名手・荒木雅博が語る 山川穂高のGG賞初選出の妥当性「及第点どころか、ファーストミットの使い方など一級品」

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名手・荒木雅博が語る 山川穂高のGG賞初選出の妥当性「及第点どころか、ファーストミットの使い方など一級品」

11月20日(水) 7:15

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荒木雅博が2024年度「ゴールデングラブ賞」受賞者を解説〜パ・リーグ編

現役時代は守備の名手として鳴らした荒木雅博氏による「ゴールデングラブ賞」受賞者の守備力チェック。セ・リーグ編に続き、パ・リーグの9人についても解説してもらった。

セ・リーグ編はこちら>>

76年ぶりに刺殺397の日本記録を更新した楽天・辰己涼介photo by Sankei Visual

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【二冠王・山川穂高が初選出】 ──かつての松坂大輔投手や桑田真澄投手、浅尾拓也投手のように、守備が秀逸な投手が少なくなりました。そういう意味で、加藤貴之投手(日本ハム)のような「9イニング平均与四球1個以内」という投手を選出してもいいのでは?と思うのですが。

荒木 あくまで「9人目の野手」ということなのでしょう。今年初受賞のリバン・モイネロ投手(ソフトバンク)がパ・リーグの担当記者259票中76票で、小島和哉投手(ロッテ)が75票でした。このふたりだけ失策0で、守備率1.000でした。バントを含めた打球処理をきっちりこなして、さらにモイネロは防御率1位。「しっかり守りきる」という記者の評価なのでしょう。

──捕手は、昨年の受賞者である若月健矢選手(オリックス)に代わり、甲斐拓也選手(ソフトバンク)が奪回しました。

荒木 盗塁阻止率こそ若月選手のほうが上ですが、甲斐選手はポップタイム(捕球してから二塁、もしくは三塁に送球し、野手が捕球するまでの時間)が早いですよ。日本シリーズを見ていても、ワンバウンドを確実にブロッキングして前に落とし、拾うのが早い。走者は塁に釘づけです。甲斐選手はキャッチング、リードを含め、座ってくれているだけで安定感と安心感を与えてくれる捕手です。

──一塁手は山川穂高選手(ソフトバンク)が176票を集め、初めて受賞しました。「消去法だ」とか、「ネフタリ・ソト(ロッテ)のほうがうまい」という声も聞こえてきましたが。

荒木 これまで4度受賞の中村晃選手(ソフトバンク)に代わって、FAで移籍してきた山川選手が初受賞ですね。本塁打と打点の二冠王の本人も「一番無縁の賞だと思っていた」と謙遜していましたが、山川選手の守備は及第点どころか、ファーストミットの使い方など一級品ですよ。内野手からワンバウンド送球など、必要最低限の動きでさりげなくさばいています。とにかくグラブさばきが柔らかい。

【宗佑磨を抑えて初受賞・栗原陵矢の守備力】 ──中村奨吾選手(ロッテ)と外崎修汰選手(西武)が交互に受賞していたセカンドは、小深田大翔選手(楽天)が初受賞です。

荒木 小深田選手はもともと遊撃手で、機敏な動きで打球を処理する選手でしたが、コンバートされた二塁のポジションは、2年目でハマりましたね。楽天の本拠地は土のグラウンドですが、よく守ったと思います。

──三塁は栗原陵矢選手(ソフトバンク)が初めて選出されました。

荒木 常連だった宗佑磨選手(オリックス)が不振で、出場機会を大きく減らしました。ほかにも中村奨吾選手(ロッテ)や浅村栄斗選手(楽天)がセカンドからサードへコンバートされ、郡司裕也選手(日本ハム)も初めて守ったシーズンでした。そんななか、栗原選手が初めて受賞しました。

栗原選手は捕手としてプロ入りしましたが、打撃を生かすために野手に転向。三塁だけでなく、外野や一塁を守ったこともありました。三塁の守備はかなり努力したのだと思います。日本シリーズでも堅実な捕球と送球、守備に対する高い意識が見てとれました。ソフトバンクは打つイメージがありますが、栗原選手をはじめ、牧原大成選手、周東佑京選手など守備力があって、かつ複数ポジションを守れる選手がいるなど、守り勝つ意識の高いチームです。

──ショートは源田壮亮選手(西武)が今宮健太選手(ソフトバンク)を抑えました。

荒木 源田選手は143試合で守備機会551、失策4の守備率.993(リーグ1位)。今宮選手は132試合で守備機会504、失策4の守備率.992。票数も割れたみたいですが、差はありません。源田選手が無駄のない足の使い方が特徴で、動きがシンプルです。今宮選手は強肩を武器とし、三遊間の深いところから矢のような送球が魅力です。

【76年ぶり日本記録更新の辰己涼介】 ──外野は、まず辰己涼介選手(楽天)が4年連続4度目の受賞です。

荒木 1948年に巨人の青田昇さんが記録した391刺殺を76年ぶりに更新する、刺殺397の日本記録を樹立しました。俊足はもちろん、打球判断、球際の強さなど、すべて兼ね備えていないとこの数字は残せません。辰己選手は肩も強く、試合解説をしていても「辰己のところに打球が飛んでくれると面白い」と、ワクワクさせてくれる選手です。

──次点は周東佑京選手(ソフトバンク)でした。

荒木 阪神の近本光司選手同様、俊足をいかんなく発揮して、捕れるかどうかの際どい飛球に余裕を持って追いついていますよね。ピッチャーとすれば、守備範囲の広い外野手がいるとラクですよね。

──最後は万波中正選手(日本ハム)です。

荒木 7月14日の日本ハムとソフトバンクの試合で、ライト前ヒットで本塁を狙った二塁走者の周東選手を万波選手がレーザービームで刺しました。「これぞプロ!」というバックホームでした。送球で走者をアウトにする「補殺」はリーグ1位の11個。ほんとにスケールの大きい外野手ですよね。

──パ・リーグ全体を見渡していかがですか?

荒木 シーズンを独走したソフトバンクから最多の5人。リーグ3連覇から5位に沈んだオリックスは、昨年の3人からゼロに。なんとなくですが、GG賞の人数と順位が連動しているような気がしないでもありません。勝利に貢献したという意味で、シーズンの成績上位のチームから選ばれやすいのですかね。

──複数のポジションを守るため、そのために規定試合(野手は全試合の3分の2、捕手は同2分の1、投手は規定投球回と同数以上)に達せずに受賞を逃す選手がいます。メジャーのような「ユーティリティー枠」を導入するのはいかがですか。

荒木 逆に、1試合に複数ポジションを守って、その数を増やしていけば規定試合に達します。守備が本当にうまい選手を選んでいくわけです。個人的には、大谷翔平選手(ドジャース)が投手とDHをやるように、たとえば内野と外野を守って「二刀流」のGG賞獲得選手なんて、夢があっていいと思います。



荒木雅博(あらき・まさひろ) /1977年9月13日、熊本県生まれ。熊本工高から95年ドラフト1位で中日に入団。02年からレギュラーに定着し、落合博満監督となった04年から6年連続ゴールデングラブ賞を受賞するなど、チームの中心選手として活躍。とくに井端弘和との「アラ・イバ」コンビは中日黄金期の象徴となった。17年にプロ通算2000安打を達成し、翌18年に現役を引退した。引退後は中日のコーチとして23年まで指導し、24年から解説者として新たなスタートを切った

[牧野1]ストレートに褒めているので、たまには以下の感じでもいい気もしますが(笑)いかがでしょう?

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