谷口彰悟が語ったセンターバックとしての覚悟「何度でも復活できるし、何度でも立ち上がれる」

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谷口彰悟が語ったセンターバックとしての覚悟「何度でも復活できるし、何度でも立ち上がれる」

11月14日(木) 7:15

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【連載】

谷口彰悟「30歳を過ぎた僕が今、伝えたいこと」<第26回>



◆【連載・谷口彰悟】第1回から読む>>

◆第25回>>オーストラリア戦のオウンゴールを語る「失点直後は...」

ショッキングなニュースが飛び込んできた。『谷口彰悟、アキレス腱断裂か』。11月8日に行なわれたメヘレン戦で開始11分に左足首を痛めて座り込み、検査の結果、6カ月のリハビリを要する重症と診断されたという。

オーストラリア戦でオウンゴールを冒し、挽回すべく臨もうとしたワールドカップ・アジア最終予選の11月シリーズは、このアクシデントにより不参加を余儀なくされた。今、どんな心境で自身と向き合っているのだろうか。

オーストラリア戦後にベルギーに帰国し、10月21日にリモート取材で語った当時の思いを記す。

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谷口彰悟は語った「何度でも立ち直れる自信がある」photo by AFLO

谷口彰悟は語った「何度でも立ち直れる自信がある」photo by AFLO



10月15日、ワールドカップ最終予選のオーストラリア戦で、58分にクリアミスからオウンゴールした自分は、1-1で引き分けた試合後、責任を痛感しつつ、ベルギーに戻った。

しかし、気持ちを切り替えてシント・トロイデンでの心機一転を誓った10月20日のゲンク戦で、15分にDOGSO(ドグソ/決定的な得点機会の阻止)により退場処分となり、チームは2-3で敗戦した。

またしても自分のミスにより、ゲームを壊してしまったのだった。

オーストラリア戦のオウンゴールと同様に、試合後は何度も映像を見返して、自分の判断や対応を省みた。

退場につながった場面では、相手とのさまざまな駆け引きと、自分の判断、行動が重なっていた。

状況としては、相手陣内からの1本のパスでDFラインの背後へ抜け出され、自分よりも相手のほうが前にいる状態で追いかけなければならなかった。だから、相手を追いかけ始めた時から、ファウルを冒せば退場になるであろうことは理解していた。

だが、まだ最後の砦であるGKがいる。レオ(小久保玲央ブライアン)がしっかりと対応できるように、相手FWにプレッシャーをかけなければいけないと考えた。また当初は、何とか追いつき、アタックできるのではないかと思ったが、相手のスピードも速く、途中で追いつくことは難しいと判断を変えていた。

状況としては、GKとFWの1対1になる。しかし、自分が追いかけてきていることを認知させることで、相手に1対2の状況だと意識させなければいけないと思った。

相手FWがドリブルでGKをかわそうとした時に、自分がアタックする。もしくはGKが弾いたこぼれ球に反応する。失点を防ぐチャンスも、可能性もまだあると考えた。そのためにも追いかけなければいけなかったし、追い続けなければいけなかったし、プレッシャーをかける意味でも相手の視界に入ろうとも思った。

僕自身も相手との接触は避けたかったため、並走していたところから、うしろを回り込むように進路変更した。しかしその瞬間、相手FWもドリブルする進路を変えると、自分の前にグッと入り込んできたため、お互いに交差するような状況が生まれた。その瞬間、わずかだが相手FWのうしろ足が自分の足に触れてしまった。

触れたのはほんのわずかだったが、ファウルになった結果は、相手のドリブルや駆け引きが一枚上手だったということだろう。

【追いかけた行為に後悔はひとつもない】DFとしては、戻る時のスピードも考える。全力疾走してしまうと、方向転換するのは難しくなるし、FWのなかにはあえてスピードを緩める選手もいる。プレーしながらも瞬時にいろいろなことを考え、イメージし、判断していくのだが、相手が前に入ってきた時に自分がスピードを緩められなかったために、ファウルを取られてしまった。

結果的に、開始からわずか15分で退場処分になり、首位に立つゲンクに2-3で敗れる結果となった。しかも、ゲンクとの一戦は「リンブルフダービー」だっただけに、ふたつの意味で痛い敗戦であり、責任を痛感した。

自分自身も、日本代表として戦ったオーストラリア戦でオウンゴールをした直後の退場処分だっただけに、落胆は大きかった。

「こうも(ミスが)続くものか」と──。

ベルギーに帰国して、気持ちを仕切り直して迎えた矢先の事態だっただけに、なおさらだった。退場したあとも気持ちは切り替えられなかったし、試合後もすぐに映像を見返して、今、つづったことを考え、整理した。本当にいろいろなことを考えさせられる数日間だった。

前回のコラムでも触れたが、DFは失点に直結するポジションだ。GKも含めて守備に関わっている選手で、失点に絡んでいない選手はいないと思っている。仮に、絡んだことのない選手がいたとしたら、その選手は守備をしていないことになると、僕自身は思っている。

もちろん、オウンゴールの場面も、DOGSOで退場になった場面も、ミスはミスとして反省し、改善しなければいけない。映像も含めて振り返る必要はあるし、改善策を見つける必要もあると思っている。

それでもなお、僕自身は、相手FWに抜け出された状況で、最後の最後まで何が起こるかわからないと考え、追いかけようとした行為に後悔はひとつもない。

自分自身で「姿勢」と表現するのは少し違うかもしれないが、日本代表やシント・トロイデンでも、守備に対する細かい対応、相手にゴールを許さない気持ちや取り組みについては、誰よりも強いという自信を持っている。

そして何よりも、その自信があるかぎり、自分はたとえミスをしたとしても、何度でも立ち直れる自信がある。

【あきらめたらサッカー選手を辞める時】センターバックである自分の仕事は、チームがどうすれば失点しないか、そのためにどうやって守っていくか。戦う姿勢を示しつつ、それを体現していくことだと思っている。

相手に絶対にやらせない、次は絶対に防いでやる。こいつには負けたくない、やらせたくない。そういった思いがあるうちは、何度でも復活できるし、何度でも立ち上がれる。その思いを今後も持ち続けていきたいし、大切にしていきたいとも思う。

簡単に自分をあきらめないし、あきらめたくない。それがなくなったら、おそらくそれはサッカー選手を辞める時だろう。

だから同じように、今後の試合で相手FWに抜け出されたとしても、次も全力で追いかけるだろう。DFの裏に抜け出されたらあきらめます、ファウルするのが怖いから追いかけません、といったDFには絶対になりたくない。

そうしたプレーヤーとしての誇り、センターバックとしての覚悟を再認識した機会でもあった。

少し時間をさかのぼると、ワールドカップ最終予選が始まった9月、シント・トロイデンは監督交代を発表した。日本代表の活動期間中にそのニュースを知った自分がベルギーに戻ると、チームは新体制でスタートしていた。

フェリックス・マズー監督は、ロイヤル・ユニオン・サンジロワーズを指揮していた時にマチ(町田浩樹)や(三笘)薫も指導を受けたことがあり、日本代表の活動期間中に人柄や指導方法について情報をもらった。

個人的にマズー監督が就任して変わったのは、ポジションが3バックの左から、日本代表と同じ中央に変わったことだ。真ん中でプレーしたほうが、守備範囲を広くカバーできる自分のプレースタイルがより生かせると感じている。

その特徴を理解してくれていたからか、マズー監督はチームに合流した初日に「私はお前を3バックの真ん中で起用しようと思っている」と言ってくれた。

そのほうが自分も、チームメイトも生かせると感じていた僕は、「自分もそう思っていました」とだけ答えた。

その言葉だけで、自分に求められている役割やプレーも理解することができた。

【ポジティブなエネルギーを与えてくれる】ゲンクとのリンブルフダービーは、自分の退場も影響して2-3で敗れたが、マズー監督が就任してからは3勝2分1敗(第12節終了時点)と結果も上向いている。

シーズン序盤は防戦一方になり、攻め手が見えない状況に陥ることもあったが、今は攻守のバランスがよくなり、チームとしてもやることが明確になってきている。何より、マズー監督はチームに対してポジティブなエネルギーを与えてくれる。その熱量が選手たちの力を引き出してくれているようにも思う。

シーズンも中盤戦に差しかかっている。どんな相手に対しても、拮抗した試合ができるようになってきた今、ここから先はいかに勝ち点3を取りきれるかが大事になってくる。

チームとして取り組んでいることが体現できるようになっているだけに、勝ち点3を掴むためにも、個々がスペシャルな部分を発揮して結果にこだわっていく必要がある。

◆第27回につづく>>

【profile】

谷口彰悟(たにぐち・しょうご)

1991年7月15日生まれ、熊本県熊本市出身。大津高→筑波大を経て2014年に川崎フロンターレに正式入団。高い守備能力でスタメンを奪取し、4度のリーグ優勝に貢献する。Jリーグベストイレブンにも4度選出。2015年6月のイラク戦で日本代表デビュー。カタールW杯スペイン戦では日本代表選手・最年長31歳139日でW杯初出場を果たす。2023年からカタールのアル・ラーヤンSCでプレーしたのち、2024年7月にベルギーのシント・トロイデンに完全移籍する。ポジション=DF。身長183cm、体重75kg。



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