11月18日(月) 22:20
遺言書とは、法定相続人のなかでも特定の相続人に特定の財産を残したい、法定相続人ではないがお世話になっている人にお礼として財産の一部を渡したい、孫に財産を渡したいなどの思いを、第三者にも分かるように形にしたものです。
つまり亡くなった人(被相続人)が作成した遺言書があれば、誰に、どの財産を、どれくらい残したいのか、渡したいのかといった意思を伝えることができる書面といえるのです。
亡くなったら財産の行方を知ることは不可能なのですが、遺言書を作成しておくことで、自分の気持ちを伝える機会となり、自分が受け継がせたい人に財産を渡すことができるようになるのです。
遺言書がない場合は、民法にのっとり相続が行われます。そのため、法定相続人全員に相続する権利が生じるほか、決められた配分で財産を渡すことになります。
基本的に、法定相続人同士で誰がどの財産を引き継ぐのかを決めていくため、自宅は長男に引き継がせたいと考えていても次男が引き継いだり、ゴルフの会員権は次男に引き継がせたいと考えていても長女が引き継いだりするなど、自分の生前思い描いていた人物と違う人物が財産を引き継ぐことにもなりかねません。
そのほかには、土地や家屋など簡単に分けにくい財産の場合、売却をして現金に換え、それを配分するという選択肢を選ぶことも考えられます。その結果、残された妻などが、住む場所を失うという可能性もあります。
また、相続は法定相続人同士で話し合いを進めていくことが一般的なのですが、話がまとまらず、調停で話し合う、弁護士を介入させなければならないといったことも生じることがあります。
特に、話し合いがまとまらないと時間はもちろんのこと、例えば被相続人が契約をしている貸金庫等でコストの発生や、持っている口座の種類によっては口座管理料が生じてしまうことが考えられます。そうなると、財産の行く先が決まらないまま、余計な費用だけが発生し続けることにもなりかねないのです。
自分の家族は仲良しだから「もめるはずがない」いという人はいますが、亡くなった後の遺族の気持ちは誰にも分かりません。あらかじめトラブルの芽は摘み取っておいたほうがいいでしょう。
遺言書を作成するときには、定められた遺言書の形式になっていなければ、無効になってしまいます。そのため、遺言書を作成するときには、自筆証書遺言よりも公正証書遺言のほうが失敗は少なくなります。
このとき注意しなければならないのが遺留分についてです。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人は遺言の内容にかかわらず、法定相続分のうち一定割合に相当する金銭の支払いを請求できるという決まりのことです。
具体的には、直系尊属(父母や祖父母など、自分より上の世代の直系親族)のみが相続人の場合は、法定相続割合の3分の1、それ以外は法定相続割合の2分の1が遺留分です。
遺言書を作成するときには、各法定相続人の遺留分を侵害しないように作成することが、余計なトラブルを誘発しないためにも大切になってきます。
遺言書は作りたくないと考えておられる親御さんに、子ども世代から作成することを勧めにくいという声を耳にすることは少なくありません。亡くなった後に家族間でトラブルが生じるのを防ぐためにも、折に触れて遺言書について話し合う機会を持ってみてはいかがでしょうか。
執筆者:飯田道子
ファイナンシャル・プランナー(CFP)、海外生活ジャーナリスト
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