【写真】約25年前の役所広司&大竹しのぶ「刑事たちの夏」より
「作品は僕の履歴書であり、遺書のようなもの」。これは、社会派ドラマの名手として、半世紀以上にわたり数多くのTVドラマの演出を手掛け、映画監督としても活躍した鶴橋康夫氏の言葉だ。独特の映像美と面白い視点(カメラワーク)で人間が秘めた欲望や狂気を描き、ギャラクシー賞をはじめ数多くの賞を獲得したことから「映像の魔術師」「賞男」の異名をとった鶴橋氏。2023年10月に亡くなった鶴橋氏の一周忌に合わせ、キャリアの黄金期である1980年代から1990年代に鶴橋氏が演出を手掛けた傑作ドラマ4作品(1989年「風の棲む家」、1992年「雀色時」、1999年「刑事たちの夏」、1990年「愛の世界暴かれたプライバシー」)が、日本映画専門チャンネルにてお茶の間に届けられる。また、役所広司や大竹しのぶらそうそうたる面々が鶴橋氏について語る特別番組「演出家・鶴橋康夫-映像の魔術師と呼ばれた男-」(11月20日、11月28日、12月9日)も放送される。
■鶴橋康夫氏の“履歴書と推薦文”となる特別インタビュー番組
日本映画専門チャンネルオリジナルの撮り下ろし特別インタビュー番組「演出家・鶴橋康夫-映像の魔術師と呼ばれた男-」は、まさに鶴橋氏の“履歴書と推薦文”のような興味深い内容になっている。鶴橋ファンはもちろん、鶴橋康夫という人物を知らない方が観てもきっと楽しめるはず。なぜなら、彼はとても奇天烈で、とても美しいからだ。単純に鶴橋康夫という人物に興味を持ち、彼の作品に魅了されることだろう。
同特別番組は、鶴橋作品に出演した俳優たちの証言から演出家・鶴橋康夫の姿を記録していく。まず、この鶴橋組に携わった俳優たちがとても豪華である。阿部寛、大竹しのぶ、奥田瑛二、佐藤浩市、妻夫木聡、寺島しのぶ、豊川悦司、役所広司…まさに日本を代表する俳優陣。彼らが皆、鶴橋氏の演出家としての凄さ、監督としての奇抜さ、人としての魅力をたっぷりと語る。
鶴橋氏との日々を振り返りながら、その思い出に浸り、時に笑い、涙を流し、大切に一つひとつの言葉を紡いでいく鶴橋組の面々。鶴橋氏がなぜ業界で愛され、人々を虜にする映像を作り続けられたのか…その理由が一つのパズル画のように完成されていく。さまざまな人たちの言葉がカケラとなり、まるで一ピースずつはめられていくかのように繋がっていくのだ。そして、鶴橋康夫という人物の輪郭となる。
またインタビュー映像の間に差し込まれている、鶴橋氏が手掛けた映像作品のシーン集も実に良い。数作品のわずか数秒のシーンがいくつか流れるのだが、たったそれだけでも彼が「映像の魔術師」と呼ばれることに全力で頷ける。たった1秒の映像でも強烈に私たちの脳内に色濃く刻み込んでくるからだ。それだけインパクトが強くて、斬新で、美しい映像なのである。キラキラ輝いているがどこか揺らいで謎めいているアンビバレントな映像。
鶴橋康夫という人物に実際に会って、頭の中を覗いてみたい。そんなことを思わせる映像と人柄。なぜその発想が生まれ、どうしてこの画を撮れるのか、そしてこんなにも俳優・スタッフ陣から愛される豪快でフラットで柔軟な人柄はどのように形成されていったのか…どんどん彼が気になり、彼に惹きつけられていく。まさに完璧な“履歴書と推薦文”。そんな特別番組を通して、ぜひあなたも「映像の魔術師」に触れてほしい。
構成・文=戸塚安友奈
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