発走機についている瞬間は「死にに行く覚悟」パリ五輪後、太田りゆの次なる目標は競輪祭での優勝

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発走機についている瞬間は「死にに行く覚悟」パリ五輪後、太田りゆの次なる目標は競輪祭での優勝

11月13日(水) 7:00

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自転車競技から引退しガールズケイリン専念を表明した太田りゆphoto by Sano Miki

自転車競技から引退しガールズケイリン専念を表明した太田りゆphoto by Sano Miki





パリ五輪で、女子ケイリン日本勢歴代最高の9位という成績を残して、自転車競技の代表から引退した太田りゆ。ガールズケイリンに専念することを発表し、9月から実際に参戦すると、川崎競輪場、宇都宮競輪場、函館競輪場、松坂競輪場での4開催で連続優勝を果たした。しかもすべて1着の完全優勝だ。そして、11月19日(火)から21日(木)に行なわれるGⅠ開催「競輪祭女子王座戦」でも優勝候補のひとりに挙げられている。この開催の優勝者には、ガールズケイリン最高峰のレース「ガールズグランプリ2024」への出場権が与えられるだけあって、彼女にとっても是が非でもほしいタイトルである。競輪祭に駆ける意気込みを聞いた。

【パリ五輪後の多忙な日々】 ――ナショナルチームを離れ、ガールズケイリン1本に絞りましたが、ペースはつかめてきましたか。

全然つかめていません。本当にありがたいのですが、オリンピックが終わってからはすごく忙しい毎日を送らせてもらっています。同じところに3日以上いることがないのではないかというくらい、いろんな活動をしています。生活を安定させるというよりは、一生懸命生きているという感じです。

――そのなかで新しい発見はありましたか。

今は30歳なんですが、21歳からずっとナショナルチームで修行僧のような生活を送っていました。だから新しいことだらけです。初挑戦のこともいっぱいあって、今は全力ダッシュしている感じ。すごく楽しいですね。

――9月からここまでの競輪ではすべて完全優勝です。この結果についてはどう感じていますか。

絶対に負けてはいけないという状況のなかでレースをしなくちゃいけないので、すごく緊張していました。みんなに期待してもらっていて、裏切ってしまったら、車券がパーになっちゃう。そこは競技とは違うところで、気持ち悪くなるくらい緊張しました。

――パリ五輪での好成績もありますので、ファンからの声援も変わってきているかと思いますが、プレッシャーに感じることはありますか。

たくさんの声援をもらっていていますが、それがプレッシャーに感じることはありません。むしろやらなきゃとか、勝つために走らなきゃと思っています。発走機についている瞬間は、過剰な表現かもしれませんが、死にに行く覚悟。その意味では周りの選手より私のほうが緊張しているかもしれませんね。



壮絶な覚悟でレースに臨む太田photo by Takahashi Manabu

壮絶な覚悟でレースに臨む太田photo by Takahashi Manabu





【オリンピアンとしての誇り】 ――そして11月19日から競輪祭女子王座戦があります。昨年は6着でしたが、どんな印象がありますか。

勝てなくてやっぱり悔しかったですね。私はここで勝てないとグランプリには出場できなかったので、獲るしかないという気持ちで臨みました。昨年は2日目でミスをしてしまって、ギリギリで決勝に乗れたんですが、車番(7番車)も悪くて、位置取りも難しかったなという印象があります。

――オリンピックに向けてコンディションを上げてきたと思いますが、今はその調子がある程度維持されているという感じなのでしょうか。

ここまでの成績を見る限り、そこまで力は落ちていないと思います。トレーニングもできていないわけではないし、結構追い込んでやっているので、自分の感覚としては力は落ちていないですね。今回はデビューしてから初めてこんなに短期間でいっぱいガールズケイリンを走っているので、やっぱり感覚はこれまでとは違うと思っています。いつもとは違うアドバンテージを持って競輪祭を迎えられるのかなと思っています。

――競輪祭に向けて取り組んでいるトレーニングはありますか。

自転車競技はギアが重いので、それに合わせたトレーニングが多かったし、体づくりもそうでした。ただ私にとってガールズケイリンのギアは軽いので、回転数を上げるトレーニングをメインにやっています。

――競輪祭が開催されるのは、小倉競輪場です。400mの室内バンクですが、どんな印象を持っていますか。

室内のほうが好きです。私は風がないほうがいいので、小倉は好きなところです。ただ競輪祭でしか走ったことはなくて、優勝したことはないので、勝ちきれたらいいなと思っています。

――これからはさらに警戒される選手となります。競輪祭では優勝しか狙っていないと思いますが、どんなレースを心掛けたいですか。

レース中に警戒されて、他の選手たちに私を見てもらうのは、競輪ではある意味、動きやすくなります。私の動き待ちという状態になってくれるとやりやすいので、そこはポジティブに捉えたいです。それから、お客さんみんなに期待される、応援してもらえる選手になりたいと思っています。オリンピアンというプライドも持って走りたいですね。

――「オリンピアン」と言われることは、どんな気持ちなのでしょうか。

すごくうれしいです。だからこそ、オリンピアンとしてのプライドは持っています。オリンピックに出場したことがどれだけ価値のあるものか、東京大会で出られなかった経験も踏まえて、すごく理解できるからこそ、そこは大事に持っていたいと思っています。

強靭なフィジカルを持つ太田photo by Sano Miki

強靭なフィジカルを持つ太田photo by Sano Miki





【自分を信じきりたい】 ――競輪祭で勝利のポイントとなるのはどんなことでしょうか。

周りの選手を意識しすぎず、自分の長所を生かしたレースができれば勝てると思います。警戒すべき選手は何人かいて、みんなの注意も散らばると思うんです。その間を突いていけたらいいですね。私はその人たちを気にせずやりたいと思っています。

――課題としていることがあれば教えてください。

大事なところで獲りきれないことです。自分を信じきれていないから、ちょっとした自信のなさから微妙な動きをしてしまうことが多かったと思います。絶対に大丈夫という自信を持ったうえでレースをするのが、競輪ではすごく大事になってくると思うから、そこは課題かなと思います。

――やはり気持ちの部分が大事なんですね。

複数でレースをする競輪は絶対に大事ですね。ナショナルチームのブノワ・ベトゥコーチにメンタルの強さをすごく強調されました。命をかけるくらいの気持ち、国を背負ってやるんだという気持ちの大切さは、今ではすごく理解できます。

――あらためて競輪祭ではどんなレースを見せたいですか。

日本代表を引退しても、競輪選手としてやっぱり強いな、今後も楽しみだなと思ってもらえるようなレースをしたいですし、グランプリの権利争いにも名乗りを上げていきたいと思っています。そういうところも楽しみに注目してもらえたらうれしいです。



太田は競輪祭での優勝を誓うphoto by Sano Miki

太田は競輪祭での優勝を誓うphoto by Sano Miki





【Profile】

太田りゆ(おおた・りゆ)

1994年8月17日生まれ、埼玉県出身。中学・高校と陸上競技の中距離選手として活躍し、大学時に競輪学校の試験を受けて合格。2016年に入学すると在学中にナショナルチームから声がかかり、2017年2月のアジア選手権大会のチームスプリントに出場し3位となる。その後も数々の国際大会に出場して結果を残し、2022年、2023年のアジア選手権女子スプリントで連覇を達成。パリ五輪では女子ケイリン日本勢歴代最高の9位となった。ガールズケイリンでも活躍し、いくつかのビッグレースで決勝を走るなど、屈指の実力を誇っている。

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