女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「びっくり体験」ジャンルの人気記事です。(初公開日は2021年11月27日記事は取材時の状況)
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人は見かけによらないとは言うものの、なかなか普段の生活では実感できないもの。今回は高校時代に強烈な体験をしてしまった女性のエピソードを紹介します。
あだ名が「吊り目ごぼう」の化学の女教師
「高校時代の化学の先生の話なんです。地味で大人しそうな見た目をしていて、40代後半ぐらいだったと思うんですけど、化粧っ気のない独身でした。切れ長の鋭い目尻とひょろっとした細長い胴体をしていて、生徒からは『吊り目ごぼう』ってあだ名で呼ばれてました」
今回、このエピソードを語ってくれたのはリンさん(仮名・23歳)。その地域では進学校と評判でしたが、実態はそうでもない若干荒れ気味の高校に通っていたそうです。生徒から「吊り目ごぼう」と陰で呼ばれていた理科教諭は、冗談1つ言わず、淡々と授業を進めるタイプで、彼女の授業を真面目に聞いている生徒は少なかったそう。
「今となっては随分失礼なことをしてしまったな~って反省してますが、当時は高校生ですからね」
リンさんは申し訳なさそうに当時を振り返り始めました。
無法地帯の教室。不人気の授業ほど荒れる
「先生が授業を始めようとしているのに席につかなかったり、教室の後ろで輪になって世間話をしたり、静かにしている生徒も机の下で携帯ゲームをしていたり、まともに授業を聞いている生徒はほんのごくわずかでした」
化学の授業ともなると、難解な化学式が出てきたりと、ただでさえ興味関心を維持するのは難しいものです。もちろん、先生の話を聞かなくていい理由にはなりませんが、どうしても不人気な授業は荒れてしまいがちです。
教壇の上に忘れられたスマホ
その日も先生が授業をしているというのに、生徒たちは雑談をやめようとしません。
「内心ではイライラしていたことでしょう。私語をしている生徒を注意することもなく、淡々と授業を進めていました。きっと先生から『言っても無駄だ』と見放されていたんでしょうね」
チャイムが鳴って先生が立ち去ったときです。生徒のうちの1人が、教壇の上に先生のスマホが放置されたままになっているのを発見しました。
「どうやら、スケジュールを確認するためにスマホを開き、そのまま画面ロックを掛けずに教壇の上に放置して忘れてしまったみたいです」
スマホを勝手に覗く不良たち
クラスのお調子者の生徒が、「わー吊り目ごぼうのスマホじゃん!」、「ロック掛かって無いぞ!」と騒ぎ出して、勝手に操作し始めたのです。
「もちろん、やめなよ、と注意しましたが、本心からではありません。何か面白いものが出てきたらいいのに、と内心では思っていました」
生徒たちが集まってきて、知られざる先生の一面を暴こうとチェックし始めました。普段、全然素を見せない先生だったために、好奇心を刺激してしまったようです。
女教師の知られざる素顔がそこに…
「もう、教壇の周りは人だかりができていました」
スマホを操作していた生徒の1人が画像フォルダを漁り始めます。ひたすらスワイプして写真を見ていたとき、一枚の写真に目が留まりました。
切れ長の鋭い目尻とひょろっとした細長い胴体の若い女性の写真で、それは明らかに先生の若い時の写真です。
「特攻服に派手な化粧の強面の女性が、ヤンキー座りをして、斜めから見上げるように睨みつけている写真だったのです。一目で吊り目ごぼう先生だって分かりました」
レディースの暴走族だった
生徒から舐められている吊り目ごぼう先生はかつて、レディースの暴走族だったのです。両脇には同じようにキツい化粧をした特攻服姿の女性をずらりと従えています。きっと暴走族集団の中でも上の立場だったことが伺えます。
さらにスライドしていくとどれも凄みのある写真ばかりが並んでいます。段々と怖くなった生徒の1人が「もう閉じた方がいいよ」と忠告します。ざわめいていた教室内はいつの間にか静まり返っていました。
その時、ガラガラッと教室の扉が開きました。驚いて振り返ると、そこにはスマホを忘れたことに気が付いた先生が立っていたのです。
授業中に騒ぐ生徒はいなくなった
シンと静まり返った教室で自分のスマホに群がる生徒と、スマホに表示されていたかつての自分の写真を見て状況を察したようですが、焦る様子も、怒る様子もなく、ただ黙ってスマホを回収して立ち去ったそうです。
「翌日の吊り目ごぼうの授業からは誰一人騒いだりする生徒はいなくなりました」
先生は理由を聞くわけでもなく、いつもと変わらず、淡々と授業を進めます。それでも内職をしたり、机の下でこっそりスマホのゲームをする人はいたそうですが、席を立ち上がって歩き回ったり、授業の邪魔になるような声で私語をする生徒は1人もいなくなりました。
「私も若かった時くらいあるんだよ」
「卒業間近くらいの頃かな、その先生と廊下ですれ違ったときがあって、スマホに保存されていた暴走族だった頃の写真について尋ねたことがあったんです。もちろん、ごめんなさい、って謝ってからですよ。あれは何だったんですかって。そしたら先生が、『
まあ、隣町で……わたしも若かった時くらいあるんだよ
』ってそう言って、ニヤッと笑って去っていきました」
時として、人は見かけによらない過去を持っているものです。「きっと一生忘れないでしょうね、この先生のことは……」とリンさんは締めくくりました。皆さんは、人は見かけによらない経験をお持ちでしょうか?
<文/浅川玲奈>
【浅川玲奈】
平安京で生まれ江戸で育ったアラサー文学少女、と自分で言ってしまう婚活マニア。最近の日課は近所の雑貨店で買ってきたサボテンの観察。シアワセになりたいがクチぐせ。
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