入院患者用の病院の病室は、個室と大部屋の2種類。できればほかの患者との相部屋は避けたいところだが、個室だと病院から「室料差額」を請求されることになり、これが病院にもよるが1日1~2万円とホテル代並みに高い。
そのため、ほとんどの方は大部屋に入ることになるが、一般的にベッドの数は4床、ないし6床。全員が病人ということもあって大人しくしていると思いきや、なかには周りに人がいることも顧みず迷惑行為をする患者もいる。
通路側のベッドが気に入らず、窓側の自分に交換を要求
「退院する直前、同じ病室に入ってきた70歳くらいの白髪、痩身の方でしたがいろんな意味で強烈でした。4人部屋でその人は通路側のベッドでしたけど、場所が気に入らないのかいきなり『窓側のベッドにしてくれ』って。
看護師さんは病床に空きがないから対応できないと伝えたのですが、そしたら突然私に
『あんた、儂より若いんだからこっちに譲ってくれてもいいだろ』
ですからね。いやぁ、あの時は焦りましたよ」
そう振り返るのは、21年に急性膵炎で約2週間入院していた自営業の
野村駿介さん(仮名・49歳)
。この時はすぐに看護師が間に入って事なきを得たが、彼は一言でいえばワガママ。
食事も病院職員に取りに行かせる始末
食事の際、歩ける人はナースステーションの前に置かれたキャリーまで取りに行き、食後も戻すことになっていたが、「○○病院はちゃんと持ってきてくれたぞ。そのくらいしてくれてもいいだろ!」と激怒。足取りはしっかりしていたが断固として取りに行かず、病棟補助員の女性に持って来させたとか。
「当時はコロナ禍で見舞い禁止だったので既婚者かどうかは知りませんが、奥さんがいたら全部相手にやらせて身の回りのことは一切しない人なのかなって。
自宅ではどうであれ入院中は病院のルールを守っている人が多いじゃないですか。だから、あまりの俺様ぶりに見ていて気持ちはよくなかったですけどね」
看護師が何度注意してもイヤホンを付けずにテレビを視聴
しかも、この男性の傍若無人ぶりはこれに留まらない。ベッド脇にはテレビやラジオが付いているが、イヤホンで視聴するのがルール。だが、これを無視してボリューム駄々洩れの状態で堂々とテレビを見ていたのだ。
「男性のベッドはカーテンが閉まっていたので中の様子を伺うことはできませんでしたが、そこから音が漏れているのは明らか。
ベッドの件や食事の配膳要求のこともあったので、下手に注意すれば面倒なことになる思い、耳栓代わりに私もイヤホンをして音が聞こえないようにしました。ただ、私以外の患者の方がナースコールを押したらしく、看護師さんが来てその男性を注意していました」
ただし、これで懲りなかったのか、男性はその後も二度三度と同じことを繰り返し、そのたびに看護師が注意。男性は「イヤホンがない病院が悪い!」と言い訳していたが、イヤホンを患者側が用意することになっている病院は少なくない。
しかも、1階にある院内コンビニで販売しており、持参しなくても購入できるようになっていたそうだ。
看護師がそのように説明すると「だったら代わりに買ってこい!」と言っていたが、当然それは看護師の仕事ではない。もちろん、病状によっては医師から行動制限が設けられ、売店に行けないケースもあるが年配男性はそうした制限がかかっている感じではなかったという。
さすがにイラッと来て、強めの舌打ち&睨みで意思表示をすると…
「これ以上、相手にするのが嫌だったのか看護師さんも途中で『失礼します』って切り上げてました。その後もボリューム全開で聴いてましたが、この時はカーテンが開いてたので迷惑を被っていることを伝えようと思ったんです」
とはいえ、さすがに直接文句を言う度胸はなかったため、トイレに行く際にベッドの前を通り過ぎるタイミングで舌打ちをするのがやっと。でも、気づいてもらえるようにあえて大きめに舌打ちをして、同時に男性のほうを思い切り睨んでやったそうだ。
「自分の中ではこれが限界。もし何か言ってきたらどうしようってドキドキしてましたが、男性は一瞬視線をこちらに向けた後、すぐに逸らしたからこちらが迷惑していることに気づいたのでしょう。
この後、自分で院内コンビニに買いに行ったらしく、音漏れはなくなりました。私はあまり人相がいいほうではないのですが、おかげで相手をビビらすことができたのかも。この時は自分が悪人顔で助かりました(笑)」
病棟の大部屋は、他の入院患者との集団生活。ほかの患者がストレスに感じるような迷惑行為はくれぐれも慎んでほしいものだ。
<TEXT/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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