そのときの情勢や規則に振り回されるイメージがあるパチンコ業界。パチンコメーカー、パチンコホール、ユーザーと立場は違えど、日々さまざまなことに対応しながら遊技業界を回しているが、特に影響を受けるのはパチンコホールではないだろうか。
そんな現代のパチンコホール経営者は、どういった想いでいるのだろうか。今回は今流行りの、タレントやパチンコライターなどによる「ホール来店」や、経営にともなう実務など、業界歴20年のホール経営者A氏に話を伺った。
“来店バブル”に対する本音
現在、パチンコ業界では
「来店バブル」と呼ばれる現象が起きている。2024年2月、演者が来店するホール名と日程を告知することができるようになるなど、パチンコ店における広告規制が緩和された。それにより、イベント告知用の集客要素として、ホール側は来店演者を多数起用している。
まずは、こういった現状に対する意見を伺った。
——パチンコ業界で今流行りの「ライター来店」について、ホール経営者としてのご意見をお聞かせください。
A氏:とてもいいことだと思います。ホール経営する身としては広告宣伝は緩いほうがいいですね。昔は開店中の設定公開やパチンコの朝イチ一箱まるまるサービスなど、今では考えられないことがいろいろとできたじゃないですか。ここまでとは言いませんが、欲を言えばもう少しアピールできたらなと思っています。
——全国の各ホールがさまざまな来店企画をやっていますが、どんなライターや演者さんを呼びたいですか?
A氏:男女は関係なく、パチンコやパチスロが好きでファンが多い人が良いですね。知名度の高いタレントさんを呼ぶよりも、パチンコ・パチスロに親和性が高いライターさんやユーチューバーのほうが良いです。なかなかそれを見極めるのは難しいですけどね。ちなみに僕はそもそも派手な女性が好みでないのと「若くて可愛い、でもパチは詳しくない女性」みたいな女性が嫌いなので絶対呼びません(笑)。
来店演者のギャラ事情
——ちなみに、来店演者のギャラの相場はどのくらいなのでしょうか。あまり有名ではないパチンコ女子は、実践費用込みで5万円だったと聞いたことあるのですが……。
A氏:無名の演者さんはそのくらいの金額だと思います。安い人で5万円、パチンコ業界では知名度のある中堅どころで8万〜15万円、それよりもさらに上の売れっ子は20万〜30万円といったところですね。業界でトップクラスの知名度を誇る人なら「1回3桁万円」ということもあるでしょう。来店バブルとなったことで、ここ数ヶ月で一気に相場が上がったように感じています。
——どの店がどの演者を呼んでいるかなど、ライバル店の情報の取得はどちらでされていらっしゃいますか。
A氏:SNSはやっていませんが、社長同士のグループラインがあり、日々さまざまな情報が送られてくるので、こちらで十分ですね。毎日追いきれないくらいの情報が届きますよ(笑)。
パチンコ業界に対する思い入れ
A氏の会社では、パチンコ店以外にも貸しビルやホテルなど、さまざまな業種の経営を行っているという。そのなかでも、やはりパチンコ店経営に対する思い入れは強いようだ。
——さまざまな業種の経営をしているなかで、ホール経営の面白さ、やりがいとはなんでしょうか。
A氏:初めて本格的な労働をしたのがパチンコ業界ということもありますが、この業界への「愛着」が一番の原動力ですかね。いちユーザーでもありますし、この約20年で人脈もかなり広がりました。またうちの社員は離職率がとても低いんです。そんなありがたい環境の中で、まわりに感謝し運営を楽しみながらも利益がマイナスにならない経営を常に心がけています。
あまり知られていない「都遊協」の活動内容
——パチンコ経営者の組合があると伺ったことがあるのですが、具体的な活動について教えていただいてもよろしいですか。
A氏:私は「東京都遊技業協同組合」略して「都遊協」に所属しています。ユーザーの方のなかには「ファン感謝デー」を運営していることで知っている方もいるかもしれませんね。そのなかで月に一度1~2時間ほど、勉強会や業界状況のすり合わせや意見交換をしています。東日本大震災の時は、みんなで被災地に3~4回ボランティアに行きました。組合では街の清掃活動や福祉活動など、さまざまなことを展開しているので、業界のイメージ向上のためにも、もっといろんな方に活動を知ってもらいたいですね。
——では最後に、今の遊技業界を踏まえ、これからもホール経営を続けていきたいでしょうか。
A氏:そこはもちろん!お客様の支持がある限り続けていきたいです。あと、いまホールで働く人の労働環境がとても良くなっていることを広く知っていただきたいですね。個人的には飲食業界よりよっぽどホワイトだと思います(笑)。分煙も進み健康的な環境に向上しましたし、パーソナル遊技やスマート系機械のおかげで、体力的にキツい作業も減っています。業務自体が店員の体に不可の少ないものになり、福利厚生もとてもしっかりしているので、もっとホールで働きたいと思ってくれる人が増えてくれればいいな思います。
***
遊技業界は、多くの変化に対応しながら進化を続けている。A氏のようなホール経営者の情熱や前向きな姿勢が、業界の未来を切り開く力となるだろう。これからもユーザーに楽しさを届けながら、社会とのつながりを強化し、新たな価値を創出していくことに期待したい。
取材・文/バリンコン
編集/セールス森田
【バリンコン】
パチンコ攻略誌の編集を9年間務めた後フリーの編集者へ転身。多数のメディアやメーカー等業界内に広い人脈を持つ。日々取材をこなしながら業界内の情報を収集中
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