11月17日(日) 4:40
まず、昭和から令和の40数年にかけて、「専業主婦世帯」の割合はどのように変化していったかを見てみます。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調べによると「専業主婦世帯」は昭和55年(1980年)の1114万世帯から時代を下るごとにほぼ一貫して減り続け、最新の統計である令和5年(2023年)においては517万世帯と、半分以下になりました。一方で「共働き世帯」は、同時期に614万世帯から1278万世帯へと倍増しています。(図表1)
結果として、現在においては共働き世帯が専業主婦世帯の約2.5倍も存在する状態になっています。40数年前と比べると、劇的な変化であると言えるでしょう。
図表1
労働政策研究・研修機構 統計情報
よくグラフを見ていくと、バブル経済の崩壊時期(1990年代)は専業主婦世帯・共働き世帯とも「ほぼ横ばい」の状態が続いていましたが「男女共同参画社会基本法」の成立した1999年あたりから、急速に共働き世帯の増加と専業主婦世帯の減少が進みました。
現在は慢性的な人手不足や、それにともなうパート賃金の上昇という環境も手伝っているため、専業主婦世帯の減少トレンドは今後も継続していくと予想されます。
総務省統計局のまとめた家計調査によると、2023年度平均の「二人以上の世帯のうち勤労者世帯」においては、1ヶ月の実収入は平均値で「60万8182円」となっており、年収に直すと「約730万円」となります。
また「世帯主の配偶者のうち女の有業率」は平均でも55.5%に達しており、世帯所得が高い階層ほど割合が高まっていることがわかります(最下位は22.0%であるのに対し、最上位は73.3%)。
「世帯年収400万円」の世帯は、年間収入十分位階級(世帯を所得の低いほうから高いほうに並べて、それぞれの世帯数が等しくなるように10等分したもの)では、最下位と下から2番目の間程度に位置します。
現代日本の勤労者世帯においては、年収400万円の世帯はかなり所得の低いグループに位置するため、限られた予算で生計を立てられるように工夫と妥協が必要になっていくでしょう。
ただ、年間収入十分位階級で低位のクラスであっても、子ども(18歳未満人員)を持つ家庭はそれほど少なくないことも見て取れます。世帯収入が少なければ少ないなりに、節約しながら子育てをしている家庭も多いのです。(図表2)
図表2
総務省統計局 2023年度家計調査から筆者作成
一方で、どうしてもパートナーが専業主婦(夫)という生き方を選び、世帯主の収入増も今後それほど見込めないとすると、日々の生活はかなり苦しくなるであろうといわざるを得ません。特に夫婦が子どもを持つことを希望する場合は、教育費や趣味・娯楽の面で大幅な制限がかかることもあるでしょう。
筆者としては、パートナーが専業主婦になることを希望するのであれば、事前に長期的な家計のシミュレーションを夫婦で行い、節約生活をすることに納得できるのかをしっかり議論していただきたいと思っています。
もしも節約生活が厳しいということであれば、実家からの援助が受けられないか、パートナーが短時間でもアルバイトを行うことで、いくらかの収入が得られないかなどを検討していくべきでしょう。
いわゆる「専業主婦世帯」は1980年代から現在にかけて数を減らし続け、現在は「共働き世帯」の4割程度の数になっています。また全体の傾向としては「専業主婦世帯」は比較的世帯収入が低い世帯が多くなっています。
インフレが続く現在、世帯主の収入増が見込めないのであれば、よほどの節約をしなければ「専業主婦世帯」を維持するのは困難になっているといえます。パートナーが専業主婦になることを希望している場合は、事前に家計の長期シミュレーションを行い、お互いが納得して暮らし方を選択することが大事になるでしょう。
独立行政法人労働政策研究・研修機構 早わかりグラフでみる長期労働統計
総務省統計局 家計調査 家計収支編第2-5表年間収入十分位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出
執筆者:山田圭佑
FP2級・AFP、国家資格キャリアコンサルタント
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