11月14日(木) 11:00
「“50婚”は、お互いに自由になりたい同士がくっついているのがいい。でも、私は旦那にワガママな条件を出しているかな(笑)」
笑顔で話すのは、人気漫画家の影木栄貴さん(52)。母方の祖父が、内閣総理大臣を務めた故竹下登氏で、ミュージシャンのDAIGOさん(46)の姉としても知られる。
『LOVE STAGE!!』などのBL漫画が有名だが、40代の婚活から結婚までをつづった初エッセイ『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』(KADOKAWA)が話題だ。
子どものころに、「婚前交渉はいけない」と教育された“箱入り”が、思春期にBLの世界にハマったと話す影木さん。
「性への意識の渇望が、BLとの出合いで昇華されて(笑)。性に興味ある一方、リアル男性は苦手で、『興味vs.苦手』で苦手が勝って。男性とつきあっても続かなかった」
同人誌で漫画を執筆しながら、出版社の編集の仕事を経て、1996年に漫画家デビュー。
漫画家として多忙を極めた30代。40歳でテレビのお見合い企画を体験するも、「仕事に生きよう」と決意。
40代には、自律神経の乱れから不安神経症も経験した影木さんが、婚活を始めたきっかけは、弟の結婚「DAIGOロス」だったという。
「私とDAIGOは2人とも夜型なのですが、まだブレークする前のDAIGOは、しょっちゅう私の仕事場に遊びにきて一緒に食事しました。夜中の寂しいときに誘ってくれるのが私には救いでした」
■DAIGOの結婚で決意、40代半ばで「婚活宣言」
姉としてもDAIGOさんの作詞に助言をするなど、お互いに支え合う仲よしのきょうだいだった。
「DAIGOが(北川)景子ちゃんと結婚し、家に両親と私だけ残されると、とてつもない寂しさが襲ってきて、“親は先にいなくなる”と、はっきり自覚しました。
体が不調だと、なんでも悪く考えてしまい、1人だとメンタル的・物理的にも無理だと痛感しました。
義妹となった景子ちゃんは、『影木栄貴の面倒は一生私が見る!』と言ってくれます。
うれしいけど、迷惑かけたくないし、優しさに甘えたくない。自分で結婚相手、親の代わりを探そうと決意しました」
40代半ばで「婚活宣言」。合コンにも参加。
交際するも自然消滅した人もいたが、2021年、漫画家デビュー25周年を迎え、多忙さに疲弊していたときに、運命の出会いが。
「14年通うマッサージ師さんに『僕の先輩が今フリーなんですけど、どうですか?』と紹介されて」
それが旦那さんとの出会いに。「初めてのデートで、大好きな作品『呪術廻戦』の五条悟グッズをプレゼントされ心つかまれました(笑)。
バツイチで1歳上、国家資格を持つ鍼灸マッサージ師。子どもはなく、地方に両親がいて。彼も将来1人でいることが不安だと意見が一致して」
なんでも悪く考える影木さん。「お金目当て?」「新興宗教?」と、浮かんだ疑問を確認した。
「すべての答えが、私の望むパートナー像と一致。出会って10カ月で入籍することになりました」
晴れて2022年7月入籍。ウエディングフォトを撮り、家族で食事会を開き、祝福された。
だが、一般的な新婚生活とは少し異なるようだ。
「私たちは別居婚で別財布。私の仕事第一主義は変わりません」
旦那さんは木・金曜が休み。一緒に出掛けたり夫婦で過ごすという。
「旦那と一緒のときもノーメークで本当に楽。旦那の“ありのまま受け入れすぎ問題”もあります(笑)」
旦那さんのありがたみを痛感したのは、この夏、影木さんが胆石で急きょ手術となったときのこと。
「入院・手術の手続きや買い物と全部つきそってくれて。結婚してよかったと心から思えました。
入院中、私の部屋の掃除もしてくれて。『このペットボトル、2016年って書いてあるよ。熟成させても腐るだけ』と、喜んで片付けていました(苦笑)。
旦那は、家族へも心遣いをしてくれます。
親戚のぎっくり腰を見てくれたり、姪や甥の相手をしてくれたり、家族で食事をすると、気付くとお皿を片付けてくれたりして。
彼いわく『えいこちゃん(影木さんの本名)が先に死んだ場合にも仲よくしてもらいたいから、みんなの役に立ちたい』と言っています」
結婚前、「姉はだまされているのでは?」と心配していたDAIGOさんも、今では信頼を寄せる。
「私が、遺産は遺言を書いてみんなにのこすと言うと『全部旦那さんにあげなよ。お姉ちゃんと結婚してくれたんだよ。足りないくらいだよ』と言うほど。
でもジュエリーは景子ちゃんに渡して、姪っ子に分けてあげようと思っています」
婚約・結婚指輪選びで、旦那さんはジュエリーに詳しくなった。
「写真を見て価格を当てたり、『それは今持っているものに似合わない』と意見できるようになって。これが俗にいう“旦那の教育”(笑)?」
胆石の手術を終えて退院したとき、うれしいサプライズが待っていた。
「この後値上がりするから、スイート10の8年先取りしたい」と、旦那さんがリングを贈ってくれた。
「彼が『8年間使ったほうがコスパはいい。だから今すぐ買わせてくれ』と。
これは“10年目までよろしくリング”です。
景子ちゃんは『旦那さん、間違ってない。正しい』と。
弟は『旦那さん、お金を借りたりしてない?』と、心配していました(苦笑)。
夫婦別財布なので確かめてはいませんが、お仕事しているので、大丈夫かなと」
旦那さんは、影木さんとの結婚について、雑誌のインタビューで《将来への不安が減り心が安定し、自慢の妻のお陰で両親を喜ばせることができたこと。妻の家族にも温かく受けいれられて感謝している》と。
結婚2年目、今は「浮気はどこから?」とそのラインを夫婦で見定めていると笑う。
そして、結婚を経て仕事のスタンスにも変化が。
「BLも好きですが、50婚をして、幅広い層に訴えかけるものをという意識が強くなってきました」
50婚は、激しい恋愛ではなく、人として好きだなと感じられる居心地のよさがあると影木さん。
「根本的な価値観が合っていれば自由でいられる別居婚。50婚は少しずつ時間をかけて家族になっていくイメージ。
旅行に行って気付いたのが、朝型の旦那と夜型の私は一緒の部屋では眠れない!次の旅行は部屋を別にしようかな(笑)。
旅行は、やっぱり寝室とトイレは別がいいなど、同居の予行演習になります」
結婚してからお互いの価値観をいろいろ探り夫婦になっていく50婚。影木さんの人生に鮮やかな彩りをもたらしてくれたようだ。