一般的に文学作品として読み込む源氏物語を、特定分野の専門家の視点で読むと、また違った側面が見えてくるかもしれない。精神科医で小説家の帚木蓬生氏が、50年読み込んだ源氏物語の「こころの言葉」を解き明かした『
源氏物語のこころ
』(朝日新聞出版、税込み1870円)が発売されている。
源氏物語を底支えしている300以上もの「こころの言葉」から、紫式部の、容易に答えの出ない事態に耐えうる能力である「ネガティブ・ケイパビリティ」に注目。その創作視点に迫った一冊だ。全54帖を通して繰り返される別離と死別の様相。主な25人の女君たちの生き方、人生観の違いを「心表現」でどのように描きわけたのか。さらに藤壺宮をめぐる光源氏と桐壺帝のように、恋に挑む7つの「三角関係」に複雑な心の道筋を追っている。
また本居宣長、小林秀雄の源氏物語への洞察をもとに、短編『源氏の君の最後の恋』を書いたユルスナールにつなげる独自な文学地図を示し、微細で多様な心の言葉から大作に向かう道筋を解きあかしている。新しい視点で読める源氏物語の手引書だ。
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