山岡聖怜 インタビュー 後編(全2回)
年明け早々にデビューを控えた若き女子レスラーがいる。山岡聖怜(せり)、18歳。小学4年生からレスリングを始め、全国中学選抜選手権54キロ級で2位、全日本ビーチレスリング軽量級(高校生)1位に輝いた。インタビュー後編は学業とプロレスの両立、日々の食事やトレーニング、姉でグラビアアイドルの山岡雅弥(みやび)さんとの関係について話してもらおう。
来年1月3日にデビュー戦に挑む女子プロレスラーの山岡聖怜
【筋肉痛も嫌いじゃない...ほぼ毎日筋トレ】
ーーこの11月にプロテストに合格した山岡さんは、現在高校生。学業との両立はどうしていますか?
山岡聖怜(以下同)
大分県の中学校を卒業し、高校進学のタイミングで家族とともに東京へやってきました。最初はレスリングの強豪校に通っていたんです。でも、ケガで十字靭帯を手術し、治療期間中に女子プロレスを見て、プロレスラーに憧れました。夢をかなえるため、通信制の高校に入り直したんです。授業は基本的にオンライン、通学は月に数回だけ。練習の合間に勉強しています。私が自己管理のできない生徒だとわかってくれているみたいで(笑)、学校の先生にサポートしてもらいながら課題を提出しています。
ーーその後、ケガの状態はいかがですか?きれいに割れた腹筋がSNSで話題となりましたが、どんな練習を?
今年6月にケガは完治しました。1年間は思うように体を動かせず、腹筋もなくなってしまいました。でも、筋トレを再開したらすぐに割れてきました。もともと筋肉がつきやすい体質なのかもしれません。今は休むことなくほぼ毎日練習です。受け身の練習、体幹トレーニング、そして得意なレスリングを活かしたいのでタックルも。だいたい2、3時間は汗をかいています。体力があり余っていて、練習が終わってもすぐまた体を動かしたくなるんです。翌日の筋肉痛も嫌いじゃなくて、「このジーンとくる感じ、筋肉が成長するんだなあ」と、むしろうれしい。家に帰ると動画でプロレスの研究をしています。私がプロレスを目指すきっかけとなったジュリアさんをはじめ、イヨ・スカイさん、橋本千紘さんなど大好きな選手たちのシーンを繰り返し見ています。
ーー高校の勉強とプロレスの練習の日々のなか、息抜きは?
もともと田舎で暮らしていたので、東京でも見通しがよくて、人が少ないところが落ち着きます。休日はできるだけ大きな公園に行って、散歩をしていますね。飼っている犬を連れていくこともあります。広い空を眺めると気分がすっきりします。自分の空間が保てる場所が大事なので、部屋でゆったりするのも好き。ホワイトムスクのアロマでリラックスしたり。でも、たまに一緒に暮らしている姉が勝手に入ってくることがあって。その時は、めっちゃ怒ります(笑)。
インタビューでトレーニングや食事などについて語る山岡
【料理上手の姉とふたり暮らし】
ーー現在は、姉の雅弥さんと一緒に暮している?
姉とふたりで暮らしています。掃除、洗濯、料理などは姉妹で分担......と言いたいところですが、ほとんどやってもらっている状態です。私の2つ上なんですが、家事はなんでもできる。見習わないといけないです。とくにすごいのは料理。最近では、揚げ茄子が絶品でした。私が「揚げ茄子食べたいなー」とぼそっとつぶやいていたらしく、その日の夜に作ってくれたのがうれしかったです。他にはマーマレードソースのスペアリブとか栗ご飯とか数えきれません。
鍛えられた肉体はSNSでも話題を読んだ
ーーお姉さんの料理上手は母親ゆずり?
母はもともと飲食店を切り盛りしていたんですが、ウェイクボードも本格的にやっていて。スポンサーがつくようになってから、そっちに専念するためにお店のほうはやめてしまったんです。だから料理の腕はプロ並みで、いつもバランスのとれたごはんを作ってくれました。兄、姉、私、弟と4きょうだいみんなレスリングをやっていたので、母が業務用の1升サイズの炊飯器で炊いてくれ、おかずはひとり分ずつ大皿に盛ってありました。そこに必ずと言っていいほど、きょうだいそれぞれの苦手な食べ物が入っていたんです。好き嫌いなく、きちんとバランスよくという教えを姉も受け継いでいます。
子どもの頃は4人きょうだいみんなでレスリングに取り組んだ
【感謝を胸にデビュー戦へ挑む】
ーー女子プロで活躍するために食事で気をつけていることは?
いつもの食事にプラスしてプロテインも飲むようになりました。お菓子をつまむことは前より少なくなりましたが、ちょっと太ったかなと思ったら、食事の量を減らすのではなく、ひたすら運動で消費するようにしています。筋トレ、マット運動、サウナですね。
高校進学を機に上京し先日18歳を迎えた
ーーさて来年1月にはいよいよデビュー戦です。心境の変化は?
時間はいくらあっても足りない、まだまだ練習を積んでから挑みたいという気持ち。でも、早くリングに立ちたい、明日にでもやりたいという気持ち。そのどっちも高まってきます。また、こうしてデビューが決まって、みなさんに注目してもらえることを当たり前だと思わないよう、気を引き締めています。今、自分のまわりにあるものすべてがありがたい。お姉ちゃんととふたりでスーパーに買い物に行って、お会計の金額を見ると驚きます。食材を買うだけでこんなに?と。両親がどれだけ大変だったか、最近になってだんだんわかるようになってきました。毎日の練習も先輩たちと思いきり楽しくできています。私は、本当に環境に恵まれてきた人間だと思います。感謝の気持ちを忘れず、デビューに向けて突き進んでいきます!
デビュー戦への意気込みを真剣な表情で語った
終わり
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【プロフィール】
山岡聖怜やまおか・せり
2006年、福岡県生まれ。小学4年生の頃からレスリングを始め、中学時代には全国中学選抜選手権54キロ級で2位。スポーツ推薦で東京都内の高校へ進学し、2022年には全日本ビーチレスリング高校生軽量級で優勝。その後はケガに苦しみレスリングを断念し、プロレスの世界に入る。2024年8月に女子プロレス団体「マリーゴールド」に入団。2025年1月3日に東京・大田区総合体育館で開催される『MARIGOLD First Dream 2025〜初夢〜』でデビュー戦に挑む。憧れのプロレスラーはジュリア。
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