「国際試合の初戦、タフな試合になるのは当然自分も経験してわかっています」
井端弘和監督が開幕前にそう話していたように、侍ジャパンが連覇を目指す第3回プレミア12の初戦、オーストラリア戦は決してラクな展開ではなかった。
侍ジャパンは4回までに5点を先行、終わってみれば9対3で勝利したが、6回表に2本の本塁打を浴びて2点差に迫られる局面もあった。
独特な緊張感が漂う国際大会初戦。侍ジャパンが地力を見せて勝つことができたのは、初回の電光石火の攻撃が大きかった。
初回、四球を選び出塁した先頭打者の桑原将志photo by Sankei Visual
【初回、上位3人で先制点】1番・桑原将志(DeNA)、2番・小園海斗(広島)、3番・辰己涼介(楽天)。上位に並べた3人で先制点をもぎ取ったのだ。
「僕は1球目を振れたのでよかったなと。逆に、あれがあったからフォアボールまでつながったかなと思います」
そう振り返ったのは桑原だ。
1回表、23歳で代表初選出の井上温大(巨人)がピンチをしのいで帰ってくると、桑原は初球から振りにいくと決めていた。相手先発のルイス・ソープが投じた1球目を含め、3度のファウルを打ちながらボールを4球選んで出塁した。
無死一塁。是が非でも先制点がほしい場面で、小園は強攻する。
「(バントは)一応、頭にありました。(強攻やエンドランなど)全部準備できていて、(サインはとくになく)そのままだったので普通に打ちにいきました」
一、三塁をつくろうとした小園の打球はセカンドの横を抜け、センター前安打で狙いどおりの形に。3番の辰己は1ボール1ストライクからの3球目、逆方向に大きなファウルを放つと、追い込まれた直後も同じような意識でレフトフライを放って桑原をホームに生還させた。
「独特の国際大会の雰囲気で、先制点が取れてよかったです」
今回の侍ジャパンで10月末の宮崎合宿から注目されたのは、「誰が4番を打つのか?」ということだった。
一方、11月9、10日のチェコとの強化試合で井端監督は2戦続けて桑原、小園、辰己を1、2、3番に並べている。つまり、4番の前の3人には明確に期待する役割があったわけだ。
「1、2、3番に限らず、この打線はどんどん初球から打っていける選手が多いなかで、1、2、3番は特に(投手の)右左関係なく、オーストラリアのサイドやアンダースローがいるなかでも気にせず打っていけるバッターなので。それが初回、いい形で出たなと思います。追い込まれてもなんとか粘れるバッターというところで、いい働きをしてくれたと思います」
侍ジャパンはオーストラリア戦で合計13安打を放ったなか、ポイントゲッターになったのは"4番候補"のふたりだった。初戦で4番に抜擢された森下翔太(阪神)は4打数3安打で2打点、6番に回った牧秀悟(DeNA)は2点差に迫られた7回に貴重なセンター前タイムリーを放った。
【嫌な流れを断ち切った藤平尚真の好投】対して、打線全体の"潤滑油"になったのが、1番の桑原と2番の小園だ。
日本シリーズでMVPに輝いた桑原は5打席でヒットこそ出なかったものの、2つの四球と2つの犠打を記録している。
「(2つの犠打も)しっかりやって、うしろのバッターにつなぐ役割もしっかりやっていければと思います。そつのない野球をしっかりしないと、やっぱりなかなか勝ちに結びつかないと思うので。打線としてしっかり戦っていけるように、自分がその位置にいれればいいかなと思います」
かたや、小園は2回に一死満塁から一塁ゴロで2点目をもたらせると、6回にはセンター前安打を放って状態のよさを示した。走っても2個の盗塁を決めている。
「(自分の役割は)うしろにつなぐだけかなと思います。大きいホームランが打てるわけではないので。うしろにいいバッターも多いので、どんどんつないでいけたらなと思います」
侍ジャパンの打順にはさまざまなパターンが考えられるなか、「2番」に据えている井端監督の期待をどう受け止めているのだろうか。
「やっぱり2番って、なかなか難しい打順だと思います。いろんなことをしないといけないと思うので。そういう難しさもありますけど、上位を打たせてもらっているのは期待してもらっていることだと思うので、応えられるように頑張りたいです」
攻撃では桑原と小園が効果的な働きを見せた一方、投手陣で光ったのが7回に3番手で投入された藤平尚真(楽天)だった。
初先発で5回まで無失点に抑えた井上が6回、先頭打者ウルリッヒ・ボヤルスキーに本塁打を打たれ、1番・トラビス・バザーナに鋭いライト前安打を許して降板。2番手の横山陸人(ロッテ)は4番リクソン・ウィングローブに痛烈な本塁打をセンターに浴びた。
5点を先行してペースを握ったなか、2本塁打を許して2点差に。嫌な流れで迎えた7回、3番手で送り出されたのが藤平だった。
「自分には流れを変えるピッチングを求められていると思います。止めることもそうだし、持ってくることも中継ぎの仕事だと思うので、そこは意識してマウンドに上がりました」
藤平は宮崎合宿中から「中継ぎの仕事」と口にすることが多くあった。試合終盤に投入され、どうやってチームの勝利に貢献できるか。嫌な展開で迎えた初戦のオーストラリア戦では7回にマウンドに上がると、三者三振という最高の結果で応えた。
「めったに取れることじゃないので、一番いい流れだと思います。さっき監督に『流れを止めてくれてありがとう』っていう言葉をかけられて、本当にうれしく思いました。そこは自分でも本当に意気に感じてやっていきたいなと思っています」
独特な緊張感の漂う国際大会初戦。結果を見れば9対3で、8イニングの攻撃機会のうち6度得点を奪った。
それでも決してラクな展開ではなかったが、攻守の勝負どころを託された選手たちがしっかり仕事を果たした。プレミア12の連覇に向け、侍ジャパンは大きな1勝を手にした。
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