キャラメルとポップコーンと季節感/連載:小林私「私事ですが、」

キャラメルとポップコーンと季節感/連載:小林私「私事ですが、」/※本人制作画像

キャラメルとポップコーンと季節感/連載:小林私「私事ですが、」

11月16日(土) 20:00

キャラメルとポップコーンと季節感/連載:小林私「私事ですが、」
【画像】小林私書き下ろしアートギャラリー「萌え、回帰、アキバにて。」

美大在学中から音楽活動をスタートしたシンガーソングライター・小林私が、彼自身の日常やアート・本のことから短編小説など、さまざまな「私事」をつづります。今回は、季節感について綴ったエッセイです。

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なんだか久しぶりに文章を書いている気がする。
と、書くたびに思い、どんなことを書いていたっけと自分の文章を見返している。
Web連載はバックナンバーを見返しやすくて便利だ。

連載が終わればいずれ消えたり、サイト自体がなくなったり、インターネットそのものが滅びれば読めなくなることもあるかもしれないが、少なくとも書いている間は大丈夫であろう。
まあ、この連載だけでなく今まで書いた原稿はほぼ全部PCに残っているので見返せるのだが...

ダヴィンチWebで連載が始まったことでフォルダ名は「ダ原稿」、WEBザテレビジョン以降のファイル名は「ザ〇〇」とした。QuickJapanのマンガをテーマにした連載(現在終了)は「QJ原稿」、それ以外は「別件原稿」となっている。

ここら辺はかなりテキトーに振り分けており、単発で寄稿したものもあれば、ワンマンライブで流す音ネタの台本、ラジオのアンケートもここに放り込んでいる。なのに「雑記」というフォルダもあり、恐らくその日の気分で振り分けている。

昔の寄稿を読もうとしたら、当時は書式を定めておらず、開けないか全て文字化けしていた。
紙媒体限定の原稿だけが読めない。まったく、意味がない。

ところで気付いたのだが、俺の原稿には季節感がないかもしれない。自分の連載を読み返し、逆に人のを読んでみて、俺のコラムには「入学シーズンということで、」とか「新生活を送り始める皆さんは」とか、そういうのが全くない。強いて探すと「内見出来ず外で待たされて寒かった」と、あとは初詣の話くらいだった。

寝起きのちょっとした肌寒さ、サンマを焼いて食べる、コンビニのアイスのラインナップが氷菓からラクトアイスばかりになる、そんなことは毎日意識のどこかにあるはずなのに。

今日が何月で何日で何曜日で干支はどれで今は何時で外の天気は?
まるっきり気にしちゃいない。
“アーチスト”であるとか関係なく気にした方が良いのに、俺の頭のなかにいる沢山の俺が「全然気にしなくていい」「分かる」「その通り」と口々に言う。エコーチェンバーってセルフで起きてたらダメだろう、なんとなく。

そっと部屋の時計を見ると、今日はハロウィンか。
ハロウィンて。

特筆して言いたいことも思い出も何にもないだろ。バレンタインとかクリスマスとか、それこそ入学式とかならまだエピソードありそうなのに。漫然と生きていると七夕くらい思い出がないイベントだ。

大体、外に出るやつが悪い。友人に「外出てないやつのなかで一番鬱じゃない」とまで言わしめた俺からすればそういうことになる。最近人と会えてなくて病んじゃって、しばらく運動してないから体が変...。

笑止、甘えるなと言いたい。
運動なんぞさせて体を甘やかしてきたからそんな事態に見舞われるのだ。

俺の体はどうだ。
小学校では中休み、昼休みは図書室、放課後は図書館、マラソンカードのサボりをクラスメイトに怒られたのが納得いかず、下駄箱まで赴いただけでグラウンドを7周以上走ったことにしていた。
中学はなりきりチャット、高校はニコニコ動画、実家のクローゼットにベッドを半分押し込めることで部屋を広くして狭すぎる空間で寝ていた。

今となってはジーパンを履いたままソファで体の半分をはみ出させながら寝ている。(デイビッド・ライスみたいで格好良い)。酷使した体は有酸素運動に甘えることなくシャッキリと生きているのだ!鬱になるわけないだろ!25年間これで生きてんだから!

...まあ、一つは食べ物が悪いんだと思う。スーパーに行って、そりゃ旬の野菜を見るとか、なんとなく海産物の移り変わりを気にするとか、なくはないけど、買うか?買わないよな。もやし、キャベツ、香薫、マルちゃん焼きそば、結局この自炊四天王で終わらせてしまう。

最近ハマっているのはキャラメル、それとドンキで買った1.4kgのポップコーン原料豆。

ポップコーンは鍋で作っているのだが、鍋にぴったりの蓋がないのでいつも鍋の蓋から爆裂した豆がコンロを縦横無尽に飛び回って油まみれにしている。助けてほしい。

そもそもキャラメルとポップコーンってこんな美味かった?
キャラメルポップコーンじゃないです、キャラメルとポップコーン。
こんな多感なティーンに向けた小説のタイトルみたいなもん食ってたら季節とか感じるわけない。

あー、オリキャラなりチャだけを頼りに生きていた頃の方がよっぽど季節とか感じてた。

「今日はクリスマス、か...はは、予定なんてあるわけねーよ。(窓の外にしんしんと降る雪を眺めながら独り言つ。力なく笑うその横顔は誰かを待っているようにも見えた)」

掲示板の皆がこんな風に書き込んでくれるから、それを見れば自然と会話が始まる。

「あら、こんな日に一人ぼっちなんて生憎様ね。雪でおセンチになって、誰かを待ってるつもり?(背後から声をかける。)」←相手のロールを拾いまくるのってあるあるよな?(笑)

「うわっ!...なんだ夜兎(ヤト)か、びっくりさせんなよ。っつーか、お前も一人じゃねーのかよ?(ひどく驚いたという表情で窓のサッシに手をかける。結露が指先を濡らしていることも厭わずに目の前の女を糾弾した)」

こんなんが一番楽しい。
こんなんしてるから脳内で色んな人間が名前を持って分裂するというのに。

えー、最近、家にナメクジが出ました。
外では雨が降ったってことかと。
キセツカンキセツカン、キセツカンカンカカンカン。(かっき~ん!)




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