100年の思想で誕生したハイブリッドハイパーカー!ブガッティ・トゥールビヨン

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100年の思想で誕生したハイブリッドハイパーカー!ブガッティ・トゥールビヨン

11月17日(日) 12:11

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去る11月7日、東京・信濃町の明治記念館にて、ブガッティ・トゥールビヨンの新車発表会が開催された。シロンの後継車であり、VWグループを離れてから初めての”作品”のお披露目である。

【画像】ブガッティ・トゥールビヨンのメーター類の美しさは圧巻。ドアの開き方にも注目!(写真3点)

現在のブガッティは、電動ハイパーカーメーカーとして名声を博すリマックの親会社・リマック・グループが55%、ポルシェが45%を出資する「ブガッティ・リマック」の傘下にある。新体制への移行を受け、"シロンの後継車は電気自動車になるのではないか"という憶測が業界内を駆け巡っていた。

しかし、蓋を開けてみれば、新開発の8.3リッターV16自然吸気エンジンと3基の電気モーターを組み合わせたハイブリッド・ハイパーカーの誕生であった。注目すべきは、シロンより33mm低くなった車高による乗降性の課題を解決すべく採用された電動跳ね上げ式ドアだ。

V16エンジン単体で1,000PS、電気モーター(フロントeアクスルに2基、リアアクスルに1基)で800PSを発生。システムトータルでは1,800PSという圧倒的なパワーを実現している。4輪駆動とフルトルクベクタリングシステムにより、かつてない次元のトラクションと機動性を獲得したという。油冷式800Vバッテリーは、センタートンネルと乗員後方に搭載。25kWhの容量により、電気駆動のみで約60kmの航続を可能とした。寝静まった時間帯でのエンジン始動、住宅地での走行にも気を遣わなくて済む。

「自然吸気エンジンの搭載はマテ(リマック創業者、マテ・リマック)きっての願いでした」と語ったのはブガッティ・リマック社プレジデント、クリストフ・ピオション氏。まだブガッティ・リマック体制へ移行することが公になっていない頃から、マテが個人的にコスワースとエンジン供給について協議を重ねていたという。

電動ハイパーカーの第一人者であるマテ・リマック氏が、内燃式エンジンの将来的価値を見出していることは面白い。”100年後、たとえ性能は最先端でなくともコンクールデレガンスで評価される車であって欲しい”との思いがトゥールビヨンには込められているのだという。

「リアビューモニターは法規制によって装備していますが、普段はクリスタル削り出しのセンターコンソール上部に格納されています。それ以外は全てアナログのダイヤルは物理スイッチを採用しているのは、100年後を見据えての判断です」とピオション氏は続けた。デジタル時計の精度がいかに優れていても、機械式時計が持つ価値が色褪せない現状との類似性を示唆しているのかもしれない。それにしてもクリスタル削り出しのセンターコンソールとは…、斬新だ。

車名に冠された「トゥールビヨン」は、機械式時計における最も複雑な機構のひとつを指す言葉だ。フランス語で「渦巻き」を意味し、重力の影響を克服することで時計の精度を高めるための革新的な仕組みとして知られる。時計界における三大複雑機構の一角を占めるこの名を車名に採用したことからも、今後のブガッティの命名に「ミニッツリピーター」や「パーペチュアルカレンダー」が登場する可能性もあるのかもしれない…

「メーター類の製作に際し、スイスの某有名時計メーカーとかけあってみたのですが、実現には至りませんでした。そこで弊社のブランドパートナーである腕時計メーカー、Jacob & Co.(ジェイコブ)を通じてコンセプト・ウォッチ社との協業が実現し、話が進展しました」とピオション氏。スイスの時計職人の知識を結集して設計・製作された600個以上の部品から構成されるメーター類はただただ圧巻。なお、機械式腕時計のようなオーバーホールは不要とのこと。

ブガッティは、トゥールビヨンをデザインするにあたりタイプ35やタイプ57SCアトランティック、タイプ41からインスピレーションを得ていることを強調する。そこで気になってしまうのが、EB110への言及が控えめなことだ。

「そんなことはありません」とヘッドオブ・エクステリアデザインのジャン・シュミッド氏は即座に否定する。トゥールビヨンに部分的に用いられているウェッジシェイプ、キャブフォワードなプロポーション、そしてセンターラインからホイールまでの張り出し感はEB110のデザイン言語と共通しているのだという。

「白紙からのデザイン・設計で、キャリーオーバーしたパーツはありません。最も革新的だったのは、マテの発案による、エンジニアとデザイナーの完全な協働体制です」。特筆すべきは、特許を取得した新開発のリアディフューザーだ。バンパーとしての機能も併せ持つその構造により、空力特性を最大限に活かしたリアタイヤの露出が可能となった。車体中央部から11度という理想的な角度で後方へと流れるこのディフューザーのために、エンジンはやや前傾配置されている。リアウィングについても、ダウンフォースの生成よりもエアブレーキとしての機能を重視した設計となっている。

ブガッティのオフィシャルYouTubeチャンネルを覗いていたら、「A New Era: Determining the Future」という動画にて幹部向けデザイン会議と思しき場面(3分29秒)においてマクラーレンF1のイラストがチラッと映っている。この理由を尋ねてみるとヘッドオブ・コミュニケーションのニコル・オウガー氏が口を開いた。

「編集過程で除外することも可能でしたが、"イースターエッグ"として意図的に残しました」とヘッドオブ・コミュニケーションのニコル・オウガー氏は説明する。なお、2025年初頭からは各パーツにフォーカスした新シリーズの動画配信も予定されているという。

「マクラーレンF1を引き合いに出したのは、我々の立ち位置を経営陣に説明するためでした。公道走行可能なレーシングカーという明確な役割を持つマクラーレンF1とは異なる、我々の目指す方向性を示すための比較対象として用いました。ネット上の写真ではなくイラストを起こしたのは、マクラーレンF1への深い敬意の表れです」とシュミッド氏が補足した。

個人的に「ブガッティ」の話題になるとついつい確認したくなってしまうのが、10年前にブルームバーグがインタビューで引き出した”ブガッティの平均オーナー象”である。当時のCEO、ウォルフガング・デュルハイマー氏が明らかにしたのは、ブガッティ・オーナーの平均車両保有台数84台&ビジネスジェット3機&ヨット1艘という凡人には想像もつかない世界であった。

「あの頃も今も、さほど変化はありません。オーナーがサッカー好きならスタジアムを建設するどころか、プレミアリーグのチームを買収してしまうほどです」と笑いながら答えたのはヨーロッパ・リージョナルディレクターを務めるギー・クラクラン氏。さらに雑談をしてみると、これからは認定中古車事業にも力を入れていく、という。また、ヴェイロンは投入から20年が経過しており、ブガッティ・リマックとしてレストレーションの提供なども検討している様子だった。

トゥールビヨンは250台限定で車両本体価格380万ユーロ~、という価格で既に完売している。2026年からデリバリーを開始するようで、日本への割り当ては5台とのこと。


文:古賀貴司(自動車王国)写真:ブガッティ東京
Words: Takashi KOGA (carkingdom)Photography: BUGATTI TOKYO
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