「また再配達」「宅配ボックスが埋まっている」……“再配達問題“解消の鍵は管理会社の「マンション内配送サービス」!

(写真/PIXTA)

「また再配達」「宅配ボックスが埋まっている」……“再配達問題“解消の鍵は管理会社の「マンション内配送サービス」!

11月20日(水) 7:00

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働き方改革による2024年問題が指摘されているが、宅配業界では輸送能力が不足してモノが運べないリスクが顕在化している。そんななか、マンションの”再配達ゼロ”を目指し、管理会社(大和ライフネクスト)と宅配会社(日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便)が「マンション内配送サービス」の実証実験を開始した。どんなメリットがあるのだろうか?詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
管理会社と宅配会社が「マンション内配送サービス」の実証実験を開始/大和ライフネクスト

物流業界のラストワンマイル問題とは?

物流業界のラストワンマイルとは、消費者が商品を手にするまでの最後の配送区間、最寄りの配送センターから個人宅までの区間を指す。EC(電子商取引)利用が拡大して宅配の荷物が増える半面、働き方改革による配送現場の人手不足が深刻で、ラストワンマイルで商品が滞るリスクが生じているのだ。

特にタワーマンションでは、エントランス、エレベーター、配達階など何度もセキュリティロックを解除する必要があったり、配達用のエレベーターが指定されてエレベーター待ちに時間がかかったり、低層・中層・高層階ごとにエレベーターを乗り換える必要があったりなどで、想定外の時間がかかる場合も多いと言われている。

加えて、不在による宅配便の再配達が多くなっていることも問題となっている。配達時には、効率の良いルートを組んで配送するが、ルートが完了した後で再配達を行うなど、ドライバーの走行距離や労働時間が増加し、非効率な配送が常態化する事態となっている。

国土交通省では、2024年4月のサンプル調査で約10.4%が再配達になっていたことから、再配達により二酸化炭素(CO2)排出量の増加(年間約25.4万トンの排出量相当)や労働生産性の低下(年間約6万人のドライバーの労働力相当)による社会的損失が大きいと問題視している。

そのため、国土交通省は消費者に対して、時間帯指定の活用やコンビニ受け取り・置き配など多様な受け取り方法の活用などを推奨している。また、ECサイトでの「送料無料」の取り扱いについても課題を指摘している。送料無料の場合でも、配送については実際にコストが発生しているからだ。

さらに、マンションについては、管理規約で共用廊下に物を置くことを禁止していたり、エントランス等のセキュリティロックで届け先が不在の場合に入退館できないことなどの問題もあることから、管理規約で置き配を認めるルールを定めたり、不在時でも入退館できるセキュリティ対策を提示したりなどにより、再配達の減少に努めている。

国土交通省のサイト「宅配便の再配達削減に向けて」より転載
国土交通省のサイト「宅配便の再配達削減に向けて」より転載

マンション居住者も宅配に不満を感じている?

今回の大和ライフネクストと日本郵便・ヤマト運輸・佐川急便の実証実験は、ラストワンマイル問題の解決だけでなく、マンション居住者の利便性向上を目指すものでもあるという。

国土交通省の再配達率の推移を見ると、実は、2020年10月調査以降は11%台だったものが、2024年4月の調査では10.4%に下がっている。これは、マンションや一戸建てで宅配ボックスや置き配が普及したことなどの影響もあるのだろう。

一方で、国土交通省がオートロックエントランス解錠システムを設置したマンションの置き配実証実験で、宅配ボックスが設置されている人に「宅配ボックスは十分な量設置されているか」と聞いたところ、59.1%が「不十分だと感じる」と回答した。届いた荷物が入るサイズのボックスが埋まっているなどで、再配達になる事例も多いようだ。

大和ライフネクストによると、「インターホン鳴動から訪問までの待機時間が長い」「宅配ボックスが埋まっていて荷物が受け取れない」などの不便を居住者が感じているため、実証実験はマンション居住者の不満解消にもなるという。

「マンション内配送サービス」の実証実験とは

再配達ゼロを目指す今回の実証実験だが、次のような流れになる。

(1)マンション管理員が宅配会社(日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便)の荷物を全住戸分一括※で受け取る。(荷物はマンション内の専用倉庫に納品)
(2)管理員が宅配会社に代わって各住戸に荷物を配達する。
(3)配達できなかった荷物は、管理事務室または専用倉庫で一時的に保管し、管理員の業務時間内であれば管理事務室(受付)でいつでも受け取ることができる。
※冷蔵・冷凍・代引き・郵便物(書留含む)・貴重品便等の一部の荷物を除く

宅配会社からマンション管理員への荷物の受け渡しの様子(大和ライフネクスト「“再配達ゼロ”のマンションを目指し、管理会社と宅配会社が「マンション内配送サービス」の実証実験を開始」のページより転載)
宅配会社からマンション管理員への荷物の受け渡しの様子(大和ライフネクスト「“再配達ゼロ”のマンションを目指し、管理会社と宅配会社が「マンション内配送サービス」の実証実験を開始」のページより転載)

マンション管理員による荷物の配達の様子(大和ライフネクスト「“再配達ゼロ”のマンションを目指し、管理会社と宅配会社が「マンション内配送サービス」の実証実験を開始」のページより転載)
マンション管理員による荷物の配達の様子(大和ライフネクスト「“再配達ゼロ”のマンションを目指し、管理会社と宅配会社が「マンション内配送サービス」の実証実験を開始」のページより転載)

なお、マンションごとのルールに準じて、宅配ボックス・置き配なども活用する。また、管理員のマンション内配送には、開発中の専用アプリを使用して荷物の受け渡しの記録を残す想定。実証実験期間は、東京都中央区内の分譲マンション(約200戸)を対象に2025年1月末までを予定している。

宅配業者にとっては、管理会社に費用を払ってもマンション内の配送を全戸一括 ※ で任せられるメリットがあり、管理会社にとっては、マンション管理サービスの付加価値を高めることができ、会社の収益増加や管理員の収入増加になるなどのメリットがある。 居住者にとっても、宅配便の再受け取りがスムーズで別の宅配会社の荷物をまとめて受け取れるなどの利便性向上になる。
※再配達がなくなるだけでなく、オートロック付きマンションでは配達先ごとにインターホンを鳴らして配達する時間もなくなる。

筆者のマンションでも、宅配ボックスに大きなボックスが1つしかないので埋まって使えないなどの声も聞く。筆者自身は軽い荷物は宅配ボックスを指定し、重い荷物は住戸まで配送して対面で受け取れるように、時間指定を活用しているが、その時間帯に必ずいなければならないのは意外と苦痛だ。顔見知りの管理員が配送してくれるのは、たしかにありがたい。

ただし、筆者のマンションは70戸程度でセキュリティもエントランスのみなので、ビジネスモデルに乗るレベルではないかもしれない。大和ライフネクストに聞いたところ、今回の実証実験では、宅配会社にとって配送時の負担が大きい比較的大型のマンション(150戸~)を対象としているが、将来的にはより幅広いマンションに展開できるような仕組みも検討していきたいということだった。

人手不足の状況はまだまだ続くだろう。配送工程でロボットやドローンの活用が進んでいるが、ラストワンマイルのマンションについては、マンションごとの管理ルールもあり、対応は複雑になる。こうした新しい取り組みが利便性向上や社会的課題の解消につながることを大いに期待している。

●関連サイト
国土交通省のサイト「宅配便の再配達削減に向けて」
大和ライフネクスト「“再配達ゼロ”のマンションを目指し、管理会社と宅配会社が「マンション内配送サービス」の実証実験を開始」


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