浅倉秋成によるミステリー小説を実写化した映画『六人の嘘つきな大学生』が11月22日に全国公開される。赤楚衛二、佐野勇斗、山下美月、倉悠貴、西垣匠ら若手人気俳優陣が集結する本作で座長を務めたのは、連続テレビ小説『らんまん』や映画『ゴジラ‐1.0』など多くの作品でヒロインを演じてきた浜辺美波。同世代キャストの中で主演を務めることにプレッシャーを感じていたという浜辺に、共演者とのコミュニケーションや今後の展望について語ってもらった。
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■メインキャスト6人は「バランスが良かった」
原作は、就職活動を舞台に6人の登場人物の裏の顔が巧みに暴かれていく“密室サスペンス”要素と、そこで明らかになった6人の嘘と罪の真相が、クライマックスで次々と伏線回収される“青春ミステリ”要素を圧倒的なクオリティで掛け合わせ、人気を博している大ヒット小説。普段からミステリー小説が好きという浜辺も「展開が早く、思わずページをめくる手が進んで。自分好みのミステリーで、一気に読みました」と声を弾ませた。
今回の実写化ではそんな原作の展開や設定が変更された部分も。浜辺は「脚本を読んだ時はどうやって映画として作っていくのか、悩みや緊張感を感じて。原作が面白いからこそ、設定を変えることで新たな責任が生まれるなと思いました」と当時の思いを告白。また、クランクイン前は同世代キャストの中で一番年下ながらも座長を務めることに「同世代が集まると、メンバーによってはチームプレーができなかったり、空気感が変わったりすることもあるので不安でした」とプレッシャーを感じていたという。
そんな中、それらの不安を解消したのは赤楚、佐野、山下ら共に就活生を演じた共演者や佐藤祐市監督とのコミュニケーションだった。「みんな協調性がすごくて。グループ活動をしていた美月ちゃんや佐野さんが中心となってみんなをつないでくれたので、皆で何回か話したりしていくうちに不安はなくなりました。演技も撮影当日まで悩むこともありましたが、みんなで険しい顔になるぐらい話し合い、一つ一つ解決していきました」と撮影を回顧する。
現場では共演者に積極的にアクションをとるようにしたそうで、「自分から『こうしたらいいんじゃない?』と提案するというよりは、一番年下だったので『ここがどうしても腑に落ちないんだよなぁ』と口火だけ切って、あとはお兄さんたちの意見を借りました」と打ち明け、「主演として、みんなが意見を言いやすい環境にできたらとは思っていました。ただ私自身も不安だったので、自分ひとりでやるよりはみんなの力を借り、協力した方が上手くいくのかなと考えて。年齢が近いからこそ、同じ目線でいろいろ話し合えたのがよかったです」と笑顔を見せる。
唯一の女性共演者である山下には特に救われたそうで、「美月ちゃんはすごくサラっとした子で。同世代だからと意識することもなく、気さくに話してくれて心強かったです。本当に助かりました」と感慨深い様子。最年長の赤楚には、「みんなが悩んで進展しない時に『それでもやってみようか』など前向きな発言で、場を和やかにしてくれることが多くて。年長者の余裕を感じました」と尊敬の念を。佐野へは「リハーサルの段階から引っ張ってくれました。どういう風にいきたいか、意思表示をかっこつけずに全部見せてくれたので、みんなの芝居のテンションが定まって。リハーサルから本気でやるのは意外と難しいことなので嬉しかったです」と感謝の思いを明かす。
またメインキャスト6人のバランスがとても良かったそうで、「一人ひとりの性格を分かってキャスティングしてくださったのかと思うくらい、似た人はいないけど、お互いを尊重できるメンバーでした。個性があってもそれぞれ主張は強くなく、本当にバランスが良くて助かりました。采配に感謝です」とニッコリ。
■自身のアピールポイントは「協調性」
浜辺が今作で演じたのは、早稲田大学の学生で洞察力に優れた主人公・嶌衣織。浜辺いわく「慎重派で、自分の中でいろいろ精査してから発言する子。思いやりもあり、仲間意識が強い」という嶌だが、自身と似てる部分を聞いてみると「あんまりなくて」と苦笑いする。
「私は思いつきで発言してしまうタイプ。周りを見て自分の言葉を一旦胸に留められる嶌さんは大人だなと思いましたし、真似したいです。洞察力に関しても、私は何となくの勘は働くほうですが、嶌さんのそれとはラインが違って。嶌さんは理論的ですが、私は野生の勘なので『理論やソースは何?』と言われると説明しにくいことが多い。また直感型なので、振り返った時に『あってたのかな…』とか不安になることも。嶌さんみたいな頭の良さからくる理論めいた洞察力がほしいです(笑)」。
また「もし就職活動をしたら自身のアピールポイントは?」と問うと、「小さい頃から仕事をしてきたからこそ協調性があり、周りと協力していく大切さを知っているところかなと。あとは努力することで実りがあるという実体験をアピールします。自己分析をあまりしたことがないので、少しの時間でも大学に通って経験してみたいです」と答えが返ってきた。また嶌を演じたことで就職活動の難しさも痛感したそうで、「こんなに追い詰められるんだと驚きました」と語った。
劇中では6人の大学生がお互いの裏の顔を知ることで関係が崩れていく描写がある。もし身近な存在にネガティブな側面があったらどうするのか聞いてみると、「具合によりますが、私は仲がいい子だったら、笑いに変えられるぐらいの“いじり”として指摘したいです」との回答が。
「ずっと3人で仲のいい友達がいるのですが、その1人が少しだけ倫理観とモラルがないんです(笑)。それを本人に特に言うことなく関係を続けていた時に、私以外の2人がそこの違いでもめたことがあって。自分自身もモヤモヤが溜まるとケンカになりやすいなと思ったので、本人に『それは倫理観とモラルがないと思うよ』と伝えました。言われた本人は別の人にも同じ指摘をされたことがあったみたいで、『それだ』と納得してくれて。関係が終わってしまう可能性もあったけれどその後も仲良くしてくれているので、そこは彼女の性格に救われました。その人を変えたいわけではなくて、事実を伝えることでイライラする自分もいなくなる。より良い関係になるためにも、仲がいい人だったらネガティブなことも伝えられる関係でいたいです」。
■世間が抱く自身のイメージに「期待しないでほしい」
また人には様々な側面があり、一部の切り取られた情報や見え方でディスコミュニケーションが起きることも。人と接する際に特に意識していることを聞くと、「“この人はこういう人”と決めつけないようにしています」と明かす。
「決めつけてしまうと、自分が思ってもいなかった側面を見た時に裏切られたと感じたり、全部が信じられなくなったり、それ以外の面をなかなか受け入れられなくなってしまうことが多い気がしていて。仲が良ければ相手を知っていると思いがちだけれど、私がこうだと思っていることが相手によっては違うかもしれない。なので、相手は自分と違う人間ということを尊重した上で、決めつけずにコミュニケーションをとることを大事にしています。気の置けない関係だからこそ、順序を飛ばさないなど、ささいな気遣いも大切かなと。役作りにおいても型にはめないで考えるようにしています」。
ちなみに世間が抱く自身のイメージに対しても「決めつけてほしくない」という思いが。「私は仕事で自分らしい何かを出すことがあまりないので、しっかりしていて、ある程度普通に何でもできそうというイメージを持たれがちで。だけど休みの日は一日中寝ていますし、部屋は汚いわけではないけど隅々までキレイというわけでもないし、掃除もできるならしたくない。物事を後回しにする性格だし、ずぼらでだらしない。全部に対して『期待しないでほしい』と思ったりします」と本音を吐露。
また「これから人と関係を築くとき、『普通より何もできない人』と思ってもらうぐらいの方がいいかなと思っていて。ハードルを下げたいんです(笑)。友達が家に遊びに来るときは『本当に汚いから』と伝えることで、『意外ときれいじゃん』という方向にもっていきたい(笑)」といたずらな顏で明かしてくれた。
■25歳の展望は「後悔しないような努力をしたい」
2011年、10歳で第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞を受賞し芸能界入りした浜辺。順風満帆に見えるが、デビュー後はさまざまな作品のオーディションでの落選を経験してきた。
「当時はほぼ赤ん坊で、何も持っていなかったです。質問された時、自分の言葉を言語化できないというより、自分の意思が無いので何も答えようがなかった。そこはやっぱり今との大きな差。なのでオーディションは何百回受けてもほぼ受からなかったです。挫折とまではいかないけれど、悔しい思いもしましたし、逆に悔しいを通り越して何も感じなくなったり。落ちすぎてへこたれなくなりました(笑)」と当時を回顧する。
また周りの環境に感謝も。「小さい頃から目標があったわけでもなく、夢を見つけるのも遅く、環境に育てられた部分が大きくて。この仕事につかず、優しい父と母の元で変わらず育っていたら、就職活動に直面した時に悩むタイプだったと思います。環境の変化があっていろんな人たちと出会い育ててもらったおかげで、夢や目標を持つことができました」。
2025年で25歳になるが、展望を聞くと「未だに面倒くさいことがあった時に全部投げ出したくもなりますが、そんなこと言ってられないですよね。一つ一つしっかり積み上げて、振り返ったときに後悔しないような努力をしたいです。読書をしたり、映画を観たり、自分と向き合ったり。億劫になることもありますが、挑戦する心は常に持ち続けたい。またミステリーが好きなので、いつか東野圭吾さんや湊かなえさん、中村文則さんら憧れの小説原作の作品にも出たいです」。(取材・文:高山美穂写真:高野広美)
映画『六人の嘘つきな大学生』は、11月22日全国東宝系にて公開。
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