こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
靴屋の種類が多すぎる
皆様、靴をどこで買っているでしょうか?ほとんどの方は目当ての限定モデルがあるわけではないでしょうから、歩きやすくて、ほどほどにかっこいい靴をふらっと入ったお店で選んでいるとか思います。しかしそういった塩梅のいい靴ほど選択肢が多いのも事実。
そこで私がおすすめしている入手経路が4つあります。まず、「チェーン店などの量販店」、次に「メガスポーツ店」、そして「メーカーのオンラインショップ」、最後に「アウトレット店」です。それぞれに明確な特徴があるので、どこで何を買うべきかメリットとデメリットを挙げていきましょう。
店舗数と在庫力が魅力のチェーン店で靴を買うときのポイント
ABCマートや東京靴流通センターといったチェーン店のメリットは圧倒的店舗数と種類の多さです。ABCマートは北海道から沖縄まで約1100店舗(2024年現在)あり、単純計算だと各都道府県に30店舗近くあることになります。
最大のメリットは地方でも都内と同じものが手に入ることでしょう。各店舗のネットワークが密なので、トータルの在庫数がとんでもなく多く、瞬時に全国の在庫を調べてくれて、北海道にない在庫を沖縄から数日で取り寄せるなんてこともできます。
革靴から子供靴、おしゃれスニーカーからガチンコの運動靴まで揃っているのも魅力ですし、中途半端な百貨店では太刀打ちできないレベルです。歩きやすいハイテク革靴なども、チェーン店はあらゆるショップの中では最強だと言っていいでしょう。
良くも悪くも「流行りの最大公約数」を揃えているので、無難と言えば無難です。大流行のニューバランスの「574」などのクラシックシリーズも必ず手に入ります。ものすごく歩きやすいわけではありませんが、ファッションとして外すこともなく、価格も激安ではありませんが、直営店と同じ価格。サイズが欠けていても、店舗で支払いを済ませると自宅まで無料で直送してくれるサービスもあります。
一方、チェーン店のデメリットとしては、「見た目はいい感じだけど、本当的な靴は少ない」ということです。例えば、スニーカーであれば、あくまでファッションとしての取り扱いが多く、「本格的に疲れない靴」など、専門性を求めることが難しいということです。販売員に明確なノルマもあるため、買いに行く前にはある程度の理論武装が必要です。
ファッションは二の次。メガスポーツ店の実力派シューズ
メガスポーツ店とは「スポーツゼビオ」が代表です。メリットはなんといっても実用性に特化していること。ファッションはさておき、歩く走ることに特化した「運動靴」をさがすなら一番手っ取り早い。各メーカーの最先端モデルを網羅しているので、一つの店舗で世界中のメーカーのあらゆるモデルを試すことができます。同じメーカーであっても、標準幅・ワイド・エクストラワイドなど、自分の足に合った靴を探すことができます。チェーン店には置かれない、アメリカのHOKAやスイスのオンなども必ず置かれています。
デメリットは明白です。チェーン店とは逆で、ファッション要素がありません。極端なこというと、私服に合わせる靴としてはとても難易度が高い。ファッションアイテムではなく、あくまで実用靴なのです。しかし、本格的にウォーキングやランニング、ジムのトレーニングなどでケガをせず、快適に動ける靴をさがすなら、入口としては最適でしょう。販売員も靴に詳しい人が多く、予算と目的を伝えるとかなりの確率で正解の靴を持ってきてくれます。自分で判断が難しい場合は、一番頼りになる存在がメガスポーツ店と言っていいでしょう。
ただし、店舗がどんどん閉鎖しているのが現実です。不況と少子高齢化で、本格的なスポーツ人口や運動部の縮小のあおりを受けています。
マイサイズが把握できているならオンライン一択
メガスポーツ店が入口だとすると、次のステップとして最適なのが各メーカーのECサイト、オンラインショップです。自分だけの定番品を知っていて、かつマイサイズを把握しているのであれば、カラーちがいやおしゃれな靴が見つかります。オンライン限定カラーなども今ではザラ。「このモデルの、このサイズの、この幅」まで決まっていればこれほど早い手段はありません。
ぶっちゃけた話ですが、どこのメーカーもコスト削減の対象は「人」です。自分でどの靴がいいのかの判断ができ、スタッフに相談する必要がない場合はさっさとオンラインで買いましょう。とにかく実店舗には靴を置くスペースがありません。箱があるので服よりかさばります。箱がつぶれているだけでクレーム扱いにもなるので、新品のうちにさっさとほしい人のところへ届けたいのがメーカーの本音。HOKAなどは電撃的に大規模なセールをやるので、メンバー登録しておけば最大半額でほしいモデルが手に入る場合も。私はいつもこの方法で購入しています。
アウトレットはナイキ一択
アウトレット店で買う場合は、ナイキ一択です。アディダス、アシックス、革靴メーカーもありますが、それなりの種類しかありません。ナイキだけが別格。なんといってもメリットはちょっとおかしいと思えるレベルの安さ。ほんのちょっとの型落ちモデルや、男性なら24㎝や32㎝などの極端なサイズも店舗やオンラインではなく、実店舗のアウトレットで買うことができます。
ちなみに私はナイキを定価で買ったことがありません。アウトレットに行ったほうが確実にマイサイズを安く買えるからです。
デメリットは実店舗でしか在庫がわからないこと。ネットでも検索できません。おそらくナイキ自体も把握する必要がないのでしょう。ある意味ただのオンラインの倉庫としても兼用できるので、メーカーとしても一挙両得です。ゴルフシューズ、バスケットボールシューズなども置かれ、子供靴に至ってはカラーは選べませんが半額以下の処分価格で販売されています。
カンのいい方は気づいていますが、普通のショップに置いてある靴は、どんどん種類が減っています。セールでも極端に安くなることはなくなりました。正確に言えば、ショップごとの得意、不得意が明確になったので、「靴が散っている」状態なのです。逆手に取れば、自分の足のサイズ、特徴、歩き方を把握して「マイモデル、マイサイズ」さえ知っていればとても賢い買い物ができる時代なのです。
【シューフィッターこまつ】
こまつ(本名・佐藤靖青〈さとうせいしょう〉)。イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『シューフィッターこまつ足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます。「毎日靴ブログ@こまつ」
【関連記事】
・
ニューバランスは「買ってはいけない」「買うべき」が紙一重。後悔しないための見極め方とは
・
ナイキ、ニューバランスのスニーカーが突如壊れる「加水分解」。対策は?
・
無印良品の「買ってはいけない靴と買うべき靴」。お買い得もあれば難ありも
・
「中敷きをすすめる靴屋」で買ってはいけない。サイズ調整の99%を解決する方法とは
・
“世界一売れた”アディダスのスニーカーなのに「疲れる」「膝が痛い」納得の理由