今中慎二が語る中日・井上一樹新監督への期待立浪和義前監督が残したものを継承しつつ「自分の色を出せるか」

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今中慎二が語る中日・井上一樹新監督への期待立浪和義前監督が残したものを継承しつつ「自分の色を出せるか」

11月19日(火) 10:00

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今中慎二が語る「中日の現在と今後」後編

井上一樹新監督について

(中編:根尾昂の現状とドラ1・金丸夢斗への期待理想の育成・起用法や課題は?>>)

中日の元エースであり、かつてはチームメイトとして井上一樹新監督と共にプレーした今中慎二氏。同監督への期待を、当時のエピソードと併せて語ってもらった。



来季から中日の指揮を執る井上一樹新監督photo by Sakei Visual

来季から中日の指揮を執る井上一樹新監督photo by Sakei Visual





【井上新監督の現役時代の印象と、指揮官としての期待】――今中さんは1988年のドラフト1位、井上一樹監督は1989年のドラフト2位で中日に入団。チームメイトとして共闘した期間もありましたが、どんな方ですか?

今中慎二(以下:今中)接していて思ったのは、性格的に調子に乗ったらガンガン上がっていく、わかりやすいタイプだということです。逆に、調子が落ち込んだ時もわかりやすかったですよ。

4打席凡退をした試合の後などは、ご飯も食べられないくらい落ち込んでいましたからね。「あぁ、けっこうわかりやすいんだな」って(笑)。でも、野手の場合はローテーションで回るピッチャーと違って、4タコしようが次の日に挽回できるチャンスがくる。切り替えざるを得ないというか、落ち込んでいる暇もないので大変ですね。

――そんな井上監督が来季から指揮を執るわけですが、期待していることは?

今中いかに自分の色を出せるか、自分の考えをチームにどう浸透させていけるかが大事になるんじゃないかと。立浪和義前監督が築いてきたものを継承することも大事だと思いますが、いかに思い切ってできるかじゃないですか。「足や小技を絡めていく」という話もしていましたが、ここ数年はそういう攻撃があまりできていませんでした。オープン戦まではできていることもあるんですが、シーズンに入ってからできるかどうかですね。

――今季は二軍監督を務めていたため、チームの内情を把握し、選手個々の性格なども把握していそうですね。

今中今の若い選手たちは難しいところがありますからね。監督が自分のことを知りすぎているのも嫌だろうし、逆に知ってくれていないのはもっと嫌なはず。その点、井上監督はコミュニケーションをとるのがうまいので、それがうまくプレーに出ればいいですね。選手がうまい具合に乗っかってくれればいいのですが、自分だけが頑張るような形は避けたいところでしょう。

それと、今回の井上監督のケースと同じように、ファームの監督が一軍の監督に就任するケースはけっこうありますよね。その場合の利点は、監督がすでに選手の能力を理解しているということ。なので、一軍の監督になる時にファームの選手を一緒に一軍に上げ、比較的にすぐ戦力になったりしていますね。

――オリックスの中嶋聡前監督と杉本裕太郎選手がいい例ですね。



今中そうですね。ファームでよく見ていた杉本を一軍に引き上げ、一軍の主軸として使い続けたシーズンにオリックスはリーグ優勝を果たしました。杉本はホームラン王に輝く活躍ぶりで貢献していましたが、そういう選手がポンッと出てくれば、またチームが変わるはずです。

立浪前監督が起用していた岡林勇希や田中幹也、村松開人らがもうひと皮むけてくれることもそうですし、そこにプラスアルファでどれだけ新しい戦力が出てくるか。井上監督自身がファームで見てきたなかで、一軍に引き上げようと思える選手がどれだけいるかですね。

【コーチングスタッフは「バランスがいい」】――中日には、ブライト健太選手や鵜飼航丞選手ら、高いポテンシャルを感じる選手が多い印象です。

今中彼らは調子の波があるんですよ。「技術が足りない」と言ってしまえばそれまでなのですが......。僕らが現役の頃は悪い部分をバンバン言われる時代だったのですが、今の若い選手に対しては、悪い部分に関して目をつぶるとか、とことん調子に乗らせてやらせるとか、そういうふうにしていくのもひとつの方向性なのかもしれません。

――立浪前監督が指揮を執った3年間で、今後の飛躍を予感させる選手も出てきたでしょうか。

今中期待をかけている選手を成長させようと、我慢して起用し続けていましたよね。ただ、そういった指揮官の期待に応えられるかどうかは選手自身の問題。石川昂弥にしろ、田中にしろ、今季の経験を糧にしてもっと頑張らなければいけません。「今年は一軍でやりました。だから来年も......」という考えが少しでもあると危ういです。まだまだ伸びしろがあるわけですし、チームを底上げする意味でも競争させていくことがベターかなと。

――コーチングスタッフの顔ぶれを見ると、打撃担当コーチに松中信彦氏、野手総合コーチに飯山裕志氏など、外部からの招聘もありました。

今中もちろん生え抜きのコーチもいますが、何人かが他球団でのプレーや指導を経験しているというのはバランスがいいんじゃないですか。何より井上監督がやりやすいことが一番だと思います。

個人的によく思っているのは、コーチは意見をどんどんぶつけ合うほうがいいんじゃないかと。ああでもない、こうでもないっていう意見交換をしていかないと、なかなかいい答えは出てこないんです。誰かが間違った考え方をしていたら、周りが止めてくれれば済む話なので。

――今は監督やコーチの言葉が、インターネットなどを介して選手に届く時代です。

今中今の監督やコーチは、そういうことに対しても気を遣わなければいけなくなっていますよね。本人に言わなくても、全部伝わってしまうわけですから難しい時代ですよ。僕らの時代は新聞で監督のコメントとかをチェックしていましたけど、当時の星野仙一監督はメディアを巧みに使っていましたね。

でも、今も昔も共通して言えることは、プロの世界は結果がすべてということ。結果が出ていれば、少し気になる監督やコーチの言葉でも、ある程度は許容できたりするものです。まあ、結果が出ていれば周囲が何を言ってもいい、ということではないのですが。

――先ほどもお話されていましたが、井上監督としての理想は、自分の色を出していくことでしょうか?

今中それが大事なんじゃないかなと思います。これまでの井上監督を見ていると、発信力やコミュニケーション力の高さをすごく感じますし、チームがどう変わっていくのか楽しみですね。

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日大阪府生まれ。左投左打。1989年、大阪桐蔭高校からドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多賞(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

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