貧困問題の象徴「ネットカフェ難民」という言葉が’07年に生まれ、その後東京都の一斉調査で都内に4000人いることが判明してから6年。現在、問題視されているのが、長期化だ。出口の見えない実態に迫る。
約7年間のネカフェ生活を抜け出せたワケ
川口敬子さん(仮名・53歳)は約7年間もネットカフェ生活を送っていたが、現在はアパートを借りて、生活保護を受けながら暮らしている。
宗教2世として生まれ、家庭不和と極貧の中で育った川口さん。おまけに外国人とのハーフであることから就職差別を受けるのも日常茶飯事だった。そして生活苦に耐えられず窃盗に手を染めたときから、「転落が始まった」という。
「服役して出所しても前科があるので、まともな働き口を見つけられず、また犯罪をして捕まる……の悪循環でした」
そうして逮捕が計4回、10年以上を刑務所で過ごした川口さん。出所後に受け入れてくれる場所はなく、支援団体を通じて生活保護を申請せざるを得なかった。しかし、不信感だけが募ったという。
「月13万円の生活保護費のうち、10万円以上を宿泊所の家賃に取られるような貧困ビジネスばかりでした。それで、ネカフェのほうがよほどマシだという結論に至りました」
原則、住民登録ができないネットカフェ暮らしでは生活保護を受給できない。しかし川口さんは以前に住んでいた住所で申請し、ケースワーカーも確認することはなく“グレーな状態”で認可された。
支援団体の当たり外れも難民を抜け出せない一因に
その後も脱却の糸口を探るべく、支援団体などを探し続けたが……。
「真剣に相談しているのに『結局どうしたいの?』『話が長い』などと心ない言葉を浴びせられることもしばしば。また、相談しに行っても、自分の手柄や自己実現のために形式的に対応している雰囲気が透けて見えてしまった。団体内で内紛が起きている様子も見て、『こんなところに助けを求めるだけムダだな』と思いました」
そんななか、とある団体との出合いが運命を変えた。
「荷物が多すぎて、ネカフェ側から消防法違反になると追い出され、それで仕方なく、荷物を預かってくれるNPOを探すことになりました」
あらゆる団体に断られ途方に暮れるなか、荷物を預かり、部屋探しを支援してくれたのが前出の団体だった。
川口さんの経験は、長期ネカフェ生活から抜け出すためには、片っ端から支援団体に当たるしかない状況を示唆している。当事者のニーズを適切に把握し、支援する存在が不可欠だろう。
取材・文/週刊SPA!編集部
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