ナンニ・モレッティ、監督の苦悩と映画愛、そして再生を温かくユーモラスに描く最新作「チネチッタで会いましょう」自身が演じる主人公は「私の分身」

ナンニ・モレッティ監督

ナンニ・モレッティ、監督の苦悩と映画愛、そして再生を温かくユーモラスに描く最新作「チネチッタで会いましょう」自身が演じる主人公は「私の分身」

11月21日(木) 10:00

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カンヌ、ベネチア、ベルリンの3大映画祭を制し、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に8作品連続選出されているイタリアの名匠ナンニ・モレッティ監督最新作「チネチッタで会いましょう」が、11月22日公開される。モレッティ監督が本作を語るインタビューを映画.comが入手した。

ナンニ・モレッティ監督50年のキャリアの集大成となる最新作は、時代の変化についていけず、真ん中にいると思っていたらはみ出してしまっていた映画監督が、失意の後に大切なことに気づくというヒューマンドラマ。フェリーニやキェシロフスキ、スコセッシなど映画へのオマージュ、また自身の過去作品を引用して、変化の激しい世界に適応することの難しさをユーモラスに描きだす。

苦境に陥っても人生を肯定する温かな物語が絶賛されイタリアで大ヒットを記録。終始笑えるコメディタッチでありながらも、作家性と娯楽性とを見事に両立し、独特のユーモアとやさしい眼差しが観客の心を掴む、モレッティ作品の魅力が満喫できる作品に仕上がっている。

モレッティ自身が、製作・脚本・出演も兼ね、共演にはモレッティ作品の常連マルゲリータ・ブイや、俳優であり監督のマチュー・アマルリックらが脇を固める。撮影は90年余の歴史を持つヨーロッパ最大の撮影スタジオであるチネチッタ撮影所で行われ、音楽はフェリーニの音楽を手がけていたニーノ・ロータの弟子フランコ・ピエルサンティが担当し、ポップミュージックを効果的に用いている。

本作を製作するに至った経緯については「自分は監督であると同時にプロデューサー、俳優、観客、映画館の支配人。だからこそ、映画についての映画を撮りたかった。ジョヴァンニの映画には誰も興味がないかもしれないが、彼は映画に対しての情熱がある。そこを描きたかった」と、映画監督としてだけではなく、様々な視点から映画を見つめ続けるモレッティ監督ならではのアイディアだ。

今回、主人公の映画監督を自ら演じたことについては「主役には自分が一番適していると思った。ジョヴァンニは私の分身。ディテール的には似ていないが、映画監督という同じ仕事をしているし、緊張感を持って仕事に接している点は同じ」と語り、キャストに関しては「5作連続してマルゲリータ・ブイと撮っているけれど、彼女はとても仕事がしやすい俳優。連続ではないけれど、シルヴィオ・オルランドも5度目の出演になる。彼は素晴らしい役者で、文学的で、いくぶん書きこんだものも、自分のものにしてみせてくれるので、脚本家や監督にとっては幸運なんだ」と絶大な信頼と称賛を送った。

劇中でモレッティ監督が演じるジョヴァンニが撮る映画は、1950年代のイタリアを描いている。「何よりも興味深いのは、当時の政治運動家たちの在り方。そこには政治をまっとうしようとする生き方があった。それは政治活動に人生のすべてを捧げるというもので、今はもうなくなってしまった。そうした側面にはずっと興味があり、以前から描いてみたいと思っていた年代。今日のわれわれの世界とはかけ離れたこの世界を描きたかった」と明かす。

イタリアでは“モレッティの20テイク”と言われるほど、テイクを重ねる監督として有名だが、それについては「今は少し減ったかな。監督としても、役者としても、最初のテイクが一番だというのには賛成できないからそうなってしまう。一つのシーン、ダイアログを最終的なかたちに到達するには一連のテイクを重ねる必要があるから」と答えた。Netflixとジョヴァンニが映画についてミーティングをするシーンに現代への皮肉は入っているのかと問われると「自分は大人向けの映画を撮っているが、Netflixは地下鉄の中でも気軽に見ることができる。二つは全く異なる世界と言える。もちろんNetflixに限ったことではないが、プラットフォームの映画の作り方は不思議に感じることがある」と持論を述べる。

劇中には「LOLA」や「地獄の黙示録」「殺人に関する短いフィルム」など多くの映画が登場するが、監督にとって思い入れのある作品なのかという問いには「特にキェシロフスキは好きで、「殺人に関する短いフィルム」は中でも好きな作品。それらはダイアログでは引用していないけれど、劇中にはフェリーニのオマージュもあるなど、登場する映画はすべて自分にとって大事な作品」と映画への深い愛を語った。悲劇的な出来事が起こるも、思わず笑いが出てしまうユーモアあふれる語り口に、「自分としては、アイロニーは表現として他より優れているとも劣っているとも思わないが、物語がドラマチックで笑える形というのは自分の中にあるものを描くときに自然と出てくるもの」とした。

最後に日本のファンに向けて「ずっと私の映画を見て下さって、ありがとうございます。今は新作の脚本を書いています。また、2作品のプロデューサーもしています。私は監督と俳優と映画館の支配人などを交互にやっていますが、それはとても精神的なヒーリングになっているんです」とコメントを寄せた。

「チネチッタで会いましょう」は11月22日から、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。

【作品情報】
チネチッタで会いましょう

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