11月19日(火) 5:00
金は「安全資産」と呼ばれ、現物を購入すれば手元において保有することもできます。金は、現金や株式のような通貨・有価証券ではなく「現物(モノ)」ですので、通貨の価値が低くなるインフレ下において特に強いと言われています。
世界的な不況や戦争などの先の見えない不安定な状況に置かれると、世界中の投資家は株式のような「リスク資産」から「安全資産」にお金を移す傾向があります。このような状況下で金価格は上昇する傾向があることから、「有事の金」と呼ばれるのです。
一方で、世界経済が安定して大きな紛争も起きていないような、いわゆる「平和な時代」においては、投資家は冒険的になって大きな利回りを得るために「リスク資産」へと資金を向かわせる傾向が強くなります。このような状況では金価格は低迷する一方で、株式相場などは大きく上昇します。
このように、現物の金は世界経済・世界情勢が不安定な状況では「投資商品」としてのメリットを感じられる一方で、世界経済が安定しているときは株式などのリスク資産に比べて投資先としては不利になる傾向があるのです。
図表1のとおり、ここ5年間ほどは、世界中で新型コロナの発生や大規模紛争の発生などが影響し、金価格は比較的順調に上昇を続けてきました。
図表1
三井マテリアル株式会社 金価格推移
しかし、1978年頃から現在までの長期期間のグラフを確認してみると、1980年頃から2000年頃にかけて、最近でも2013年頃から2018年頃までは、金の価格が停滞・低迷していた時期があることがわかります(図表2)。
株式相場も同様ですが、ここ数年の状況が良いからと言って、今後もその状況がずっと続くと考えて投資をすることは大変危険なことなのです。
図表2
三井マテリアル株式会社 金価格推移
一方、金価格が低迷していた期間においては、代表的な株価指数であるS&P500などは順調に上昇をしていました。逆に、株式相場が低迷している時期は、金価格は上昇する傾向があります。
全般的に金価格と世界の株式相場は、逆相関(一方が上昇すれば、一方は下降するような関係)に近い関係になっていますので、主に株式に投資している人が「リスク分散」のために金投資も行うことは理にかなっていますが、金投資のみに余裕資金を注ぎ込んでしまうと、非常にハイリスクな状態になってしまいます。
特に投資に慣れていない人や余裕資金の少ない人は、金価格が上昇しているからといって余裕資金を全て金投資に向かわせるようなことはせず、投資商品のバランスを意識するようにするとよいでしょう。
金の価格は世界情勢が混乱している時や株式相場が低迷しているときに上昇しやすいため、株式などの資産を多く持つ人がリスクヘッジのために金を購入することは、資産総額の安定についてメリットがあります。ただ、投資のための資金をすべて金投資に向かわせてしまうと、極めてハイリスクな投資姿勢になってしまいます。
資産形成期にある人や余裕資金が少ない人は、金投資に多くの金額を向けることは避け、バランスある投資の姿勢を取っていくほうがよいでしょう。
三井マテリアル株式会社 金価格推移
田中貴金属工業株式会社 年次価格推移
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
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