11月17日(日) 4:30
結論として、家族の口座であったとしても資金管理は慎重に行うべきです。遺産分割・遺産相続が完了する前に、故人の意向通り「葬儀費用」としてお金を引き出した場合でも、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。ここでは代表的な例を2つ紹介します。
1つめの注意点が「親族間のトラブル」です。葬儀費用としてお金を引き出したとしても、「相続財産を勝手に引き出した」と、親族からあらぬ疑いをかけられる可能性もあります。
もちろん、葬式費用の領収書を取っておくなど、証跡を残せば安心ですが、もし適切に対応できなかった場合、事情を知っている故人はもういないため、トラブルに巻き込まれてしまうこともあるでしょう。
2つ目は相続財産および相続税計算上のトラブルです。
相続が発生した際には、故人の財産の総額を計算し、相続税の計算を行うことになります。
葬式や葬送に際し、火葬や埋葬、納骨をはじめとする葬式費用は、相続財産から控除することができます。しかし葬式費用の領収書を残していなかった場合、資金使途を証明できないことになります。
故人の口座からお金を引き出した事実は、親族間で正しく共有するとともに、葬式費用の領収書はしっかりと残しておきましょう。
ここからは、関連した注意点として、口座凍結について触れます。
故人の口座からお金を引き出す場合、銀行に口座名義人が亡くなったことを伝えた場合、銀行口座は「凍結」されてしまいます。銀行員も口座名義人死亡の事実を知ってしまったからには、当該口座がトラブルに巻き込まれないように、凍結せざるを得ないのです。
一度口座が凍結されてしまえば、基本的には遺産相続手続きを完了するまでは引き出しができなくなってしまいます。口座凍結には十分注意しましょう。
「故人口座の凍結により葬式費用を引き出せない」といった事態になった場合でも活用できる制度があります。それが「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(仮払い制度)です。
銀行窓口にて申請を行うことで、各相続人が単独で次の金額を引き出すことができます。
被相続人死亡時の預金残高(口座・明細ごと)×1/3×預金引き出し人の法定相続分
ただし、同一金融機関から引き出せる金額上限は150万円です。
親族から、自身が亡くなった後の口座管理を託された場合、口座からお金を引き出す時の注意点を理解しておきましょう。思わぬトラブルに巻き込まれることがないようにしたいですね。
国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
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