11月22日(金) 5:20
家やアパートなど不動産を相続で引き継いだ場合、所有者を新しい所有者へ変更しなければいけませんが、その所有者を変更することを「相続登記」といいます。これまで「相続登記」は任意でした。そのため相続した不動産の名義を変更せずに放置し、所有者が不明になってしまうケースが多く見受けられていたのです。
不動産の所有者が特定できない場合、不動産を処分できず空き家が増えてしまったり、都市開発や公共事業など土地の有効活用ができず、経済発展の妨げになったりと、多方面で悪影響を及ぼします。
2022年の国土交通省の調査によると、不動産登記簿において所有者の所在が確認できない土地の割合は24%です。この24%の内訳として、相続登記が未了になっているケースが61%という結果が出ています。
不動産の所有者が分からないことが社会問題となっており、その解決策として2024年4月1日から「相続登記」の義務化が始まりました。
法改正後は「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に相続登記をしなくてはいけません。遺産分割協議によって不動産の所有権を取得した場合は、遺産分割された日から3年以内に相続登記を済ませる必要があります。ただし、被相続人の不動産所有を認知していない期間はこの3年には含まれません。
図表1
東京法務局 相続登記が義務化されましたより筆者作成
法改正前に相続した不動産でも「施行日から3年以内」に相続登記を行う必要があります。過去の相続については法改正の施行日である2024年4月1日が起算点となるため、2024年4月1日より前に不動産を相続した場合は、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。
正当な理由なく3年以内に相続登記を行わない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。法改正前に相続した不動産も対象となります。法改正後に相続を認知した場合は認知してから3年以内、または法改正施行日から3年以内、どちらか遅い期日を起点に手続きを行なわなければいけません。
また本改正に付随し、住所変更登記も義務化されました。氏名や住所の変更があった場合は2年以内に手続きをしないと、5万円以下の過料が科される可能性があります。(2026年4月1日より施行)
法務省によると、正当な理由があれば罰則が免除されます。正当な理由として認められる事情には、次のような例があります。
●相続人が多数で、資料収集や相続人の把握に時間がかかっている
●遺言の有効性や遺産などの範囲などが争われている
●申請義務者が重病などの事情で申請が難しい
●経済的困窮が理由で登記の申請費用を負担できない
相続登記は以下の流れで進めます。
相続する不動産を確認し、遺産分割協議や遺言書で相続人を決定します。
必要書類は状況に応じて異なりますが、主な書類は次の通りです。
●亡くなった人の戸籍謄本
●相続人全員の戸籍謄本
●遺産分割協議書または遺言書
●相続する不動産の固定資産評価証明書
登記申請書に必要事項を正確に記入し、登録免許税分の収入印紙を貼ります。申請書には権利証明書類や戸籍関係書類も添付します。
相続する土地を管轄する法務局へ、申請書と必要書類を提出します。申請方法は3通りあります。
●窓口での申請
●郵送申請
●インターネット申請(電子署名が必要)
登記が完了すると「登記識別情報通知書」が交付されます。登記簿謄本で所有者の名義変更が完了していることを確認し、手続き終了です。
申請に不備がなければ登記内容がそのまま反映されます。申請内容に誤りがないか、しっかり確認を行いましょう。
3年前に実家を相続してまだ相続登記をしていない場合、今すぐ手続きをすれば問題ありません。2024年4月1日に施行された改正法により、過去の相続についてはこの日が起算点となるため、2027年3月31日までに相続登記を行うことが求められています。
東京法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう所有者不明土地!~
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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