リドリー・スコットが監督を手掛けた歴史スペクタクル超大作『グラディエーター』(00)は、第73回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞など5部門を受賞し世界中で大ヒットを記録した。その続編となる『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』が11月15日(金)より公開。1作目と同じく、スコット監督が再びメガホンを取り、『グラディエーター』の“その後”を描く。
【写真を見る】柔道界きっての最強兄妹、阿部一二三&詩が『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』の見どころを熱く語る!
今回、東京2020・パリ2024でのオリンピックで2連覇を達成した阿部一二三と、東京2020オリンピックで金メダルを獲得した阿部詩の2人にいち早く鑑賞してもらうと「前作とのつながりを感じる」「闘う人の強さを感じた」と大興奮。激しいアクションシーンはもちろん「人を想う映画でグッときた」と語る一二三と「人間のリアリティが詰まった映画」と本作で描かれる人間関係にも惹かれた様子の詩。「最後は絶対泣く!」と声を揃えた阿部兄妹が映画の魅力についての対談に挑み、見どころをたっぷりと語った。
■「バトルはどれをとっても迫力満点!」(一二三)
前作では古代ローマを舞台に、裏切りにあい、家族を失ったうえに奴隷にまで成り下がりながらも、復讐に燃えグラディエーター(剣闘士)として再び立ち上がっていく、将軍マキシマスの壮絶な闘いが描かれた。本作では、暴君の圧政により、主人公ルシアスが、グラディエーターとなり、コロセウム(円形闘技場)での闘いに身を投じていく姿を壮大に描いていく。ルシアスは、前作の主人公マキシマスと敵対関係にあり、復讐の対象であったコモドゥス皇帝の姉、ルッシラの息子。グラディエーターであるマキシマスが巨大な帝国を打ち崩そうとする瞬間を幼きころにコロセウムで目撃し、その記憶を胸に刻んで生きてきたルシアスも、今回権力闘争に巻き込まれていく。
前作には、主人公マキシマス役のラッセル・クロウ、宿敵コモドゥス役のホアキン・フェニックスら、のちに映画界を彩る豪華俳優陣が出演。キャスティングにも注目が集まる本作の主演は、第95回アカデミー賞主演男優賞にノミネートの『aftersun/アフターサン』(22)や『異人たち』(23)など話題作への出演が続くポール・メスカル。ルッシラ役のコニー・ニールセンは同役で続投し、物語の鍵を握る謎の男、マクリヌス役には名優デンゼル・ワシントンが扮するなど、人気、実力、話題性も十分な布陣が揃った。
圧倒的クオリティで伝説となった前作。24年の時を経ての続編は、最新技術によってさらにグレードアップした圧倒的な迫力とキャラクターたちのたぎる情熱、360度どこを見渡してもローマ帝国であるようなセット、煌びやかな劇中衣装、そしてレベルアップしたバトルシーンなど、どこを切り取っても見どころだらけ。印象的なシーンについて質問すると「全部!」と声を揃えた阿部兄妹。「いいシーンはすべてネタバレになる…」と頭を抱える。
そんな二人は、質問が書かれたカードを交互に引き、それに答えていく形で映画の魅力を伝えていくことに。バトルに次ぐバトルで、観る側の体温も上がりっぱなしの本作。クライマックスのバトルシーンは「当たり前にみんなが感動する!」と絶賛。詩はルシアスとローマ帝国軍の将軍、アカシウス(ペドロ・パスカル)のバトルを挙げる。アカシウスは非道な皇帝の配下でありながら、大勢の民が飢えに苦しむローマの現状を憂う将軍で、獅子のような勇ましさを持っている。「どっちも負けてほしくないという感情になりました」と振り返る詩は「全編通して、みんなが負けないでほしい」という気持ちが湧いていたという。誰に感情移入していいのかわからなくなるほど心が揺さぶられたと語る詩に、「バトルはどれをとっても迫力満点!」と太鼓判の一二三。バトルに注目しつつ「人間関係や前作からの伏線回収など想像以上に内容が濃くて期待以上」と大満足の様子だ。
■「『サルが出てくるから観て!』ってみんなにおすすめする(笑)」(詩)
二人の心を奪った強烈なキャラクターがいる。「主人公ルシアスは圧倒的にかっこいい」と前置きした上で、一二三は「カラカラ帝」、詩は「サル」をピックアップ。一二三が挙げたゲタ(ジョセフ・クイン)とカラカラ(フレッド・ヘッキンジャー)の双子皇帝の兄、カラカラはローマ史に残る暴君と言われていて、本作でも感情の起伏が激しいキャラクターとして描かれている。「一番いい味出している。カラカラは観た人にインパクトが残ると思う。最後のほうまでおもしろかった」とのこと。「インパクトで言ったらサルもすごかった!」と笑いながら話す詩に、「最初はなに?サル?って思ったよな」と驚きの表情で語る一二三。これまでに見たことのない姿のサルだったため「説明が難しい」としながらも、気に入った映画は人におすすめしたくなるという詩は「『サル、出てくるから観て!』ってみんなにおすすめすると思います」と話し、動画撮影中には何度もサルの話題に触れるなど、頭からサルの姿が離れない様子だった。
動物が好きな詩はサイの登場も印象に残っているようで、一二三に「どうやって倒す?」と質問する場面も。負ける気がしないという一二三はサイの倒し方をレクチャー。突進してくるサイからは「逃げない!」と宣言し、「まず角を持つ、右組みで後ろ襟を取って足払い。崩れたところで角を持ちながらの一本背負い。勝ちやな」とニヤリ。ポイントは一回も避けないことらしく「一発で決める。負ける気がしない」とのこと。二人で闘うなら「僕が角を右手で止めて、詩が足を崩しにいく」と一二三が提案すると、詩は「タックルで足を持つ」としながらも、本作に登場した武器が気になっていたようで「武器で目を刺す!」とニッコリ。柔道技を絡めての倒し方を話し合うなかで、「あいつは突進しかできない」「上に突き上げるしかできない」など、初見で相手の弱点をしっかり見抜いているのはさすがだ。
■「「負けた相手にはリベンジしたいし、勝つためにはまず自分に打ち勝たないといけない」(一二三)
剣闘士たちの命を懸けた熱いバトル、複雑な人間関係が絡みながら、“リベンジ”もテーマになっている本作。「オリンピックの団体戦で東京でもパリでもフランスのチームに負けたから、次のロス(ロサンゼルス2028オリンピック)では必ずリベンジしたいと強く思っている」と話した一二三だったが、加えて「負けた相手にはリベンジしたいし、勝つためにはまず自分に打ち勝たないといけない」とし、オリンピックという舞台、負けた相手、そして自分自身の「すべてにリベンジしたい。長い道のりではあるけれど」と思いを明かした。詩は本作で描かれる“裏切り”も見どころだったと語り「人を裏切るシーンがたくさんあった。半端ないと思ったのはマクリヌス。なにかあるなと思ったけれど、あの悪さ加減がよかった。マクリヌスきっかけでいろいろと展開していくところも見どころ。結構な悪。こんな人がいるの?って思ったけれど、こういう人がいるから、国が滅びていくんだろうなって感じた人でもあったかな」と謎の男マクリヌスの立ち回りに言及していた。
■「出てくる人全員がムキムキ。いい身体には一通り目が行きました!」(詩)
数多くの主演作を世に放ってきたワシントンが「キャリア史上最大の作品」と絶賛した壮大で美しく、どこを見渡しても完璧に再現されているコロセウムのセット。一二三は試合の合宿でローマを訪れた際に実際のコロッセウムに足を運んだことがあるという。「中に入ったこともあるけれど、相当デカい。(本作のように)実物大を建設するってどういうこと?って思っちゃう」と目を丸くする。映画を観てローマに行きたくなったと話した詩は「こんなに人が出てくる映画は観たことない!あの人が入る大きさってことでしょ?」と、そのスケールの大きさに脱帽していた。
柔道界最強の二人はグラディエーターの強さをどう感じたのか。「強い。弓が当たっても倒れない!」とその強靭な肉体の強さに触れた詩。一二三は「傷がエグい。武器を持ってなければ勝てるかもしれないけれど、傷は痛いからイヤ」と自信をのぞかせながらも顔をしかめる。剣闘士たちは「初めからみんな強かったし、ルシアスのリーダーの感じがすごくよかった」と指摘。「第一線で自ら闘うリーダーには憧れる。背中を見せる強さはすごい!」と、ルシアスの統率力、生まれながらのリーダー気質に頼り甲斐を感じていたようだ。
闘う男たちの肉体も本作の注目ポイントだ。ルシアス役のメスカルは週6日のトレーニングと徹底した食事管理を6か月間続け、英雄ルシアスの身体を作り上げた。その過酷なトレーニングの様子も特別映像で公開中だ。「出てくる人全員がムキムキ。集団のなかにすごくきれいな筋肉の人を見つけました。いい身体には一通り目が行きました!」と登場人物の筋肉美に触れた詩。映画に限らず、普段から鍛えている人の身体には目が行くという一二三も「目に留まる人が多かったです」と鍛え抜かれた肉体による大迫力のぶつかり合いを堪能したようだ。
■「人が闘う理由は人の数だけあるのかなって思います」(一二三)
復讐心から始まるも闘いを重ねるなかで、闘う理由に変化が生まれていくルシアス。登場人物それぞれが持つ“闘う理由”も心が揺さぶられるポイントだが、阿部兄妹はどんな思いで闘いの世界に身を投じているのだろうか。「一番は自分のため」と切りだした一二三は「自分の夢や目標を叶えるため。そこを曲げるのはダメだと思う。でもそれと同じくらい支えてくれるたくさんの人に勝って恩返したいという気持ちもあります」と強調。
詩は「映画でも『力と名誉』っていうセリフがあったけど、自分の限界を追い求めて、どこまで強くなり、どこまで勝ち上がれるのかという探究心、そのなかで勝ちたいという意志が出てきて、最終的には自分のために闘っているんだなって思います」とし、「闘いの前の緊張感、なにが起きるのかわからないという点では、似ている部分もあるんじゃないかな」と剣闘士たちとの共通点にも触れた。「僕たちはやっぱり自分たちが追い求めているもの、自分のために闘っているけれど、映画では“国のために”というのが描かれる。意味は違うけれど、背負っているものの大きさは同じだと思います」と解説した一二三は「人が闘う理由は、人の数だけあるのかなって思います」とも話した。
『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』という本作のタイトルにちなみ、二人にとっての“英雄”の人物像についても聞いてみた。一二三が英雄に求めるのは「スター性」。「人間を引っ張っていく能力、人を惹きつける力、周囲を盛り上げる力を完璧に持っているのが英雄だと思います」とのこと。「ずっと背中を見せてくれる人。どれだけ自分自身が犠牲になっても人のために突き進んでいくのが本当の英雄。人のことや批判を気にして言えないことも多い時代だけど、そのなかで自分の意思を貫いていけるのが英雄なのかなと思います」と語り、具体的には「両親」と答えた詩。
本作で描かれる親の強さについても「剣闘士としてのお父さんは確かに強かった。そしてお母さんも子どもを守ろうとするなかで強さを見せていた。本当の英雄だなと思いますね」と、子どもを守るためにはなにを犠牲にしてでも!という底知れぬ親の強さにも言及し、本作で描かれるのは剣闘士たちの強さだけではないともアピールしていた。
取材・文/タナカシノブ
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