“執事”が明かす、超富裕層たちの意外すぎる日常。一般人との出会いは皆無、結婚相手で多いのは

新井直之さん(提供写真)

“執事”が明かす、超富裕層たちの意外すぎる日常。一般人との出会いは皆無、結婚相手で多いのは

11月19日(火) 15:53

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野村総合研究所の定義としては、純金融資産額が5億円以上の世帯が「 超富裕層 」とされているが、2021年に行われた調査の結果では9万世帯と意外に多い。にもかかわらず、その実態はあまり知られていない。

超富裕層たちは、物価高や給料横ばいの現状に喘ぐ庶民とは無縁の、驚くべき生活を送っているという……。彼らは日々どんな暮らしをして、何に悩んでいるのか。

国内外の超富裕層向けに執事やメイドのサービスを提供する、日本バトラー&コンシェルジュ株式会社 代表取締役社長の新井直之さんに話を聞いた。

予定は「誰にも明かさない」、時にはウソの情報を流す

なかなか表に出てこない超富裕層たちの日常。彼らはどんな1日を過ごしているのだろうか。

新井さんは「前提として、彼らは予定を明かしません。むしろウソの情報を流すこともあります」と語る。「ウソの情報を流す」とは、どういうことなのか。

「ある外国人の超富裕層の方から『日本の別荘に行くから、2日後の夕方4時ね』と連絡があり、ドライバーや執事の手配をしました。すると直前に連絡が来て『ごめん、予定変更になった。3日後の夜8時ね』と言われたんです。手配しなおしたところ、また直前に予定を変更されて……3回目で、やっと来ましたね。

彼らは執事・ドライバー・空港関係者の中にスパイがいないか、常に気を配っているからです。空港や別荘で、反対勢力に待ち伏せされるケースは実際にあります。本当の予定を知っているのは、常にそばにいる執事1人だけ。家族ですら知らないこともあります」

完全にプライバシーが保たれていると思いきや、執事のほかにもボディガードが一緒なのだという。

友人や恋人との会話も「ボディガードに筒抜け」

「ボディガードはディナーの時も、交渉の時も、ずっとそばに立っています。お手洗いに行く時も例外ではなく、彼らは外で待ちます。TPOによって友達を装ったり、偶然近くを通りかかった通行人を装ったりします」

最低でも1人、多い時は7人が雇われることもあるというボディガード。その業務内容は、雇い主が襲われた時に身を守るだけではないそうだ。健康状態を悟られないように、鼻をかんだティッシュを回収したり、時には便も回収したりするのも彼らの役目だという。

いつも一緒にいるということは、プライバシーも何もないのではないか。

「もちろん、ご友人や恋人との会話も、すべてボディガードには筒抜けです。そのため超富裕層の方たちは、ボディガードが交代するのをすごく嫌がりますね。身元も確実な人が選ばれます」

結婚相手は「1代目は水商売女性、2代目や3代目の“親リッチ”はお見合いが多い」

「恋人」という単語が出たが、彼らの恋愛事情も気になるところだ。

「超富裕層は一般の方と知り合う機会がないので、恋愛に関しても出会いの場がありません。そのせいか、男性はキャバクラやラウンジなど、水商売の女性と結婚することが多いですね。だいたい10歳から20歳くらい年下の方が選ばれます。

これは別に悪い意味で言ってるわけではありません。六本木のキャバクラや銀座のクラブには、年齢の割に礼儀や礼節をわきまえている方が多い。賢くて話が面白く、社会人として立派な方もいます。

ただ、『奥様とどこで知り合ったんですか?』と聞くと、やっぱり言わない方が多いです。関係が深くなってくると『実は、銀座のクラブのママなんだよ……』と(笑)」

お金持ちといえばお見合いのイメージが強いが、今ではもう廃れたのだろうか?

「事業を承継された2代目や3代目の、いわゆる“親リッチ”では、お見合いもいます。でも一代で財を築いた方は、水商売の方を選ぶ傾向にあります。かつての超富裕層は親リッチが大半でしたが、最近ではYouTuberや仮想通貨で儲けて執事を雇う方も増えてきました」

一代で財をなすとは、何とも夢のある話だ。あとはベッドでゴロゴロ、左うちわで暮らすだけ……と思いきや、意外とそうでもないのだという。

お金を「使うこと」に忙しくて寝る暇がない

新井さんが知る外国人の超富裕層の中には「絶対にベッドで寝ない」という男性がいたと話す。

「その方は24時間を『仕事をしているか、遊んでいるか』のどちらかに使っていました。睡眠は移動中に、プライベートジェットか車で、5~10分でもあれば眠りにつきます。この方だけでなく、超富裕層の中には、寝る間を惜しんで遊ぶ方が多いですね」

この傾向は、一代で財を築いた者に顕著だという。なぜ、ここまでして遊ぶのだろうか……。

「一代で超富裕層になった方には、そこに至るまで寝る間を惜しんで仕事をしてきたというタイプが多いのです。その反動で、若い頃の渇望を取り戻すかのように『せっかく富を増やしたのだから、遊ばなきゃ損』と、プライベートジェットで飛び回られるのです」

素朴な疑問だが、プライベートジェットで、どこへ行くのだろうか。

「この外国人の超富裕層の方は温泉が好きなので、日本に来ると『今から熱海の温泉に行く』『次は六本木の高級スパに行く』など、思うままに行かれますね。お金を持っているゆえに、お金を使いたい。だから、お金を使うのに忙しくて、寝る暇がなくなるんです」

そんな忙殺されている彼の動きを止める人物が、1人だけいたという。

ヨガのレッスンのために「先生を世界中に同伴させる」

それはなんと、ヨガの先生だったのだとか。

「その方はヨガのレッスンを受けるために、先生に家に来てもらうだけではなく、熱海や六本木などの旅先にも同行させていました。『1日2回、朝10時と昼3時にヨガのレッスンを15分やる』という契約なので、先生は会議中でも入ってきて、ヨガの指導をします」

よほどのヨガ好きでも、そこまでされるとさすがにしんどそうだ。しかし、ヨガの先生は契約を履行しないとクビになるので必死だという。

お金があるからこそ、一般人のように「今日は仕事が忙しいから、ヨガはやめておこう」とはならず、どんな状況でもヨガができてしまうわけだ。

はたして、それは幸せなのだろうか?

「お金持ち全般に言えるのですが、すごく幸せそうな方ってあまりいないんです。この方も、ヨガを心から楽しんでいるようには見えませんでした。いつも過労気味で、遊び疲れていましたね」

――お金を持っていれば何でもできてしまうぶん、ある意味「お金に振り回されてしまう」のではないだろうか?そう筆者が指摘すると「はい。でも、お金に固執しているからこそ、お金持ちになれるんですよ」と新井さんはさらりと返すのだった。

<取材・文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother

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