ヒロド歩美さん『プレミア12』インタビュー 前編(全2回)
現在開催中の野球の国際大会『プレミア12』。前回大会に続く連覇に期待がかかる侍ジャパンの取材を進めているフリーアナウンサーのヒロド歩美さんに、井端弘和監督や注目選手たちの取材のこぼれ話を語ってもらった。
【取材で感じた井端弘和監督の広い視点】
ヒロド歩美
連覇はもちろんのこと、2026年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、2028年のロサンゼルスオリンピックにつながる重要な大会になります。
私は、宮崎で行なわれた日本代表キャンプを取材させてもらったのですが、各球団のトップクラスの選手に加えて若い選手も多く集い、一気にフレッシュな空気になったのを感じました。はたしてどんなプレーやチームワークを見せてくれるのか、とても楽しみです。
各選手の取材をさせていただいているのですが、なかでも井端弘和監督のお話を聞く機会が多く、その考え方に深く感銘を受けています。とくにその広い視野。井端監督は日頃から、現役のプロ選手ばかりではなく、アンダー世代の選手たちもチェックされています。U-12やU-15の監督を務めていたのもありますが、その範囲は中学生にまで及びます。
今回選出された小園海斗選手(広島)や藤平尚真投手(楽天)、鈴木昭汰投手(ロッテ)など、高校時代からチェックしていた選手たちについて、井端監督は「高校時代はこうだったけど、今はこういう成長があるよね」っていう独自の視点を持っているんです。ある意味、長いスパンで若い選手を見て、それを代表監督として活用しているようで、非常に興味深いものを感じます。
私も高校野球を長年取材させてもらっているので、井端監督の選手に対する愛情の深いお話はとても楽しいです。
長年、選手を見てきたうえでの柔軟な選考。このタイミングで一番脂の乗っている選手、そのうえで伸びしろが十分にあるとおぼしき選手をピックアップしているように感じました。
たとえば藤平投手は今年からリリーフに転向してブレイクしましたが、いきなり代表に呼ばれて、本人も驚きがあったようです。成長や勢いを見逃されることなく、選出されたのではないかと。
全国各地に足を運んできた情報量、そしてプロ生活でのプロセスも細かくチェックしたうえでの井端監督による選考。WBCで優勝をした栗山英樹監督のあとを受け、ものすごいプレッシャーがかかるとは思うのですが、私個人の考えとしては、井端監督は選ばれるべくして選ばれた監督だと思いますし、次回2026年のWBCをしっかり見据えての今回の選考だと思っています。
【プロ入り後苦悩した「甲子園のスター」の奮闘】また、今回のチームは過去の縁でつながっている選手が多い印象です。たとえば五十幡亮汰選手(日本ハム)や鈴木昭投手、藤平尚真投手など、U-15で一緒だった選手が数年経て、再び同じチームで戦っていることも、いいチームワークにつながっているのかなと思いました。
藤平投手や早川投手、それと鈴木昭投手は、私が『熱闘甲子園』の担当を始めた初年度の甲子園球児なので、もちろん注目選手ですし、その選手たちが再び集い一緒のチームで戦うというのは感慨深いものがあります。
今回の代表選手では、小園選手と藤平投手、五十幡選手、鈴木昭投手、そして髙橋宏斗投手(中日)、清水達也投手(中日)、鈴木翔天投手(楽天)にインタビューさせていただきました。
とくに小園選手と藤平投手に共通しているなと感じたのは、おふたりとも高校時代は甲子園のスターとして活躍したあとプロに入り、しばらくは満足できる結果を残すことができず、苦しい時間を過ごしてきたことです。
そこを打破するために、練習だけではなく、生活態度や人間性の部分を見つめ直したそうなんです。はい上がってきた彼らからその話を聞いた時はぐっとくるものがありましたし、プロとしての姿勢を垣間見ることができました。
【今季開花した選手の努力と変化】今季、足のスペシャリストとして大活躍した五十幡選手は、第一印象はとても謙虚なのですが、こと自分のセールスポイントである"足"に関する話になると、「アグレッシブに攻めたい」と語気を強めました。
興味深いのは「当然攻め続けなければ、盗塁や走塁は成功しないけど、攻めるだけではダメということに気づいた」と話していたことです。駆け引きの重要性に気がつき、そこを実践できたからこそキャリアハイの数字(18盗塁)を残すことができたのだと思いますし、どんな選手であっても、必ず成長の前には壁があって、それを努力の末に越えた時、新しい世界が待っているんだなと、取材をしてあらためて感じました。
また鈴木昭選手は、ヨガをやり始めていい効果が出ているそうです。最初はうまくいかなかったようなのですが、毎日続けていくことで、自分のなかに発見があったとのこと。ヨガを続けることで「今日は少し調子が悪い」など、自分の肉体と会話できるようになったといいます。自分のコンディションを知るためにも、いい効果があることは取り入れる柔軟性を感じました。
毎日続けるストイックさがなければ得られない情報もあるでしょうし、鈴木昭選手からは、向上するために継続的な努力を怠らない姿勢に覚悟を感じました。今大会でどのような役割でマウンドに上がるのか楽しみですね。
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【プロフィール】
ヒロド歩美ひろど・あゆみ
1991年10月25日生まれ。兵庫県宝塚市出身。早稲田大学国際教養学部卒業後、2014年に朝日放送テレビ(ABCテレビ)入社。2016年に『熱闘甲子園』のキャスターに就任。その後は『サンデーLIVE!!』『芸能界常識チェック!〜トリニクって何の肉!?〜』『芸能人格付けチェック』などに出演。2023年からフリーとなり、現在まで『報道ステーション』のスポーツキャスターを務めている。
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