時間は死を運んでくる『何か“オモシロいコト”ないの?』/テレビお久しぶり#125
長らくテレビを見ていなかったライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は『あのちゃんの電電電波』(テレ東)をチョイス。
■睡眠は人の意識を奪っている『あのちゃんの電電電波』/テレビお久しぶり#126
あのちゃんの自室(を模したスタジオ)にゲストを招き、その素顔に迫るトークバラエティ、『あのちゃんの電電電波』。猫のササキとして霜降り明星・粗品が声のみの出演をし、軽やかなかけあいを見せる。11月12日放送回のゲストは渋谷すばる。不眠症を患っており、思うように寝付くことができないという彼の悩みを解決しようと、あのちゃんが様々な”あのセラピー”を施す。
淡い光の浸透する青い部屋であのちゃんがギターを弾いている絵面が象徴的な、深夜っぽいゆるさとオシャレさを持ち合わせた個性的な番組であった。BGMやSEはかなり抑えられていて、ASMR的とも言えそう(なのだが、睡眠がテーマである回の為、そのように演出されているだけかもしれない。次回予告ではあのちゃんが秦基博と元気にキャッチボールをしていた)。粗品の声もめちゃめちゃ音質が良かった。『ON AIR』のサインランプがインテリアとして飾られていることも相まってか、番組を見つつも、ラジオを楽しんでいる感覚に近かった。
また、ゆるさを演出する要素として、ゆったりとした編集のリズムが挙げられるだろう。ちょっと口ごもって言葉を探したり、話し終わりのフェードアウトの部分まで見せるので、よりラジオっぽさというか、生っぽさを感じるのだ。展開をスムーズに見せつつ、コミュニケーションは丁寧に見せる、というような。端的に良い番組だと思う。
さて……実は私も、睡眠について難を抱えている。不眠症とか、そこまで深刻なものではないのだけれども、私は、寝落ちでしか寝られないのだ。目を閉じて眠りにつくのを待つことができない。理由は簡単で、死を恐れているからだ。眠りに落ちる瞬間が死と似ている。目を閉じ、暗闇で意識を失うのを待つというのはハッキリ恐ろしいことだ。それとは別に、考え事をしたくない、という理由も大きい。暗闇で目を閉じて、考えることといったら何だろう。風車と小屋、窓からは一面のラベンダー、そんな風景を思い浮かべて眠れるのなら、私は喜んで寝床に着こう。
しかし、私はあらゆるものを恐れる人間だ。恐れるものは枚挙にいとまがない。すべてが怖くて、すべてが不安だ。私のすべてのアクティビティは脳内の不安を上書きするためにあり、そのアクティビティを自ら終える宣言に他ならない入眠という行為は、少なくとも風車やラベンダーで飾られるものではない。恐怖や不安に、私を襲うチャンスを与えることになる。だから、寝落ちでしか眠れないのだ。できるだけ不安を遠ざけ、脳や肉体をそれ以外のもので満たしたいのだ。
ただ、睡眠には、意識を奪ってくれるというメリットも存在する。意識がなければ不安など感じない。むしろそこだけ抜き取れば睡眠は素晴らしいものだと言えるだろう(時間まで奪われてしまうという事実に触れるのはいったんやめておこう)が、そこに至るまでが茨の道。「意識を奪ってほしくば、暗闇でじっと待て」。これは難しいささやきだ。
■文/城戸
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