2024年11月17日、次のような写真がXに投稿され、注目を集めた。
とある神社の境内に掲示された看板だ。「境内で鶏肉・卵を食すべからず」と呼びかけている。何故ならば、「当神社はお酉様につき」。
何より気になるのは、看板の一番上。赤地に白く「掟」という文字が染め抜かれている点である。しかも「掟」の上に、「さだめ」とルビが振られている。
なんだか、おどろおどろしい気配も漂っているような......。いったい境内で鶏肉・卵を食すなという「さだめ」とは?
この写真を投稿したのは、「下野國 鷲宮神社」(@washinomiya_88)。神社の公式アカウントだ。
当該ポストには、4万7000件を超える「いいね」(11月20日時点)のほか、こんな声が寄せられている。
「カーネル・サンダース入れなそうやね」
「まじかよ親子丼持ち込み禁止なんて。。。。。。」
「ひよこ饅頭もダメっぽいな」
「タマゴボーロは行けるのか?」
「逆に、破る方が難易度高いな」
「逆に神社で鶏肉や卵とか食べる機会ってあるの...?」
「豚や牛の肉は食べても大丈夫なんでしょう」
「理由が知りたい」
この「掟(さだめ)」の由来は?また、この神社はなぜニワトリにこだわっているのか?Jタウンネット記者は鷲宮神社に詳しい話を聞いてみた。
御祭神・天日鷲命のお使いは、「鶏」
鷲宮神社は、栃木県栃木市にある古社。931年(承平元年)創建と伝えられている。
御祭神は、「天日鷲命(アメノヒワシノミコト)」「大己貴命(オオナムチノミコト) 」。商売繁盛、家内安全、咳止めなどに、ご利益があるとされている。
Jタウンネットの取材に応じてくれた鷲宮神社の宮司・菱沼拓己さんによると、「掟」は11月23日の例大祭に合わせて17~24日の期間に、神社の手水舎のそばに掲示しているものだ。
「掟(さだめ)」の由来については、こう語る。
「神社に伝わる話では、源頼家公が幼少の折に『百日咳』を患い、それを治すために、二位尼君の北条政子が鶏肉と卵を断って(避けて生活して)御祈願したところ、見事回復したという言い伝えがございます」
「言い伝えであるため何の本に記されたものであるかは定かではございませんが、鎌倉時代以前からあるのだと思われます」(菱沼拓己宮司)
なぜ鶏肉と卵を禁じているかについては、「神社に祀られている天日鷲命のお使いが鶏であるため、それをいただくのは申し訳ないという観点からです」と、菱沼宮司は説明してくれた。「代々仕えている神職はいただいておりません」とのこと。
食べない範囲について聞いてみると、菱沼宮司はこう話す。
「鶏に限らず、うずらや鴨もいただいておりません。
ですが、現代において原材料まで考慮すると生活に支障を来すため、目に見える範囲(焼き鳥、唐揚げ、卵焼き、錦糸卵等)に留めております」
「先代である父も食卓で避けていたので、いずれ私もそうなるだろうと、物心ついた時から何も疑問に思わず今も生活しております。
ただ、コンビニの冷蔵棚の商品は半分以上鶏肉か卵が使われており、利用する時は真剣に悩んでおります」(菱沼拓己宮司)
鷲宮神社で宮司を務めるのは、なかなかに大変らしい。
11月23日の例大祭にも出店が出るが、唐揚げや焼き鳥の店はない。ただ、お好み焼きやたこ焼きなどはあるそうだ。原材料に卵が入る程度のものは、許されているようだ。
また、鶏肉と卵を食べてはならない「さだめ」に因んだ「強卵式(ごうらんしき)」も行われる。
Jタウンネットでも2021年に紹介した、大きな器に山と盛られた生卵を「一つ残らず食べつくすのじゃ」と天狗から責め立てられる、大変ユーモラスな儀式である。
「皆様のご参拝、心よりお待ちしております」と、菱沼宮司は呼びかけた。
鶏好き・卵好きな読者も、この日ばかりは食べるのを我慢して、栃木まで出かけてみてはいかがだろう。
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