11月12日(火) 20:00
高校を卒業したばかりの10代男女3名からなるギターレスのスリーピース・バンド、ココラシカ。7月に「最後の花火」、9月に「溶けないで」と、コンスタントに新曲を発表していたが、11月12日に新曲「花瓶」を発表した。ソングライティングを一手に手掛けるこうき(vo、key)、こた(ds)、らな(b)の3人で作り上げたこの曲は、「溶けないで」に続き、SEKAI NO OWARI、ゆず、Official髭男dismなどに関わってきた保本真吾をプロデューサーに起用。それまでのポップな楽曲とはひと味違い、しっとりとしたミディアム・バラードに仕上がっている。
また、読売テレビで放送中のドラマ『未成年~未熟な俺たちは不器用に進行中~』のエンディング主題歌というタイアップも、彼らにとっては大きなステップになった。まさに現在進行形で成長を続けるココラシカは、今何を考え、どこへ向かっているのか。新曲「花瓶」を中心に3人から話を聞いた。
――2カ月おきに新曲のリリースが続いていますが、何か心境の変化はありましたか。
こうき 制作を繰り返すうちに、自分たちなりに楽曲へのアプローチの仕方などで感覚をつかみ始めてきたかなっていうのはちょっとあります。
――具体的にはどういうことなのでしょうか。
こうき 高校生の時は、3人のなんとなくの感覚で作ってきたのが、人に聞かせる音楽ということを意識したときに、どういうことをやりたいのか、やるべきなのかがぴったり交わるところを探していると、だんだんこのサウンドが曲にマッチしているなとか、そういうことがわかるようになってきたんです。
らな あと、プロデューサーさんと一緒に組んで作ってきたことも大きいですね。「最後の花火」は横山(裕章)さん、「溶けないで」と「花瓶」は保本(慎吾)さんに入ってもらって、主観的ではなく、どういう音楽がいろんな人に聴いてもらえるのか、耳に引っかかるのかということを第三者の視点を通して学びました。
――制作的なところ以外での、ファンやライブでのオーディエンスの反応はどうですか。
こた ココラシカっていう名前がちょっとずつ広がってきて、「ライブの方がよかった」とか書き込んでくれる人がちょっとずつ増えているので、目に見えて感じられるのはうれしいですね。
こうき ライブも同期(事前にプログラミングした音源と同時に演奏すること)を取り入れたこともあって、表現に幅が広がったし、お客さんもさらに楽しんでもらえるようになったと感じます。
――新曲「花瓶」はこれまでと違って、バラード調の楽曲で、しかもドラマのタイアップが決まりました。
こうき シンプルなバラードなので、ただシンプルなだけにならないように聞かせる工夫をプロデューサーの保本(真吾)さんと一緒に考えました。とはいえ、あまりごちゃごちゃしすぎずに、メッセージがまっすぐ伝わるよう工夫したのが、この曲の頑張ったところですね。
――確かにシンプルかつメロディアスで、こうきくんの弾き語りでも成立しそうな曲調ではありますよね。バンドとしてどこを工夫したのでしょうか。
こた 最初にデモを渡されたときは(ドラマーとして)正直「どうすりゃいいんだ?」って思いましたよ。「なんにもできねえ」って(笑)。シンプルなだけに、普通にやると超普通になっちゃうんですよ。アイデアを出そうとしてもデモ以上のものが出てこないし。だから、ドラムのフィルひとつ考えるのもすごく時間をかけました。
らな タイアップ曲で注目を集めるからこそ、自分が参加する意味というか、バンドらしさは出さないといけないと思ったけれど、シンプルな曲なのですごく難しい。そこはメンバーや保本さんに相談しながら考えました。例えばサビの盛り上がるところで、グリスで「ブン、ブーン!」というように少し暴れてみたりとか(笑)、曲の世界観を壊さないようにしながら、ベースの面白さも足していくことが実現できたかなと思います。
こうき 今回、こうやってバラードに挑戦したことで、ひとつアレンジ面で克服できたというのはありますね。もともとバラード曲を書くのは得意な方だったのですが、バンドでやるといつも普通だな、もっと面白いことをやりたいなって思うことが多かったので、大きな学びになりました。
――プロデューサーの保本さんの存在は大きかったということですよね。
こうき 基本は僕が作ったアレンジなんですけれど、それを保本さんが、僕らの意見を汲み取りながらも、「こうしたほうが聞こえ方が面白いよ」とか客観的にアドバイスをしていただきました。
こた フレーズだけでなくドラムの音作りもこだわっていて、落ち着きのあるタイトなサウンドにしようということで、布をたくさんかけてほぼスティックが当たった時の音しか出ていないくらい。ドラムとベースの音だけ聴いたら、ヒップホップみたいだなって。
らな バラードだけどあえて新しいことにチャレンジしたというのが、この曲の面白さだと思います。
――歌詞に込めたメッセージはどういうものだったのでしょうか。恋愛の終わりのイメージがありますが。
こうき ドラマがBL(ボーイズラブ)をテーマにしていることもあって、そこからインスパイアされていることが大きいですね。BLってまだまだ理解されないことも多いじゃないですか。今の世の中って、他人の意見やご時世的なものなんかにすごく振り回されて、自分にとって本当に大切なものを見失いがちになると思うんです。だから、恋愛をテーマにしていますが、自分の大切なものは何だったんだろうって考え直せるような曲を作ろうと思ってこの歌詞を書きました。
こた 歌詞の大枠とニュアンスはこうきが考えてきて、それを僕らが「ここの表現はこうしたほうがいい」など意見を出して、一緒に考えていったという感じですね。
らな 最近は割とそうなんですけれど、みんなの意見をこうきがまとめていくというやり方で歌詞ができていきました。スケジュールはタイトだったけれど。
――そうなると、「花瓶」はタイアップがあったからこそ、みんなで作り上げた一曲といっていいですよね。
こうき そうですね。タイアップのように制約というか決まりごとがある中で曲を作るのは、けっこう好きなんですよ。あとは、タイアップで耳にして、「この人たち、こういう曲をドラマやアニメのタイアップをやっていたんだ」って実感することは今も多いですよね。SNSでバズる時代ですけれど、それって廃れるのも早いのかなって。だったらしっかりとタイアップがついているほうが、見え方も違うと思いますね。
らな 私たちはヒゲダン(Official髭男dism)の「Pretender」と、King Gnuの「白日」が出てきたときにインパクトを受けた世代なんですよ。だからタイアップが決まったことはうれしかったです。
こた ただすごいプレッシャーはありました。こうきは楽しそうに作っていたからよかったですけど(笑)。でも、こうやってひとつ決まったことでプロフィールに載せられる一曲になったことは単純にうれしいですね。
――3曲連続リリースやライブなど、特に高校を卒業してからのこの半年くらいは、かなり密度が濃かったと思うのですが、振り返ってみてどうでしょうか。
こうき すごく長い感じがします。卒業して2年くらい経っているような感覚がしていたんですが、この間、「まだ半年なんだ」って気づきました(笑)。
らな たしかに長く感じるよね。でもこの3曲リリースするなかで、これまで自分たちが経験してこなかったこと、リリースからプロモーションまでその1曲に対するアプローチができたことはとてもよかったと思います。ひとつずつ自分たちがスキルを身に着けていって、プロフェッショナルに向かっていることをすごく実感しているんですよ。
こた 本当にやりたいことをやらせてもらっていますね。その分、ココラシカを聴いてくれた人、ライブに来てくれた人に、何か届けたい、伝えたいという気持ちがすごくあるし、ライブに来てくれたお客さんには充実感というか、少しでも満たされたと感じて帰ってもらいたいなって最近は思います。
こうき 今、すごく自分たちの環境や状況に満足しているんですが、どこかで慢心してはいけないなっていう気持ちもあるんです。今見えているビジョンは確実ではないし、そこに向かって頑張ることが重要で、それは忘れちゃいけないなって。そのあたりはストイックに、でもクリエイティブに進んでいきたいですね。
らな もちろん、まだ自分たちの技術には満足していないんですけれど、やりたいことを曲に落とし込めるということに関しては満足度が高いですね。だからこそ、もっと頑張らないといけないんです。ただ、この半年でいろんなことが変化していますが、ココラシカの音楽をいろんな人に聴いてもらいたいという、基本的な理念や方向は変わってないですね。
こた 心の隅にでもいいし、頭の隅っこでもいいし、どこかしら僕ら音楽が誰かに響いてればいいなっていうのは、最近思います。
こうき
ライブもお客さんが増えてきたことで、僕らも120%の自分を出せていると感じることがあるんです。これって、自分たちだけの力ではないんですよ。もっといろんな人を巻き込んでいって、みんなで幸せな空間を作っていきたい。だから、さらにもっと大きくならないといけないなって、ずっと考えています。
Text:栗本斉(音楽と旅のライター/選曲家)
<リリース情報>
デジタル・シングル「花瓶」
11月12日(火) リリース
<ライブ情報>
ワンマン・ライブ『三原色』
2025年3月20日(木・祝)東京・渋谷Spotify O-crest
開場 17:30 / 開演18:00
料金:前売3,000円 / 当日3,500円
※ドリンク代別途必要
ココラシカX:
https://x.com/cocola_deer