サマータイムが終わり、お店には早くもクリスマス用品が並び始め、冬の訪れが静かに感じられるパリ。レースもいよいよ終盤に差し掛かり、コース上での旧車イベントは今年のカレンダーを消化した。11月の第一週日曜日。久しぶりにヴェルサイユのミーティングを覗いてみようと思い立ち、愛車R1100Sに跨がって会場に向かった。油断していたわけではないが、もう寒い。空気が冷たく、そろそろ防寒対策が必要な季節だと感じる。
【画像】様々な国籍の車が集い賑わう、ヴェルサイユの旧車ミーティング(写真33点)
会場に到着すると、珍しく誘導員が入り口で交通整理をしていた。教会前の広場が会場になっており、日曜礼拝の人々で混雑しているかと思いきや、その賑わいは圧倒的に旧車たちの方だった。入りきれないほどの盛況ぶりで、場内はまさに大混乱といえる熱気に包まれている。これほどの活気をここで見るのは初めてだ。そういえば、フランスは「諸聖人の日」があるので、ちょうど2週間のバカンス真っ最中だ。それもあって参加車両が増えたのかもしれない。いつもは端に追いやられるバイクも、車たちと一緒に並べられている。どこも隙間なく、それでも同車種や同年代の車をできるだけ並べている様子が見て取れる。
アストンマーティンはDB2/4、DB4、DB5が揃い、ポルシェも最多参加で、ミニも並び、まさにミーティングらしい光景だ。普段の自由奔放な雰囲気より少しはイベントらしさが出ている。
バイシクレットも、チューニングされたカスタムメイドがこれまた楽しい。フランス特有のカスタムと言って良いだろう。原付バイクの免許は14歳から取得できるため、当時は初めてのバイクをより個性的で速くしようと競ってカスタムが流行した時代があったのだろう。オーナーたちはその時代を生きた世代のようだ。
会場でひときわ目立つのはピンクのフィアット500。ボディだけでなく、車内に飾られたぬいぐるみもピンクで、オーナー自身もピンクのジャケットと帽子を身に着けている。元々はグレーだったようだが、塗り替えを考えたときに奥さんがピンクを選んだという。しかしピンクはフィアットのオリジナルカラーにはないため、最初はためらいもあったようだ。そんな折、シチリア島でイタリア国内向けのフィアットパンダに純正でピンクがあることを知り、思い切ってピンクに塗り替える決心をしたという。エンジンは650ccに換装され、イベントやラリーに多数参加している。愛車の横に立ち、声をかけられるのを待っているオーナーは、特に女性から声をかけられるのを楽しんでいるようで微笑ましい。
バイクではグリーンのカワサキKR1000レプリカが目を引く。ベースはカワサキZXR1200R。カワサキが大好きで5台所有しているという。こだわりはカウルのスポンサーのロゴなどをステッカーではなく塗装で表現していること。ヘルメットやグローブもバイクに合わせてグリーン。ちなみにヘルメットは僕と同じアライのラパイド・ネオで、フランスではほとんど見かけないため、僕以外にラパイド・ネオを見かけたのはこれで2回目だ。このオーナーもイギリスで購入したらしい。
オーナーたちと話をしているうちに、あっという間に時間が過ぎ、教会の鐘が正午を告げると、このミーティングは終了となった。皆バタバタと帰り支度を始め、あちこちでエンジンがかかり出す。動き出した車をビデオに収めようと、見物人たちが一斉にスマホを取り出し始める。撮られていると気付くと、車もゆっくり走ったり、写真撮影だと思って止まったりと、楽しい渋滞が生まれる。こうして、11月最初の日曜日、「諸聖人の日」のバカンス最終日が過ぎていくのであった。
写真・文:櫻井朋成Photography and Words: Tomonari SAKURAI
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