎特別公演」初日『玉藻前立飛錦栄』

立川立飛歌舞伎特別公演開幕片岡愛之助、市川中車、中村壱太郎ら出演の “新しい”歌舞伎で客席を沸かす

11月22日(金) 18:00

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11月21日、東京・TACHIKAWA STAGE GARDENにて、立川立飛歌舞伎特別公演が開幕した。地元企業の立飛グループが創立100周年の記念事業として実施、立川で一流の芸能を楽しんでもらう機会をと昨年初めて開催、今回が2回目となる。初出演となる片岡愛之助に、昨年から引き続いての出演となる市川中車、中村壱太郎、さらに大谷廣松、中村歌之助、市川九團次、市川笑也、中村亀鶴らが勢揃いし、4日間の華やかな公演を繰り広げる。

11月17日には開催記念のお練りが行われ、開幕に向けて大いに盛り上がりを見せていた立川の街。初日開場前には、立川で初めて実施されるという「一番太鼓の儀」も行われた。

「立川立飛歌舞伎特別公演」初日「一番太鼓の儀」(左から)村山正道 立飛グループ代表取締役社長、田中傅次郎((C)松竹)

寛永元(1624)年に初世田中傳左衛門が開幕を知らせる太鼓を打ったのが始まりという古式ゆかしき儀式。立飛ホールディングス代表取締役社長の村山正道から撥を渡された歌舞伎囃子方の田中傳次郎が太鼓に向かうと、晴れ間がのぞく秋の立川に、勇壮かつ厳かな太鼓のリズムが響きわたった。

幕開けは、中車による口上に壱太郎、歌之助による解説が続く。

「立川立飛歌舞伎特別公演」初日『口上・解説』(左から)中村歌之助、市川中車、中村壱太郎((C)松竹)

『新版 御所五郎蔵(しんばんごしょのごろぞう)』は、河竹黙阿弥の作を、新たに木ノ下裕一の補綴、藤間勘十郎の演出により上演、最近はあまり取り上げられることのない前半の“時鳥殺し”にも光を当て、幼い頃に生き別れになった姉妹の物語を丁寧に描き出す。歌之助は、自身が演じる浅間巴之丞良治の愛妾、時鳥が、愛之助演じる後室百合の方の恨みを買い、なぶり殺しにされる“時鳥殺し”について、また後半の、愛之助の二役目となる御所五郎蔵、中車演じる星影土右衛門のストーリーを紹介。これを受けて壱太郎は、「登場人物がいろいろで皆さんパニックになっていると思いますが、ひとつ覚えていただきたいのは、愛之助さんが良い人、中車さんは悪い人です!」と場をなごませた。壱太郎は時鳥、傾城逢州の姉妹二役を演じる。

「立川立飛歌舞伎特別公演」初日_『口上・解説』中村壱太郎((C)松竹)

その壱太郎、『玉藻前立飛錦栄』でも九役を勤め、宙乗りも披露する活躍ぶり。藤間勘十郎脚本・振付による、「九尾の狐」をモチーフとした新作舞踊だ。いずれも新たに作られた作品で、「皆さまが最初の目撃者、存分に楽しんでいただければ」と、立川発信の舞台をアピールした。

いよいよ『新版 御所五郎蔵』の幕が開く。愛之助の登場に客席は大いに沸くが、時鳥を執拗に折檻する姿は、意地悪を通り越して背筋も凍る恐ろしさ。

「立川立飛歌舞伎特別公演」初日_『新版 御所五郎蔵』(右)後室百合の方=片岡愛之助、(左)時鳥=中村壱太郎((C)松竹) 「立川立飛歌舞伎特別公演」初日_『新版 御所五郎蔵』(左から)御所五郎蔵=片岡愛之助、星影土右衛門=市川中車((C)松竹)

翻って後半は、二役目として演じる御所五郎蔵の男伊達ぶりでまた客席の心を掴む。両花道に愛之助の五郎蔵、中車演じる土右衛門が、それぞれに子分、門弟を引き連れて登場、一触即発の緊張の中で繰り広げられる七五調の台詞の応酬に、会場の広い空間が高揚感で満たされる。

「立川立飛歌舞伎特別公演」初日_『新版 御所五郎蔵』((C)松竹)

ちなみに、TACHIKAWA STAGE GARDENは、多摩地区最大規模となる約2,500席の次世代型エンタテインメント施設で、花道は通常の感覚よりずっと長く、天井も高い。演じ手の声の響き方や、大向う大向うが遥か彼方の遠くから聞こえてくる独特の雰囲気も、専用劇場や公共ホールでは味わえない、スペシャルな空気を醸し出す。2階、3階の一部の花道が見えない観客のために、舞台正面両側には大型のLEDビジョンを設置、舞台の模様をさまざまな角度から映し出すが、正面の席から観ても、生の舞台と中継の映像を同時に体感するような不思議な臨場感が魅力に。
最後の演目『玉藻前立飛錦栄(たまものまえたちひのにしきえ)』は、いわば“秋の道成寺”。遠景に富士山が浮かぶ、紅葉の景色が美しい。

「立川立飛歌舞伎特別公演」初日_『玉藻前立飛錦栄』(左より)強力ひっち坊=大谷廣松、白拍子吾妻=中村壱太郎、強力むてき坊=市川九團次((C)松竹)

壱太郎が、美しい白拍子吾妻から座頭杢市、村娘お陽、船頭壱吉、夜鷹お徳、雷、巫女天目、花売りお橘、金毛九尾の狐と、次々と早替りしていくたびに、客席から大きな拍手が。禍々しい金毛九尾の狐が場を圧倒すると、中車による薬王院秀明上人の祈り、愛之助による川村大介義明の押し戻しで、ついにクライマックスへ。宙乗りは初と明かしていた壱太郎だが、この会場ならではの高さのある、ダイナミックな宙乗りが実現、秋らしい演出も素晴らしく、連日客席をあっといわせる。

「立川立飛歌舞伎特別公演」初日_『玉藻前立飛錦栄』金毛九尾の狐=中村壱太郎((C)松竹)

会場では、お弁当やお土産はもちろん、地元立川の製菓店による和菓子も販売。今回の公演では、開演前と幕間のみ客席での飲食を可能にした配慮も嬉しい。地元発信で、歌舞伎の楽しさを多くの人たちと共有したいという思いが、そこここに滲む、温かみのある公演だ。

取材・文:加藤智子

<公演情報>
「立川立飛歌舞伎特別公演」

口上・解説

河竹黙阿弥 作
木ノ下裕一 補綴
藤間勘十郎 演出
曽我綉俠御所染より
新版『御所五郎蔵(しんばん ごしょのごろぞう)』

藤間勘十郎 脚本・振付
『玉藻前立飛錦栄(たまものまえたちひのにしきえ)』
髙尾山薬王院鐘供養の場
中村壱太郎九変化宙乗り相勤め申し候

出演:
片岡愛之助中村壱太郎大谷廣松中村歌之助市川九團次市川笑也中村亀鶴市川中車

2024年11月21日(木)~11月24日(日)
会場:東京・TACHIKAWA STAGE GARDEN

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/tachikawa-kabuki/

公式サイト:
https://tachihi100.jp/kabuki2024/

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