11月19日(火) 4:20
民法上、扶養義務が課せられているのは、直系血族や兄弟姉妹です。今回のケースだと、義母の実子である娘(義姉)と息子(夫)が扶養義務者となります。嫁はあくまでも子どもの配偶者で、義理の親子関係にあります。直系血族ではないため、直接の介護義務が生じません。したがって、義母の介護義務は実子、つまり義姉や夫にあるとされています。
義母の遺産相続において、子どもの配偶者には法的な相続権が認められていません。民法では相続順位が定められており、それに照らすと、義母の配偶者が亡くなっている場合、相続人は実子である義姉や夫のみが該当します。
しかし、今回のケースのように相続人である夫が遺産を子どもの配偶者に分ける意向を示している場合、その内容が遺産分割協議で合意されることで、実質的に分配されるケースもあるでしょう。このように法的な相続権はないものの、家庭内の合意によっては子どもの配偶者にも遺産分配がされる可能性があるのです。
子どもの配偶者が献身的に義母の介護に関わった場合、相続時に「特別寄与分」を主張できる可能性があります。特別寄与分とは、相続人以外の親族が被相続人に対して特別な貢献を無償で行った場合、その貢献に見合った金銭の分配を請求できる権利です。
今回の場合は、「介護」が特別な貢献に該当すると考えられます。ただし「特別寄与」と認められるには、この介護が無償で行われていることが条件です。もしも介護に対して義母から相当の謝礼をもらっていた場合は、特別の寄与に該当しないこともあります。
遺産相続に関するトラブルを避けるためには、義母が遺言書を用意しておくことが効果的かつ確実です。遺言書は法定相続よりも優先されるため、被相続人が遺産の分配方法を事前に指定しておくことで、本来法定相続人でない人にも遺産を渡すことができます。
今回の場合では、義母が遺言書で子どもの配偶者への感謝を示すために、特定の財産を分け与えるといった意思を示していれば、相続手続きがスムーズに進みます。相続分を明確にすることで、家族間での意見の食い違いを最小限に抑えることができるでしょう。
子どもの配偶者には義母の介護義務はありませんが、家庭の事情によっては実際に介護に関わることもあります。しかしこの場合は善意の行動となるので、子どもの配偶者の理解と納得を得る必要があるでしょう。相続においても、特別寄与分を請求するには相続人全員の同意が必要です。
義母の意思を明確にするために遺言書を準備し、家族間の円満な話し合いを心がけることが、介護と相続におけるトラブルを避ける鍵となるでしょう。
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執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級
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