11月15日(金) 10:59
キャディというと、何を思い浮かべますか?最近はセルフプレーが主流のため「キャディ付きプレー」を経験したことのない人もいるでしょう。また、トーナメントではプロゴルファーのプレーを支える「プロキャディ」の姿があります。その立ち居振る舞いに憧れる人もいるのではないでしょうか。この記事では、キャディとはどんな職業で、どんなことをする人なのか、キャディ付きプレーでの注意点などについて紹介していきます。
むむ、綺麗な女性のミニスカートが際どくてハラハラ……!ゴルフマナーで恥をかかないための注意点は?
私たちは当たり前のように「キャディ」という言葉を使っていますが、ここではまず、その言葉の定義や起源、キャディの種類について解説していきます。
日本ゴルフ協会(JGA)の『ゴルフ規則』(2023年1月施行)によると、「プレーヤーはキャディーを1人使用することが認められており、キャディーにプレーヤーのクラブの運搬、アドバイスやその他の援助をラウンド中に行わせることができる」としています(規則10.3規則の目的)。
ゴルフは基本的に自分のプレーのための戦略・戦術の決定は、自分自身で行わなければならないので、ラウンド中にプレーヤーに対してアドバイスや援助する資格のある人のことを「キャディ」と定義することができるでしょう。
なお、『ゴルフ規則』の規則10.3bでは「キャディのできること」を以下のように定義しています。
• プレーヤーのクラブや他の用具を持って行く、運ぶ、扱うこと(乗用カートの運転や手引きカートを引くことを含む)。
• プレーヤーの球を捜索すること(規則7.1)。
• ストロークを行う前に情報、アドバイス、その他の援助を与えること(規則10.2aと規則10.2b)。
• バンカーをならす、またはコースを保護するために他の行動をとること(規則8.2例外、規則8.3例外、規則12.2b(2)(3))。
• パッティンググリーンで砂やバラバラの土を取り除くことや、損傷を修理すること(規則13.1c)。
• 旗竿を取り除くこと、付き添うこと(規則13.2b)。
• プレーヤーが規則に基づいて救済を受けると結論づける(行動や発言などから)ことが合理的であるときにプレーヤーの球を拾い上げる(規則14.1b)。
• パッティンググリーンのプレーヤーの球の箇所をマークして、その球を拾い上げて、リプレースすること(規則14.1b例外と規則14.2b)。
• プレーヤーの球をふくこと(規則14.1c)。
• ルースインペディメントや動かせる障害物を取り除くこと(規則15.1と規則15.2)。
キャディ(caddie、caddy)という言葉の由来は年下や末っ子、貴族の子どもという意味のフランス語「cadet(カデ)」で、それが18世紀のスコットランドにおいてクラブを運ぶための家来=キャディとして広まったとされています。
なお、英語の「cadet」には、士官幹部候補生、見習い、研修生などの意味があります。
ひとことでキャディと言っても、キャディには「ハウスキャディ」と「プロキャディ」の2種類があります。
ハウスキャディとは、キャディ請負業者から派遣、またはゴルフ場の従業員としてキャディ業務を行う、いわゆる “キャディさん”です。ハウスキャディはゴルフ場でキャディ付きプレーを予約した組に付いて、ゴルファーのプレーをサポートします。
ゴルフ場でキャディ付きプレーをする際に発生するのが、キャディフィです。
キャディフィは4バッグの場合、1人あたり3,000~4,000円が相場とされてきましたが、近年は値上げの傾向にあります。茨城県の某ゴルフ場のキャディフィは、これまで約4,000円だったところ2024年10月から約4,700円に、広島県の某ゴルフ場は約3,300円だったのを同年3月から約3,900円に値上げしています。
その背景にはゴルフ業界における深刻なキャディ不足があります。昨今はセルフプレーが主流ですし、キャディの業務は夏は暑く冬は寒く、コースをかけ回ってボールを探し、1日4~5時間にわたって同じゴルファーと時を過ごすなど、決して楽とは言えません。そのためゴルフ場はハウスキャディの雇用を継続、または新たな人材確保・採用に努めるために値上げに踏み切っているようです。
ご時世と言えばそれまでですが、ハウスキャディの中には惚れ惚れするような八面六臂の働きを見せてくれたり、そのゴルフ場でトーナメントが開催される際は、プロに付いて勝利に貢献したりするようなスゴ腕の持ち主もいます。
プロキャディとは、プロゴルファーに直接雇われたキャディで、トーナメントでプロのプレーを支えます。
プロキャディはキャディバッグを担いでプロに付いて回り、リラックスを促すために談笑したり、攻め方についてアドバイスをしたり、ミスショットのあとは気分転換になる言葉をかけたりしてプロをサポートします。
プロの一挙手一投足に集中し、緊張を強いられる場面でタイミング良く的確な助言をしなければならないうえ、メンタル面や体調面も支える必要があるため、知識はもとより精神力も欠かせません。まさにプロと一心同体で戦う“同志”なので、プロの活躍は極上の喜びとなります。トーナメントの最終日、プロがウィニングパットを決めた瞬間にプロキャディと抱き合って喜ぶシーンを見たことがあると思いますが、何とも感動的です。
尾崎将司と佐野木計至、丸山茂樹や宮里優作と杉澤伸章、松山英樹と進藤大典、谷口徹や上田桃子、イ・ボミと清水重憲など、プロとのコンビで名を馳せたプロキャディは少なくありません。トーナメントではプロキャディの仕事ぶりを見るのも楽しみ、という人もいるのではないでしょうか。
プロキャディは専属とフリーの2つの場合があります。報酬の相場は1試合10万~13万円と言われていますが、プロが予選を通過したり優勝したりした場合は、そこにボーナスが付きます。
プロから指名されたり、スポンサーが付いたりするような売れっ子プロキャディになると年収はグッと上がりますが、そうでない場合、安定した収入という面では厳しい現実もあるそうです。
プロキャディの役割が正しく認知され、職業として確立されるよう、2019年11月に一般社団法人 「日本プロキャディー協会」が設立されました。同協会は未来を担うプロキャディとゴルフ界の発展のために、さまざまな活動を行っています。プロキャディの活躍の場が、さらに増えていくことでしょう。
一般のゴルファーと身近に接点があるのは、ハウスキャディです。キャディ付きプレーの未体験者やご無沙汰というゴルファーの中は、「キャディさんって何をやってくれるんだっけ?」と不安に思う人もいるでしょう。
そこで、キャディさんにお任せできることについて紹介します。前出の「キャディーの定義」に記されていないこともあるので、ぜひ参考にしてください。
ハウスキャディ、通称“キャディさん”はそのゴルフ場を熟知しています。レイアウトはもちろん高低差、グリーンの芝目、傾斜、さらに風向きなども知り尽くしているため、どこでどのクラブを持ってどう打てばいいのか、的確なアドバイスをしてくれます。
特に初心者は、クラブ選びに自信が持てないもの。でもキャディさんがいれば最適なクラブを選んで提案し、手渡してくれるので、気持ちに余裕ができます。
クラブの置き忘れがないか本数をチェックし、ヘッドに泥などがついていればそれもきれいにしてくれるため、安心してプレーに集中できる点も頼もしい限りです。
進行管理は、キャディさんの重要な業務。セルフプレーの場合、ついアツくなって時間の感覚を忘れてしまうことがありますが、キャディさんがいれば前の組との間隔を見てそれとなく、しかしちゃんとプレーファストを促してくれます。そのため、後続の組に「スロープレーだ」と後ろ指を刺されることなく、リズムよく回ることが可能です。
また、隣のホールに危険なボールが飛び出したら、すぐさま「ファー!」と叫んで警告します。突然の雷雨が来た際は、プレーを速やかに中断してクラブハウスや避難小屋に誘導してくれます。
バンカーをならしたり、ディボットを直したり、目土をしたりするなど、コースの“お手当て”もキャディさんが得意とするところ。
とはいえ、キャディさんに任せっぱなしはNGです。ゴルファーであればキャディさんのそうした振る舞いを見習い、セルフプレーでも同じようにできるよう習得することが大切です。特に初心者にとってキャディさんは、ゴルファーとしてのマナーや心得を教えてくれる良き師となります。ビギナーこそキャディ付きプレーを選ぶといいでしょう。
ボールが林の中やOBなどに飛んで行った際、ゴルファーの人情としてはついつい見つかるまで探したくなるもの。しかし、ゴルフ規則の「規則18.2a(1)球が紛失となる場合」では、プレーヤーやキャディがボールを探し始めて3分以内に見つけることができなければ紛失となることが定められています。
セルフプレーだと時間を測っていなかったり、同伴プレーヤーが遠慮して3分以上経過したことを指摘しなかったりするケースがありますが、キャディさんがいれば、「3分以上経ってしまったので、諦めましょう」と潔く判断してくれるはずです。
そもそもキャディさんはボールの行方をよく見ているので、ボールを見つけるのはお手の物。際どい時は、暫定球を打つべきか否かの判断もしてくれます。
プレーヤーにとっては絶体絶命とも思える難しい局面でも、キャディさんから「ここは◯番アイアンで、あの木に向かって軽めに打ちましょう」などと冷静なアドバイスを受ければ、自信を持って1打に臨むことができるもの。
そのゴルフコースを知り尽くしたキャディさんは、攻め方も頭に入っています。だからこそ、攻略法も信頼できるわけです。プロゴルファーでさえ、キャディさんのコースマネジメントのほうが正解だった、ということもあるようです。
また、キャディさんはローカルルールについても把握しているので、初めてのゴルフ場でも安心してコースに挑むことができます。
キャディは、「ラウンド中にプレーヤーを助ける人」。楽しくいいスコアで回るためにも、キャディさんにお願いできることは大いに助けてもらいましょう。そこで、キャディさんと上手に付き合うためのコツを紹介します。
ベテランキャディさんは日々さまざまなゴルファーと接しているので、ウェアやクラブセッティングをチェックすれば、だいたいどんなタイプのゴルファーか想像がつくといいます。しかも、その正解率も高いとか。
とはいえ、もちろんすべてを把握できるわけではないので、キャディさんへの希望があればスタート前に伝えるようにしましょう。
「今日は楽しみたいので、見ていてくれているだけでいいですよ」とか「ベストスコア更新したいので、ばっちりサポートお願いします」などと伝えれば、キャディさんは希望に合わせて動いてくれるでしょう。
キャディさんはその日のラウンドの、大切な仲間の一人。「キャディさん」ではなく、「◯◯さん」と名前で呼ぶといいでしょう。常連ゴルファーの中には、「△△ちゃん」と下の名前で呼ぶ人もいます。
キャディさんはそのゴルフコースのことを最も熟知している人ですから、ロールプレイングゲームでいえば「賢者」のような存在です。その知識と経験を駆使して陰ながら皆のプレーを支え、困った時には手を差し伸べてくれます。
自分のほうがゴルフ歴が長いからといって変に出しゃばったり、初心者なのに知ったかぶりをしたりしても、キャディさんにはすべてお見通しです。
そうしたキャディさんの働きに対して、「キャディフィを払っているんだから当たり前だ」などと粗暴に振る舞うゴルファーもいるようですが、これは絶対にダメ。「言ってたラインと全然違う!お前、使えねぇな」などと言おうものなら、カスハラ(カスタマーハラスメント)に当たる違法行為として罰則を受けることもあります。当然のことながら、セクハラなど他のハラスメントもご法度です。
ゴルフ場側も、ハラスメントに対しては毅然とした態度で対応することが求められていますから、「つい、イライラしていたから」などという言い訳は通用しません。ゴルファーとしてというよりも、社会人として、人間としてダメだと思われます。
キャディさんに対しては、他の同伴プレーヤーと同じように礼儀正しく振る舞い、ラウンドという旅の良き仲間になってもらいましょう。
チップ文化のない日本ですが、気持ちのよい仕事をしてくださるキャディさんにはチップを渡したくなる、というゴルファーも多いようです。
ただし、チップはあくまでも受けたサービスに対するお礼ですから、「必ず渡さなくてはいけない」というものではありません。しかし、キャディさんのプロとしての仕事に期待、または評価したいのであれば、チップという形で気持ちを表すのもいいでしょう。
何を渡せばいいのかというと、それこそ気持ちでOKです。コレ、という決まりはありません。茶店で売っているドリンクやお菓子、洗剤、売店で購入した野菜などの食品、現金なら4人で1,000~2,000円が相場で、同額のQUOカードなどでもいいでしょう。
渡すタイミングはスタート前、茶店で小休止の時、ラウンド後が多いようです。食品の場合はコースに持っていかなくてすむよう、控室に戻れる場所だとありがたいと思います。
予め同伴プレーヤーとキャディさんへのチップはどうするのか、誰が渡すのかなどを決めておくとスマートです。
キャディさんにしてみれば、チップはもらえないより、もらえたほうが当然うれしいもの。気にかけてもらっているという安心感、満足してもらえたという安堵は、モチベーションの維持にもつながります。
ゴルフのキャディはまさに縁の下の力持ち。ゴルフには欠かせない存在です。この機会にキャディという仕事に目を向け、キャディ付きプレーを楽しんだり、推しのプロキャディを見つけたりしてみてはいかがでしょうか。
ゴルファーとして、キャディから学ぶことはたくさんあります。自らのゴルフライフにも、必ずやいい結果をもたらしてくれるはずです。