「今回のローマはカオス」続投のコニー・ニールセンが語る『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が描きだす滅びゆくローマとは

1作目から続投のコニー・ニールセン/撮影/Jumpei Yamada

「今回のローマはカオス」続投のコニー・ニールセンが語る『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が描きだす滅びゆくローマとは

11月17日(日) 18:30

第73回アカデミー賞で作品賞など5部門を制し、現在も多くのファンに愛されている名作『グラディエーター』(00)から24年。その続編『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が、ついに日本公開された。栄華を誇った時代のローマ帝国で、復讐を胸に抱いて剣闘士となった男のドラマが繰り広げられる本作。前作から十数年後という時代設定なので、登場するキャラクターはガラリと変わっているが、そんななかで前作に続いて登場している数少ないキャラクターの一人が王女ルッシラ。激動の運命に揺さぶられる、この女性に再び扮した演技派アクトレス、コニー・ニールセンにインタビューを行なった。
【写真を見る】1作目からなにが進化した?来日したコニー・ニールセンを直撃!

ルッシラは実在した人物だが、実際には前作で打倒された皇帝コモドゥス(ホアキン・フェニックス)よりも早くこの世を去っている。すなわち、前作と同様に、今作も史実に基づくフィクションになっている。今回のルッシラは前作以上に歴史の目撃者としての役割を担っている。「前作に続いて出演できたことは、リドリー・スコットからの贈り物だと考えています。脚本を読み、ルッシラの描かれ方がすばらしいと思いました。彼女の置かれた立場や、その変化がしっかりと描かれていて、うれしくなったのです」とニールセンは語る。

■「今回のローマはカオス」歴史を学ぶことから役作りをスタート
ルッシラが共和制が崩壊したローマに残り続けた理由とは?


フィクションとはいえ、時代の大きな流れは正確に捉える必要がある。時代背景である西暦210年ごろのローマ帝国は暴君の統治により、世の中が乱れていた。その時代を学ぶことから、ニールセンは役作りを始めたという。「英国の作家トム・ホランドが書いた『ルビコン:共和制ローマ崩壊への物語』をまず読みました。共和制はすでに崩壊していましたが、ルッシラは例え身の危険があったとしても、ローマに残ることを選びます。彼女の父親で、前作で抹殺された賢帝マルクス・アウレリウスが抱いていた理想を追いたかったのでしょう。しかし、この時代のローマでは政治に参加できる人が限られていました。腐敗はそこから始まります」

確かに、本作で描かれるローマは前作とは空気感が異なる。「1作目で描かれたローマは、いわば黄金時代でした。それがわずか20年で崩れていく。今回のローマはカオスです。ルッシラはそのすべてを目にしているんです」とニールセンは言う。「かつて輝いていたローマは、もうそこにはありません。戦艦を横流しして私腹を肥やすエリートがいて、混乱があり、暴動がある。映像をよく見るとわかりますが、街にはホームレスもいます。煙が上がっている不穏な風景もあります。そのようなディテールにきっちりと目配せをしているのが、リドリー・スコット監督のすばらしさですね」この空気感の違いは、1作目とじっくり見比べてみたいポイントだ。

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前作からスケールアップした点について尋ねると、ニールセンは「テクノロジー」と即答。「前作は、とにかく撮影期間が長かった。アリーナのシーンでは撮影後にCGIと合成するためのショットも多く、そのためにカメラ位置や照明などを調整する必要があったからです。また、CGIの作業にしても時間がかかったし、リドリー自身もあらゆるテクノロジーを駆使して奮闘していました」前作の撮影期間は、長期といえる4か月。「でも、今回は俳優組合のストの期間を除けば、52日で撮影が終わりました。技術の進歩により、アリーナで行われている闘技も、それに対する人々のリアクションもそのままカメラに収めることが可能になりました。CGIの進歩もそうです。そういう意味では、リドリーが思い描いているビジョンに、テクノロジーが追いついたと感じました」

■ニールセンから見たポールは“役に入り込む俳優”

共演者についても訊いた。まずは主人公ルシアスに扮した注目株ポール・メスカル。「ポールは役に入り込む俳優ですね。演技は彼にとって神聖なもの。こういうタイプの役者と一緒に仕事をするのは大好きです。現場で感じたのは、彼が発するエネルギーの波動に私も乗って、その空間全体が彼のエネルギーに包まれるような、そんな空気感です。彼には彼の役者としてのこだわりがあり、もちろん私にもあります。そこにリドリーが点火すると…花火が打ちあがるような、そんな感覚でした」ルッシラとルシアスは長い間生き別れていた実の母子という間柄だが、久しぶりに再会した時、ルシアスは母を冷たく突き放す。緊迫感のある共演シーンなので、ぜひ注目してほしい。

メスカルの放つ英雄の気迫を劇場で感じて

もう一人、策士のマクリヌスを演じる名優デンゼル・ワシントンとの共演についても尋ねた。「デンゼルもエネルギーにあふれた俳優です。私の撮影の初日に撮った2番目のシーンが、ルッシラの屋敷で彼と対峙する場面だったのですが、彼が入ってきただけで大きなカーテンが揺れるんです。私もそのオーラにちょっと圧倒されて『お待ちしておりました」というような気分になりました(笑)」さすがアカデミー賞俳優といったところか!?

ルッシラとマクリヌスの知力による攻防も見どころの一つ

「おもしろいのはルッシラもマクリヌスも、計算で生きている政治家であることです。ルッシラは亡父の遺志を継いで、混乱のなかで計算高く生きてきました。マクリヌスも計算高いキャラクターですが、その動機は権力を手に入れるという一心にあります。彼にとって政治はゲームで、それだけが生きがいなのです。その対比が興味深いですね。私たちが対峙するシーンは、お互いに腹の内を探り、駆け引きを繰り広げる。演じていて、とてもエキサイティングなシーンでした」こちらも見応えのあるシーンとなっており、目が離せないだろう。

■ハリウッドとヨーロッパの映画の違いとは!?

デンマーク出身のニールセンはヨーロッパで俳優としてのキャリアを歩みだし、近年はハリウッドでも活動している。そこでハリウッドとヨーロッパの映画の違いについて尋ねてみた。「まったく違うものです。ハリウッド映画は、あらゆるごく普通の観客にも届きます。『ワンダーウーマン』のような作品はジャカルタからアルゼンチン、オーストラリアまで、世界中の多くの観客の目に触れたし、私自身、世界中とつながりを持てたように感じています。一方、ヨーロッパのアート系映画には、私にとって追求すべき真実があるから、という動機をもって臨んでいます。監督のアーティスティックなビジョンに自分の身をゆだねて、彼らが伝えたいものを伝えるための手伝いをさせてもらうような、そんな感覚ですね」ちなみにニールセンは4か国語を話すことができるという。

「ワンダーウーマン」シリーズなどでハリウッドでも大活躍中のニールセン

『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』でルッシラは前作以上に過酷な道を辿ることになる。そのドラマは、主人公ルシアス以上に厳しいものと言えるかもしれない。ニールセンは、その過程を実にエモーショナルに体現している。王女の運命を、しかと見届けてほしい。

ローマで耐え忍び続けたルッシラの運命は!?

取材・文/相馬学
MOVIE WALKER PRESS

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