ORCALANDが下北沢のヒーローになった日 主催イベント『ナワバリロックフェスティバル 2024』【オフィシャルレポート】

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ORCALANDが下北沢のヒーローになった日 主催イベント『ナワバリロックフェスティバル 2024』【オフィシャルレポート】

11月15日(金) 20:25

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11月10日、ORCALANDが主催する『ナワバリロックフェスティバル 2024』が、東京・下北沢ADRIFT & 空き地にて開催された。

「誰ひとり置いていかないロックバンド」を標榜し、ポジティブな音と言葉を発信する4人組・ORCALAND。結成の地でもある東京・下北沢への愛着は深く、2023年には12カ月連続の自主企画イベント『ジントリ』をいずれも下北沢のライブハウスにて開催したことでも話題を集めた。

そんな『ジントリ』を発展させる形で開催された今回のフェスでは、小田急線東北沢駅〜世田谷代田駅の地下化に伴い2020年から開発が進んでいる新しい街・下北線路街にふたつのステージを用意。バンドアクトを中心に据えた下北沢ADRIFTの『鯱城STAGE』と、野外でのアコースティックライブを展開する下北沢空き地の『鯱町STAGE』に、ORCALANDと縁のあるアーティストたちが被りなしのタイムテーブルのもと集結した。

ORCALAND Photo:橋本若奈

ライブ以外にも、大塚祥輝(vo&g)が装飾した『ナワバリメモリアルスペース』の展開や、こーてぃん(ds)とAYANE COFFEE & CRAFTがコラボしたコーヒーショップ『今日コーヒー飲みすぎてこーひぃんになるわ。』、村田京哉(g)が招いた『KASSU CURRY』の出店、おとやん(b)による『おとやんのボロリメイクオルカTシャツ』の販売など、メンバーの個性が発揮された催しが盛りだくさん。バンドが放つピースフルなバイブスを、五感でたっぷり味わえる一日となった。

ORCALAND Photo:橋本若奈

イベントの幕開けとなったのは、この日の主役であるORCALANDによる初のアコースティック形態でのライブだ。あいにくの小雨が芝生を濡らす鯱町STAGEに登場した大塚は、「雲ひとつない青空ですね。天気にも恵まれて、うれしい限りです!」とうそぶき笑いを誘う。しかし、一曲目「ラブソングになんかしてやんないわ」を歌い出すや否や実際に雨足が弱まってしまうのだから、大塚は"持っている"バンドマンなのかもしれない。「『アコースティックだからこんな曲をやるだろう』っていうのを裏切りたくて」と届けられた「ダンシングゾンビの決意」ではハンドクラップが起こり、特別な今日という日がとうとう始まったという実感が胸に広がっていく。大塚のソフトな歌声はもちろん、こーてぃんによるコーラスが心地良く滑らかに響くのも、この編成ならではだ。最後に代表曲「テレキャスター・ヒーロー」をベースソロをフィーチャーしたスペシャルバージョンで披露し、最高のスタートを切ってくれた。

ORCALAND Photo:橋本若奈

鯱城STAGEに足を踏み入れると、フロアには紅白の提灯が装飾され、お祭りムードが醸し出されている。トップバッターを務めたのは、ORCALANDのメンバーも学生時代にコピーしていたというMOSHIMO。「釣った魚にエサやれ」の一瀬貴之(g)によるメタリックなリフでいきなりオーディエンスを引き込みながら、岩淵紗貴(vo&g)は曲中で「昨日深夜までレコーディングしてたから、むくみとクマがひどくて……」と飾らない姿を覗かせる。岩淵のボーカルギターとピンボーカルのスタイルを自在に切り替える縦横無尽のステージング、そして代表曲「命短し恋せよ乙女」での「命短し恋せよナワバリロック!」のコール&レスポンスが、見事に会場を掌握していた。

MOSHIMO Photo:かい

二番手としてADRIFTのステージに立ったのはanewhite。メロディアスに絡み合うツインギターと情景を膨らませる同期音を組み込んだ緻密なアンサンブルが魅力の4人組バンドだ。ブレない芯を感じさせながら強さも淡さも描く佐藤佑樹(g&vo)の歌唱表現力が、リスナーの想像力を借りながら、会場の空間を無限に拡張させていく。

Anewhite Photo:橋本若奈

続く#KTちゃんは、この日唯一のHIPHOPアクト。しかし、猛者が集うMCバトル現場をサバイブしてきた彼女には、アウェイの環境もなんのその。「はじめましての人がほとんどだと思うけど、今この瞬間はここが私のナワバリ。みんなで楽しんでいきましょう!」とアジテーションする。予定されていたセットリストを終えた後も持ち時間が余っていたということで、「BaNe BaNe」をフロアに降りてもう一度披露。オーディエンス全員とハイタッチを交わし(「ハイタッチしてない人は挙手!」と確認していたので、本当に全員と、である)、ハートを鷲掴みにした。

#KTちゃん Photo:かい

「恐竜博士は恐竜見たことないでしょ」からライブをスタートさせた超能力戦士ドリアンは、ユーモアたっぷりのパフォーマンスで会場を笑顔に包み込む。この日のためだけの新曲として披露されたのは、題して「ORCALAND」。なんで「“オルカランド”じゃなくて“オルカラント”やねん!」と理不尽な怒りを爆発させつつ、フロアを3ブロックに分け「O」「L」「D」の人文字ポーズで一体感を高めた。

超能力戦士ドリアン Photo:橋本若奈

そして、東京・吉祥寺代表としてナワバリに乗り込んだWiennersは初っ端からアクセル全開。「なんか色が付いてるものを掲げてもらっていい?」という玉屋2060%(vo&g)のMCから色とりどりのラバーバンドやタオルが咲き乱れると、バンドも極彩色のエレクトロ・ロックで返答する。1分弱のショートチューン「Cult Pop Suicide」を最高速で駆け抜けると、玉屋はマイクを咥え咆哮。ボルテージは最高潮のまま、トリのORCALANDへとバトンを繋いだ。

Wienners Photo:かい

一方の鯱町STAGEも、サブステージと呼ぶのが野暮なほどに充実したアクトが連発。ホットコーヒーを片手に心地良く身体を揺らす来場者や、同敷地内のフリーマーケットに訪れた通行人が足を止める姿も散見された。ORCALANDの村田、こーてぃんと高校時代からの音楽仲間だというCANACO(Faulieu.)は、切実な恋心を繊細な歌声に乗せて下北沢の空に解き放ち、マイクを通さない生の歌声も交えて親密な空間を作り上げていく。

CANACO Photo:かい

平部雅洋(reGretGirl)は巧みなトークで場を和ませつつ、曰く「必殺技みたいな曲」こと「ホワイトアウト」で大塚をステージに招き、フロントマン同士によるロングトーン対決で見事勝利。先輩としての威厳を見せつけた。

平部雅洋(reGretGirl) Photo:かい

5分前に3000円で購入したというジャケットを羽織り登場した仲川慎之介(時速36km)は、丸みを帯びたフォーキーな質感のままささくれ立つ歌声で、リスナーの心を搔きむしる。

仲川慎之介(時速36km) Photo:橋本若奈

日没後に登場した松山晃太(BYEE the ROUND / GRAND FAMILY ORCHESTRA)は、ルーパーや変則チューニングを駆使し、バンド顔負けの圧巻のステージを繰り広げた。

松山晃太 Photo:かい

さて、とうとうORCALANDの登場である。SEをバックに登場したメンバー4人は、互いに目を合わせ、笑みを浮かべながら一音目を鳴らした。口火を切ったのは「まだまだ飲み足りない!」。彼らの登場を待ち侘びたファンが、その思いを爆発させるように「まだ!まだ!」の声を響かせる。軽快なロックチューン「関係NIGHT FEVER」では、村田とおとやんによる必殺のソロ回しも炸裂。祝祭空間の中でも浮き足立たない盤石の演奏力が、熱量をキープし続ける。今日二度目の「ダンシングゾンビの決意」では、大塚が「スポーツの秋、誰が一番高く飛べるか競走しようぜ!」と煽り、一斉にバウンス。続く「リフレイン」は勇猛果敢に挑戦を続けることを宣言する一曲だが、この日はフロアの合唱がORCALANDの背中を押すように響いていたのがドラマチックだった。

ORCALAND 大塚祥輝(vo&g) Photo:橋本若奈

MCでは、大塚が「ロックバンドをやりたいっていうだけじゃなくて、ワクワクすることを、あなたとずっとやっていたい。俺は今日ずっとワクワクしてたけど、あなたはどうでしたか?」と問いかけ、惜しみない拍手が送られる。

ORCALAND 村田京哉(g) Photo:橋本若奈

「答えはシンプル、あなたがワクワクする方へ。もしワクワクしないなら、俺たちがヒーローになってあなたを連れていくから!」という語りに導かれたのは、もちろん「テレキャスター・ヒーロー」。助けを求める「テレキャスター!」のシャウトを浴び、ORCALANDは下北沢のヒーローになったのだった。本編ラストには「バニサマ」を投下。「夏フェスでやるために書いた曲」だというサマーチューンが、他でもない彼ら自身が作り上げた『ナワバリロックフェスティバル』を真夏のピークへと引き戻す。全員が頭上でタオルを振り回し、クライマックスまで楽しみ尽くした。

ORCALAND おとやん(b) Photo:橋本若奈

アンコールを待ち望むオーディエンスは、手拍子や掛け声の代わりに、「やってらんねえ」のフレーズ「優勝すんだお前と」を歌い繋ぐ。再びステージに現れた彼らは、「俺たちがこの“ナワバリ”で一番歌った曲」だという「やってらんねえ」をプレイ。大塚は冒頭からマイクをフロアに預け、「お前ら声がちっせえ」の歌詞を「お前ら声がでっけえ」に変えて歌う。互いが互いを求め合い信じ合うことで、演者と観客の境界線が薄れていく。メモリアルな一日を作り上げた四人が、この日の景色を目に焼き付けるように隅まで会場を見渡しながら演奏する姿が印象的だった。

ORCALAND こーてぃん(ds) Photo:橋本若奈

この日、2025年2月に東名阪のツーマンツアー『BOY MEETS GIRL』を開催することも発表したORCALAND。ツアーファイナルでは再び下北沢に帰ってくる。数多のギターロックバンドが生まれ、交わり、巣立っていったこの地に張られたそのテリトリーは、どこまで遠く、そしてどこまで深く広がっていくのか。彼らと『ナワバリロックフェスティバル』が描くストーリーは、きっとまだ序章に過ぎない。

ORCALAND Photo:橋本若奈

Text:サイトウマサヒロPhoto:橋本若奈、かい

<公演情報>
『ORCALAND presents ナワバリロックフェスティバル 2024』

2024年11月10日 東京・下北沢ADRIFT / 空き地
出演:ORCALAND / anewhite / Wienners / #KTちゃん / 超能力戦士ドリアン / MOSHIMO / Canaco(Faulieu.) / 仲川慎之介(時速36km) / 平部雅洋(reGretGirl) / 松山晃太(BYEE the ROUND / GRAND FAMILY ORCHESTRA)

<ツアー情報>
ORCALAND presents. 2MAN tour "BOY MEETS GIRL"

2025年2月21日(金) 大阪・心斎橋BRONZE
2025年2月22日(土) 愛知・新栄RAD SEVEN
2025年2月27日(木) 東京・下北沢SHELTER

チケット料金:3,000円

※ゲストは後日発表
※入場時ドリンク代が必要

★11月17日(日) 23:59まで先行受付実施中
受付URL:
https://w.pia.jp/t/orcaland-boymeetsgirl/

ORCALAND公式サイト:
https://orcaland.jp/

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