前回からの続き。私はサヨコ。夫のケントと結婚して10年、小2の息子ヒカルと3人家族です。私たちはいつも年末に帰省し、義実家でお正月を迎えています。ただ義実家の和室に泊まることを考えると少し憂鬱になってしまう私。ご先祖さまの遺影がたくさん飾ってあり、布団に横になると嫌でもその不気味な光景が目に入ってしまうのです。けれどそんなこと絶対に言えません。私は今年も覚悟を決め、遠方にある義実家へ家族3人で向かったのでした。
義両親は私たち家族をいつものように温かく迎え入れてくれました。ヒカルはじいじやばあばに話を聞いてもらって嬉しそう。ケントもそれをニコニコしながら見ています。和室で寝ることを考えて、憂鬱な気持ちになっているのは私だけ……。
「僕はいつも心のなかでごあいさつしてるよ」あっけらかんと答えたヒカルに、私はハッとさせられました。ヒカルは遺影のことをただの写真じゃなくて、「大切な人」だと思っていたんだ……。自分とはまったく違う視点に気づかされたのです。
義実家のご先祖さまの遺影は、私にとって「よく知らない死者たちの写真」でした。だから「不気味」「怖い」と感じてしまっていたのです。しかしヒカルに聞いてみたら、感じ方が私とはまったく違っていたのです。「心のなかでごあいさつしてる」という純粋な言葉に、私はなんだか自分が恥ずかしくなってしまいました。
この人たちはまったくの他人ではなく、私にとっても縁のある人たち。きっと空からヒカルのことを温かく見守ってくれている……。そう考えたことで私の感じ方も変わったのです。それ以来、義実家の和室に泊まるときは「ヒカルを見守っていてください」と願いながら眠りにつくようになったのでした。
原案・編集部脚本・motte作画・ももいろななえ編集・井伊テレ子
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