妊娠期から子育て期の困りごとに対し、「あってよかった!」という商品・サービスを取り上げて紹介する連載『神商品&サービスの開発秘話』。今回は、キリンホールディングスの食物アレルギー対応レトルト幼児食「からだ喜ぶすくすくごはん」をピックアップ。商品の誕生から品質への妥協なきこだわりまでを教えてもらいました。
今回取り上げる商品:からだ喜ぶすくすくごはん
からだ喜ぶすくすくごはん(下段120g、上段160g)
特定原材料8品目不使用!(※) 子どもの食物アレルギーに悩むママが考えた、おいしくて栄養たっぷりのレトルトの幼児食。常温保存が可能で、持ち運びも簡単。レンジで温めるだけで手軽に食べられる。2024年7月~8月にクラウドファンディングを実施し、271人の支援者から約100万円の支援金を集めた
<対象年齢>2歳ごろから
<賞味期間>製造日を含め7ヶ月 、「野菜たっぷりチキンライス 160g」のみ製造日を含め6ヶ月
<クラウドファンディングでの参考価格>160g 3種アソート 2,200円/120g 3種アソート 2,000円(送料込み)
※本品製造工場では、特定原材料のうち、卵・乳成分・小麦・えび・かにを使用した製品を製造しています。また、原材料の一部に大豆・鶏肉・豚肉・りんご・ゼラチンを含みます。
お話をうかがったのは……
Cowellnex 兼 キリンホールディングス ヘルスサイエンス事業部 新規事業グループ 正親美菜子(おおぎ みなこ)さん
協和キリンで研究員として免疫・アレルギー分野でのバイオ医薬品の探索研究に9年間携わる中で、2児の出産を経てそれぞれに食物アレルギーを経験。その中で感じた不安や不便を解消すべく「からだ喜ぶすくすくごはん」プロジェクトを起案し、商品化に至る。現在は食物アレルギーやその他アレルギー疾患に関する新規事業開発を担当
「買い物では必ず原材料表示をチェックするように」当事者になり初めて知った数々の苦労
ーー特定原材料8品目不使用の幼児食「からだ喜ぶすくすくごはん」が誕生したきっかけは、ご自身のお子さんにあるそうですね。
正親美菜子さん(以下、正親)そうなんです。子どもが2人とも過去に食物アレルギーがあり、1人目は育休明けの職場復帰を目前に控えた生後5ヶ月に牛乳と卵のアレルギーが発覚し、2人目は卵にアレルギーがありました。
食物アレルギー発覚当時は、「私の対処が間違ったら命にかかわるかも、という恐怖心や、牛乳と卵が摂れない生活がいつまで続くのだろうという不安、妊娠中や授乳中の自分の行動が何か間違っていたのではないか、という罪悪感がありました。今ならそんなことはないとわかるんですけどね」と話す
ーー正親さんはもともと免疫・アレルギー分野で研究していますが、当事者になるとさまざまな感情が湧き上がったんですね。
正親研究ではアレルギーを事象として見ていて、教科書的な知識による対処法は知っていましたが、当事者にどんな悩みがあるのかなどはまったく理解できていなかったと実感しました。教科書上では「食べなければ症状は出ない」ですが、実際にアレルギーの原因食物を徹底的に排除する生活をしようと思うと、これまで確認したことがなかった原材料表示を必ずチェックするなど、
気軽に買い物できないということもわかりました。
今までは「これいいな」と思えば、手にとってカゴに入れるだけでしたからね。
ーーその後、お子さんにはどんな対処をしましたか?
正親まずはアレルギー対応のミルクを慣らし、保育園の給食では牛乳と卵を抜いてもらいました。家では、
共働きなので夕食を外で済ませたいことがあっても、食べられるメニューがないことも多くて。
外食といえば、衝撃を受けたエピソードがあったんです。1歳半くらいの子どもがいるママ友と子連れランチをしたのですが、そのママ友はスクランブルエッグが乗った大人のプレートを普通にお子さんに食べさせていて。我が家では家からアレルギー対応の食事を持参し、お店の人に「子どもが食物アレルギーなので、これを食べさせてもいいですか?」と聞いてから食べさせていたので、「え! この子、こんな大人の料理を食べられるんだ!」とびっくりしました。
ーー外食で子どもが食べられるものは、たしかに卵や牛乳が常に隣り合わせです。
正親ある中華料理屋さんでは「油に卵が入っているから、全品食べられない」と言われ、
白米だけしか食べられなかったこともありました。
そういった経験から、外出時は常にカバンに食べられるものを忍ばせていました。自宅では基本的には週末に作り溜めて、特定原材料不使用のベビーフードも活用しました。みなさんだいたい1歳半くらいになったら幼児食に移行すると思うのですが、うちは市販のベビーフードに頼っていて
2歳まで離乳食を引き伸ばしましたね。
ーーアレルギー対応の離乳食はあっても、幼児食はなかったんですね。
正親当時はありませんでしたね。その後、2人目が産まれたのですが、この子にも卵アレルギーが発覚して……。離乳食卒業後に食べられるものの選択肢が限られることの不便さや、日々の夕食作りに大きな負担を感じていたんです。
専門家の「こんな商品は見たことがない。常識外れだ」という言葉にも諦めなかった
正親そんななか、2人目の育休明けにキリングループ内で「キリンビジネスチャレンジ」という社内事業公募制度があることを知りました。そこで「食物アレルギーのお子さんを持つご家庭向をサポートできないか」と思って、挑戦してみることにしたんです。でも当初は、「子育てに関する何かができればいいな」くらいに思っていて、こんなに本格的にやるつもりはありませんでした。
ーーそれがなぜ、本格的に動こうと思ったんでしょう。
正親当時の私は、食物アレルギーに対応することが日常で、当たり前になっていました。でも、起案前に子育て中の人に育児の悩みや課題をヒアリングする過程で、同じように悩んでいる人たちがいることに気づき、
「食物アレルギーを持つ子どもの親は大変なんだ」と実感したんです。
「食物アレルギーの大変さが当たり前になっていたから、当初はこうした商品の起案は思い至らなかった」と話す正親さん
ーー当初、どんな商品を想定していましたか?
正親「野菜をはじめ、具材がたくさん入っていて栄養バランスがよく、子どもがおいしく食べられて、常温保管可能でお出かけにも持っていけるような、これ1食でOKのご飯ものレトルト食品」です。でも、キリンはこのようなレトルト開発の経験がなかったため、外部の詳しい方に相談すると、「こんな商品は見たことがない。常識外れだ」と言われてしまったんです。
ーーどこが常識外れだったんでしょうか。
正親参考になる商品もないし、これだけ入って味もしっかり、というのは「欲張りすぎ」だと(笑)。特定原材料8品目を不使用にすると、使える調味料も限られますしね。それに、お米関連のレトルト食品って、お粥は何種類もあるけれど炊いたご飯ってあまりないんです。いざ実現しようとすると、コスト面でもバランスが取れなくなるようで。そんな状況でも、「とりあえず1回作ってみようか」となりました。
ーー試作品の出来栄えはいかがでしたか?
正親社員の子ども40人に試食してもらったら、まったく食べてもらえませんでした……(笑)。健康面を考えて薄味にしたところ、おいしくなかったようで……。一口でやめてしまったり、見た目が気に入らないから手をつけなかったりする子もいました。
幼児の「おいしい!」を目指し試作を重ね150のレシピを検討!
ーー見た目、関係あるんですね!
正親幼児になると好き嫌いがはっきりしてくる傾向があるので、見た目の野菜感が強いとダメなんでしょうね。食感もシビアで、ご飯が柔らかすぎてもダメでした。
ーーご自身のお子さんは食べてくれましたか?
正親はい。でも、少し食べただけで、「うーん。もういらない」という反応でした(笑)。「塩などの調味料を控えたので、その分味がぼんやりしてしまって。味付けが一番の壁でしたね。
ーーそうした課題をクリアするまで、どれほどの時間を要しましたか?
正親
開発開始から販売まで、調査や試食を重ね、150以上のレシピを考え、ちょうど2年です。
ーー150も! そうして現在の3種類の味にたどりつき、7月16日より本格販売を目指しクラウドファンディングを開始しましたね。
味は「野菜たっぷりチキンライス」「具材ごろごろとり五目ごはん」「とり肉と根菜のカレーごはん」の3種類。当初は160gのみだったが、試作品の意見を元に120gも作ったそう。ちなみに正親さんと下のお子さんは「とり五目ごはん」、上のお子さんは「カレーごはん」がお気に入りだとか
正親アンケートを取りたかったのでクラウドファンディングでテスト販売を行い、271人の方にご支援いただきました。9月末までに発送を終え、約半数の方からアンケートのご回答をいただいており、回答率の高さに驚いています。
ーーニーズの高さがうかがえます。どんな声が集まりましたか?
正親味を肯定的に書いてくださる方や、「こういう商品はありがたい」と応援してくださいました。やっぱり多くの保護者は、ベストは手作りで、簡便なレトルト食品を子どもにあげることに罪悪感がぬぐえません。でもこれは、ご飯もお肉も野菜も入っていて、そうした罪悪感の軽減にも繋がっているようです。
ーー最後に、今後の課題を教えてください。
正親今回はテスト販売でしたが、実際に日常の中でどれくらいお使いいただけるかが未知数で。6~7ヶ月間の長期保存ができて備蓄に最適な一方、どこまで日常に入り込んでいけるかが課題ですね。
もし、正式に販売が確定したら、「今日は疲れて夕食が作れない」というときに、「温めたらすぐ食べられるこれがあるな」と思い浮かべてもらえる存在になれればと思います。
ココがポイント!パパ・ママたちに支持されるヒミツ
Point1:特定原材料8品目不使用で食物アレルギーでも安心
クラウドファンディング『CAMPFIRE』キリンホールディングスのページより引用
※商品の製造工場では、特定原材料のうち、卵・乳成分・小麦・えび・かにを使用した製品を製造。また、原材料の一部に大豆・鶏肉・豚肉・りんご・ゼラチンを含む
買い物や外食時は原材料の確認が日常となり、「その中で牛乳や卵が含まれている食べ物や料理の多さに驚き、食べられないものがたくさんあることに愕然とした」という正親さん。育児と仕事の両立に加えて、制限つきの食事の準備は大変な負担になったといいます。
そんな経験をもとに、これまでにない「食物アレルギー対応で、素早く準備ができる、バランスのよいレトルトご飯」を実現。
特定原材料8品目(卵・乳・小麦・えび・かに・落花生・そば・くるみ)を使用せず
、食物アレルギーがある子どもにも、安心して食べさせることができます。
Point2:栄養たっぷり・150以上のレシピを検討し追求した”おいしさ”
「子どもに与えるものだから、具材をたくさん入れて、栄養バランスをよくしたい」という正親さんの強い想いをカタチにし、炭水化物、野菜、お肉をバランスよくたっぷり配合することに見事成功。
幼児の1食分に必要なタンパク質と、野菜の8割が含まれています。
「野菜たっぷりチキンライス」の160gを実際にレンジで加熱したところ。ゴロゴロとした具材がたっぷり!
さらに、一番のこだわりは”おいしさ”。大人と子どもを対象とした試食調査を重ね、
好き嫌いがはっきりしてくる幼児期でも満足するおいしさにたどり着きました。
Point3:常温保存可能・レンジ加熱でいつでもすぐに食べられる
忙しい日々で頼りになるのは、レンジでチンしてすぐに食べられるご飯です。同商品は、
カップのままレンジで加熱するだけで、1食分の食事が完成。
温かいごはん&ゴロリと食べ応えのある具材は、ほっくほく! お腹を空かせた子どもを待たせずに済みます。
また、
長期間常温保存が可能なため、持ち運びOK、備蓄としても最適。
実家や旅先のホテルなど、電子レンジが使える環境であれば、外出先でも食物アレルギーを気にせずお腹を満たすことができます。
まとめ
食物アレルギーのお子さんを持つ正親さんだからこそ開発できた、「からだ喜ぶすくすくごはん」。親として、「安心しておいしいごはんを食べさせたい」「栄養バランスにこだわりたい」「食事を手軽に用意したい」など、さまざまな願いをすくいあげた商品でした。
現在は、すでにクラウドファンディング支援者へ商品を発送済みで、使用後のアンケートを集計中。その結果次第で、一般販売が決まるとのこと! 結果が楽しみでなりません。
キリンホールディングス ニュースリリース
https://www.kirinholdings.com/jp/newsroom/release/2024/0705_01.html
(取材・文:有山千春、撮影:松野葉子、取材協力:キリンホールディングス、編集:マイナビ子育て編集部)
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