11月20日(水) 5:30
国民年金の支給額は、国民年金保険料を支払ってきた月数におおむね比例します。参考までに日本年金機構によると、令和6年度の国民年金支給額は、満額(480ヶ月支払い)で81万6000円です。
仮に学生時代は2年間支払っていなかったとすると、65歳から支給される年金額は77万5200円にまで減少します。減少する額は、実に4万800円です。
もし、90歳まで生きると仮定したら、減少額は生涯で102万円にのぼります。102万円あれば、25年間で定期的に旅行に出掛けたり、趣味にお金を使ったりするなど、有意義な時間を過ごすことができるかもしれません。
ここで気になるのが、追納にかかる費用です。日本年金機構によれば、保険料の免除や納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して3年度目以降に保険料を追納する場合には、追納にかかる費用は、当時の保険料に経過期間に応じた一定の加算額を上乗せした額になります。
参考までに、令和元年度および2年度の2年間、保険料の支払いを猶予されていた場合、それを令和6年度中に追納する場合は、総額で39万8760円になります。
先に確認した年金額の差額を参考に考えると、保険料を追納した場合は一時的に手元から40万円ほどの支出が生じますが、将来的にそのとき追納した保険料以上の額になって戻ってくることは、可能性として十分に考えられます。仮に90歳まで生きた場合、追納により102万円の年金を受け取れるため、差し引き約62万円の得をすることになります。
追納の際には、ひとつ考えなければならない、重要な事項があります。それは「追納できるのは前10年以内の免除等期間に限る」ということです。仮に20歳から22歳までの間の、2年分の保険料を追納しようと思ったら、遅くとも30歳までには追納を開始しなければなりません。さもないと、将来的に国民年金を満額受け取ることが難しくなります。
また、国民年金保険料は社会保険料控除の対象となりますが、支払った額がそのまま税金から控除されるわけではありません。参考までに、課税所得金額300万円の方が約40万円の追納をした場合でも、その年に減額される税金の額は、所得税・住民税合わせて最大でも8万円程度です。
加えて、今回の試算によれば、65歳から年金を受け取りはじめた場合でも、将来的に追納した額以上を年金として受け取るのであれば、少なくとも75歳までは年金を受け取りつづける必要があります。
とはいえ、年金は社会保障の一環です。追納を考える際は、単純に「受け取る額の増加額」や「保険料として納めた額とのリターン」などを基準として考えるべきではないでしょう。
また、近年は自身で拠出したお金を運用して、将来それを受け取る「iDeCo」などの制度があり、年金の追納よりそれらを優先する方もいます。少なくとも追納の可否を考える際には、これらを意識しておく必要があるでしょう。
学生時代に猶予を受けていた国民年金保険料は、社会人になってからも追納することで、将来受け取る年金額を満額に近づけることができます。しかし「年金の追納は、猶予を受けたときから10年以内でなければならない」など一定の注意事項もあります。
年金を追納すべきかどうかは一概にいえるものではありません。しかし、長生きした場合に少しでも備えておきたいのであれば、余裕が出てきた新卒3年目に、無理のない範囲で追納することは、よい選択といえるでしょう。
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
執筆者:柘植輝
行政書士
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