ディレクターが語る東京フィルメックス「良い映画を上映する。それが普通の映画祭」

神谷直希氏

ディレクターが語る東京フィルメックス「良い映画を上映する。それが普通の映画祭」

11月20日(水) 18:00

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世界の秀作・傑作を上映する映画ファン恒例の映画祭、東京フィルメックスが23日(土)に開幕する。本映画祭はついに今年、25回目を迎えるが、映画祭のプログラム・ディレクターを務める神谷直希氏は本映画祭の最大の目的は「普通の映画祭をやる」ことだという。

2000年にスタートした東京フィルメックスはアジアを中心とした世界各地の作品を紹介し、映画ファンの支持を集めてきた。初回はル テアトル銀座で開催され、第2回から昨年まで有楽町朝日ホールがメイン会場だったが、今年は初めて丸の内TOEIがメイン会場になる。

「ここ2、3年、会場を変更することも選択肢のひとつだと思っていて、丸の内TOEIさんとも話をしていました。有楽町朝日ホールの良さもあるんです。ロビーのスペースも広くて、控室や舞台もありますし。ただ、映画祭には適正なサイズがあるんじゃないかとずっと考えています。フィルメックスにとって適正な席数を考えると、上映作品にもよりますが、丸の内TOEIぐらいの席数(511席)がいいんじゃないかという話をスタッフともしていて、これからも会場についてはサイズと映画を上映する環境を大事にしたいとは思っています。

とは言え、丸の内TOEIさんは(2025年夏に)閉館するので来年以降に関しては未定です」

『Caught by the Tides(英題)』(C)2024 X Stream Pictures

本年度はジャ・ジャンクー監督の『Caught by the Tides(英題)』がオープニング作品、ホン・サンス監督の『スユチョン』がクロージング作品として上映されるほか、コンペティション部門は10作品が選ばれた。

「コンペの選定は今年も悩んで決めました。例年と違ったのは、今年から作品選考のやり方が変わったんです。まず、作品のエントリーを有料化して、これまでは作品の選考を映画祭の事務局の人間だけで行なっていたのですが、今年から事務局外の方にも選考をお願いして、主にプレ・セレクションの部分をお願いしました。

今年から、ジャ・ジャンクー監督がやっている平遥(ピンヤオ)国際映画祭のインターナショナル部門のプログラミングをやることになり、人員的にも時間的にもそれまでの体制では無理で、チームを組んで取り組むことになりました。平遥映画祭は中国語圏の映画については別にプログラマーがいるので、それ以外の作品で、長編3作目までの監督の作品をひたすら観て、並行してフィルメックスもあるので中国語圏の作品も観ていく、というのをチームを組んでやっていきました。

結果としてフィルメックスで上映される作品がこれまでと変わったのかはわからないですけど、9月末から平遥映画祭があったので、フィルメックスの選考だけやるよりも早く映画を観ることができた。ベネチアやトロントでプレミア上映される作品の場合、これまでだと『いまは出せないので、もうちょっと待って』と言われて、ギリギリまで観ることができなかったこともあったんですけど、平遥があったことで少し早い段階から観ることができ、そういう意味では例年より時間の余裕はできたと思います」

『スユチョン』

本映画祭は“作品重視”でプログラムが組まれ、歴代のコンペティション受賞作品の監督名を眺めるだけでも、ロウ・イエ、アピチャッポン・ウィーラセタクン、アリ・フォルマン、ペマツェテンなど世界の映画祭で活躍しているフィルムメイカーの名前が並ぶ。25年目も「良い映画を上映する」という点は変化がないようだ。

「上映する環境も含めて、いろいろと変わってきましたけど、プログラムや映画を上映するという点では大きく変わっていないと思います。今年も作品を選考している時は、強い映画、良い映画、面白い映画を選びたい、インスピレーションを観客と共有したいと思っているだけです。

昔からスタッフの間では『“普通の映画祭”をやろう』と話していました。普通って何なのかというと、経済的な尺度ではなくて、文化的な尺度とか、映画的な尺度で映画祭をやる。面白くて良い映画を上映する。それが普通の映画祭で、そこから離れてしまっている映画祭も多い中、世界を見ると普通の映画祭というのはちゃんとあって、フィルメックスが始まった当初はそういう普通の映画祭が日本にはあまりなかったんです。だから普通の映画祭をやれば結果はついてくるだろうということで始まったんだと思いますし、それは現在も変わらないですね」

良い映画を上映する。普通の映画祭をやる。その点はブレることなく、会場や上映環境などはこれからも改善が続くようだ。

「今年は作品選考の部分だけでなく、会場も変わりますし、宣伝の方法も、チラシの仕様を変更する等、トライアルでやっている部分があります。良い映画をちゃんと上映して、観客の方にも来てほしい。そのために何をすればいいのか、今年もトライアルを続けていきます」

第25回東京フィルメックス/TOKYO FILMeX 2024

11月23日(土)~12月1日(日)
丸の内TOEI、ヒューマントラストシネマ有楽町

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