映画でよく見かける『○人の○○』というタイトル。古くからの定番であり、ここ最近も『十一人の賊軍』(公開中)や『六人の嘘つきな大学生』(11月22日公開)が立て続けに封切られるなど、再び数が増えている印象だ。そこで今回は、タイトルに人数が入る『○人の○○』ムービーがどれくらいあるのか?気になったので調べてみた。
【写真を見る】タイトルに人数が入る『○人の○○』映画、調べてみた!(『たった一人の戦い』)
■1人
当然と言うべきか意外と言うべきか、『0人の〇〇』という作品は見当たらなかったのでまずは1人から。ストレートに『○人の○○』という形のものだと近年の邦画『一人の息子』(18)や『1人のダンス』(19)といった作品くらいしか見当たらず、意外にも数が少なかった。
ただし、1人の前に“たった”、“もう”などの枕詞が入っている作品は多く、セシル・スコット・フォレスターの小説を映画化した戦争アクション『たった一人の戦い』(53)やウディ・アレン監督の『私の中のもうひとりの私』(88)といったタイトルが並んでいた。
■2人
2人になるとグッと作品数が多くなり、古くは1929年のソ連のサイレント映画『二人のブルディ』やマーガレット・オブライエンと美空ひばりが共演した『二人の瞳』(52)、最近ではジョナサン・プライスとアンソニー・ホプキンスが共演した『2人のローマ教皇』(19)など、打って変わって作品がズラリ。
なかでも代表作と言えるのが、ソフィア・ローレンとジャン=ポール・ベルモンドが共演した1960年の『ふたりの女』。第二次世界大戦中のイタリアを舞台にしたドラマで第34回アカデミー賞主演女優賞など多くの賞を受賞した。
■3人
『3人の〇〇』も多く、フランク・シナトラ主演の『三人の狙撃者』(54)、「クリスマス・キャロル」を基にした『3人のゴースト』(88)やドラッグ・クイーンを描いたロードムービー『3人のエンジェル』(95)といった個性豊かな作品が並んでいる。
ジョン・フォードの『三人の名付親』(48)やジョセフ・L・マンキーウィッツによるオスカー2部門受賞の『三人の妻への手紙』(49)、ロバート・アルトマンの『三人の女』(77)など巨匠が手掛けた作品も多かった。
■4人
4人では、第1回アカデミー賞主演女優賞を受賞で知られるジャネット・ゲイナーが出演した『四人の悪魔』(28)をはじめ、ジョン・フォード監督が戦争に翻弄される親子を描いた『四人の息子』(28)といった作品が。なかでも『四人の姉妹』(38)は第11回アカデミー賞で5部門にノミネートされるなど、高く評価された。
■5人
第6回ヴェネチア国際映画祭でイタリア民衆文化大臣賞に輝き、海外における日本映画の受賞作第1号となった田坂具隆監督の『五人の斥候兵』(38)や、剣の達人役で丹波哲郎が出演したイタリア映画『五人の軍隊』(69)などが並ぶ5人。なかでも有名なのは『テキサスの五人の仲間』(65)だろう。テキサスの金持ちたちが繰り広げるポーカーの様子をヘンリー・フォンダ主演で描いており、ラストの切れ味が気持ちいい1作だ。
■6人
フランス産ミステリー『六人の最後の者』(41)、ジョン・ペイン主演の西部劇『六人の脱獄囚』(51)、ストッカード・チャニングの演技が高く評価された『私に近い6人の他人』(95)といったタイトルが並んでいた『6人の〇〇』映画。
11月22日(金)からは『六人の嘘つきな大学生』も公開を控えている。浅倉秋成による同名ミステリー小説を浜辺美波主演で映画化した本作は、就職活動を舞台に、ある告発文によって共に課題に挑んでいた6人の大学生の裏の顔が暴かれていくというもの。時を超えて真実が明かされるなど、伏線回収が詰まった本格ミステリーだけに、“6人映画”の代表作となれるだろうか?
■7人
さて『○人の○○』と聞いて多くの人がまず思い浮かべるであろう映画が、野武士から村を守る男たちの戦いを描いた黒澤明監督、三船敏郎主演の『七人の侍』(54)だ。のちに『荒野の七人』(60)としてリメイクもされるこの名作の影響からか『七人の〇〇』という作品は数多く、フランク・シナトラ主演の『七人の愚連隊』(63)や『七人の野獣』(67)、『七人の特命隊』(68)に『七人のおたく cult seven』(92)、『七人のマッハ!!!!!!!』(04)など枚挙に暇がない。
11月22日からは『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督による『アングリースクワッド公務員と7人の詐欺師』も公開。真面目な税務署員が脱税王から金を巻き上げるために詐欺師をはじめとする個性豊かな仲間とチームを組むという内容で、はみ出し者たちの共闘やだまし合いという『○人の○○』ムービーのお約束を楽しむことができるはずだ。
■8人
8人がタイトルに入った作品は少なかったが、代表作として挙げたいのが、ロベール・トマ作の戯曲を映画化したフランソワ・オゾン監督によるミュージカル仕立てのミステリー『8人の女たち』(02)。1950年代フランスを舞台に、クリスマスを祝うため雪に閉ざされた豪邸に家族が集まるなか殺人事件が起き…という内容で、ダニエル・ダリュー、カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユペールといったフランスを代表する新旧8人の大女優たちの共演が話題となった。
■9人
9人もほとんど見当たらず、死刑囚の生態と心理を鋭く衝いた小林旭主演の『九人の死刑囚』(57)や「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ出版秘話に基づいたミステリー『9人の翻訳家囚われたベストセラー』(19)くらいしか見つけることができなかった。
■10人
キリのいい10という数だが、こちらも意外に少なめ。浮気男の殺害を共謀した妻と9人の愛人の奇妙な友情を描いた市川崑監督の『黒い十人の女』(61)や、韓国映画で当時の観客動員記録を塗り替えた『10人の泥棒たち』(12)といった作品が並んでいた。
■11人
華麗な連携プレーによるカジノ襲撃が楽しめるシナトラ一家総出演のケイパームービーの名作『オーシャンと十一人の仲間』(60)や、鶴田浩二や高倉健らによる東映オールスター映画『暗黒街の顔役十一人のギャング』(63)、徳川将軍の弟をねらう侍たちを描いた『十一人の侍』(67)など11人は有名作が多数。
11月1日からは白石和彌監督最新作『十一人の賊軍』も公開。戊辰戦争を舞台に、11人の犯罪者たちが「勝てば無罪放免」という一筋の希望にかけ、砦の死守という危険なミッションに挑むという『○人の○○』ムービーの定番であり、山田孝之、仲野太賀ら個性豊かなキャストたちが賊軍として名を連ねる。
■12人
12人で忘れてはいけないのが、陪審員制度を題材にしたシドニー・ルメット監督の名作『十二人の怒れる男』(57)。また、この作品をモチーフに“もしも日本に陪審員制度があったら”を描いた三谷幸喜の戯曲を映画化した『12人の優しい日本人』(91)、ロシアの名匠ニキータ・ミハルコフ監督が同作をリメイクした『12人の怒れる男』(07)といった関連作も。
近年の作品では、堤幸彦監督の『十二人の死にたい子どもたち』(18)もショッキングなタイトルが印象的だった。
■13人
13人ムービーは数こそ少ないが、東映の集団抗争時代劇として1963年に製作され『十三人の刺客』(63)がパッと思い浮かぶ。中山道の宿場町を舞台に、明石50万石の藩主をねらう刺客たちの戦いを描いた本作は、2010年にも三池崇史監督によって同タイトルでリメイクもされ、こちらも高く評価された。
そのほかには、タイの洞窟で起きた遭難事故の救出劇を映画化したロン・ハワード監督×ヴィゴ・モーテンセン主演という豪華な座組の『13人の命』(22)という作品も。
■14人
14人は、エディ・マーフィ演じる主人公が子どもたちに振り回される『チャーリーと14人のキッズ』(03)や、現代建築化を取り上げた日本のドキュメンタリー『sur/FACE 14人の現代建築家たち』(01)など作品は少なめ。
■16人
『15人の〇〇』ムービーは見当たらず、飛んで16人では『生きてこそ』(93)の題材として知られる、1972年のウルグアイ空軍機571便遭難事故を生き残った16人の生存者にフォーカスしたドキュメンタリー『人肉で生き残った16人の若者/アンデスの聖餐』(75)がギリギリ(?)該当した。
■17人
17人からは東映集団抗争時代劇の1作となる里見浩太朗主演の『十七人の忍者』(63)、ストーリー的にはつながりはないがその続編とされる松方弘樹主演の『十七人の忍者 大血戦』(66)を発見。
■18人
18人はデニス・クエイド主演の『ヘレンとフランクと18人の子供たち』と、『チャーリーと14人のキッズ』の続編となる『チャーリーと18人のキッズ in ブートキャンプ』(07)というファミリーコメディが滑り込み。19人と20人は該当する作品は見当たらなかった。
■40人
ここから先はさすがにキリがなく、また作品数もガクッと減るので有名作や大きな数字の作品をピックアップ。
イスラム圏に伝わる物語を映画化した『アリババと四十人の盗賊』(44)は父を殺された王子が盗賊の首領となり宿敵に復讐するというもの。アニメなど繰り返し映像化されている有名な物語だ。
■47人
『四十七人の刺客』(94)は市川崑監督による赤穂浪士の討ち入りを描いた時代劇。高倉健をはじめ、中井貴一、宮沢りえ、石坂浩二、森繁久弥…など47人という大風呂敷に恥じないオールスターキャストが名を連ねている。
■100人
なにやら気になる邦題のイタリアンコメディ『100人のスカート作戦』(63)など、大台となる100人とついた作品はいくつもあり、『100人の子供たちが列車を待っている』(88)はチリの教会で映画を観たことがなかった子どもたちのために開かれた映画教室の様子を写したドキュメンタリー。
また、総勢100人にもおよぶ俳優が出演した『バイプレイヤーズもしも100人の名脇役が映画を作ったら』(21)も記憶に新しい。
■669人
さらに、第二次世界大戦開戦前夜のチェコスロヴァキアでナチスによる迫害の危機にさらされるユダヤ人の子どもを安全な国へ疎開させた“イギリスのシンドラー”にカメラを向けた『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』(11)といったドキュメンタリーも存在した。
■2000人
1000人の大台を突破した作品からは、南北戦争で北軍に全滅させられた2000人の村人が、その100年後に亡霊となり北部からの旅行者を襲うというハーシェル・ゴードン・ルイス監督のスプラッターホラー『2000人の狂人』(64)をピックアップ。また、そのリメイク作は『2001人の狂宴』(05)。1人だけカウントアップする謙虚な姿勢がなんともかわいらしい。
■3000人
日本の作品では全校生徒3000人の約半数がつっぱりという不良の巣窟を舞台に、1970年代のつっぱりたちの青春模様を斎藤工主演で描いた『不良少年 3,000人の総番(アタマ)』という作品もあった。
■1万3000人
1960年代に起きた“吉展ちゃん事件”を題材としたドキュメントドラマ『一万三千人の容疑者』(66)など、1万人超えの作品は意外にも多く作られている。
■4万人
有馬頼義の同名小説を映画化した『四万人の目撃者』(60)は、4万人を収容する野球場でプレー中の4番バッターが突如死ぬという殺人事件を描いた日本映画。また、7万人規模のアメフトの試合中に起きた怪死を扱うアメリカ映画『七万人の目撃者』(32)というタイトルも似てれば中身も似ている作品もあった。
■50万人
さらに戦時中にフィリピンの山奥に隠された山下将軍の財宝を持ち帰ろうと奮闘する人たちを描いた、三船敏郎にとって最初で最後の映画監督作『五十万人の遺産』(63)も。
■100万人
100万人とつくものはいくつかあり、岩下志麻が観光バスガイドの女性に扮した『100万人の娘たち』(63)、第二次世界大戦中のニューヨーク交響楽団が行う慰問演奏会を描く『百万人の音楽』(44)、昭和30年代に福島県郡山市で実際に行われた音楽で暴力を追放した市民の活動を基にした『百万人の大合唱』(72)といった作品が並んだ。
■2000万人
さらに『二千万人の恋人』(34)というミュージカルコメディ映画は、英題も『Twenty Million Sweethearts』とそのまま。のちに『夢はあなたに(原題:My Dream Is Yours)』(49)としてリメイクされている。
■5億人
そしてずばり今回調べたなかで最も数が大きかったのが、副題となるが『パッドマン 5億人の女性を救った男』(18)。本作は現代インドで安価な生理用品の開発に人生を捧げた男の実話を映画化したもので、インドの人口の多さを感じさせる邦題となっている。
『〇人の〇〇』映画と言いながら枕詞あり、副題ありとなったが、今回紹介したほかにもどんな作品があるか?ぜひ思いだしてみてほしい。
文/サンクレイオ翼
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