日本国内ではPrime Videoで見放題独占配信中、韓国では動画配信サービスCOUPANG PLAYで配信中の坂口健太郎とイ・セヨンがW主演を務めるドラマ「愛のあとにくるもの」(全6話)は、日本と韓国を行き来しながら物語が展開する。潤吾(坂口健太郎)とチェ・ホン(イ・セヨン)が愛し合った過去の日本と、別れたあと、偶然の再会を果たす現在の韓国だ。
【写真を見る】潤吾とチェ・ホンが愛を育むロマンチックな一夜…本作に欠かせないロケ地、井の頭公園
原作は辻仁成とコン・ジヨンのコラボレーションによる恋愛小説で、東京の井の頭公園が重要な舞台となっている。桜の季節、花見客であふれる井の頭公園での撮影というのは非常に難しいところ、粘り強く交渉した制作陣と「東京ロケーションボックス」の努力が実って実現した。「東京ロケーションボックス」は、映画やドラマのロケ地情報の提供や、調整役として撮影をサポートする東京都の窓口だ。特に海外作品は東京の魅力を海外で知ってもらう絶好のチャンスでもある。20年以上にわたって日韓作品に携わってきた「愛のあとにくるもの」のプロデューサー、チェ・ジニョクと、「東京ロケーションボックス」の遠藤肇に撮影秘話を語ってもらった。
チェ・ホンは日本留学中に小説家志望の大学生、潤吾と出会い、運命的に恋に落ちる。だが、忙しい潤吾は、海外暮らしの彼女の寂しさに気づけず、2人の間の溝が埋まらぬままチェ・ホンは帰国。5年の歳月を経て、父の出版社で働き始めたチェ・ホンと、小説家となって韓国へやって来た潤吾は再会を果たす。
■「井の頭公園での撮影は譲れないということで、交渉を重ねた末なんとかOKに」(チェ)
――まずこの企画がどのように始まったのか、教えてください。
チェ・ジニョク(以下、チェ)「(本作を手掛けた)ムン・ヒョンソン監督とはデビュー作のころからの付き合いで、以前からラブストーリーを撮りたがっていました。それで10年ほど前からこの原作でぜひドラマをつくりたいと考えていて、5年ほど前からは何度もシナリオハンティングに東京へ来ていました。吉祥寺や井の頭公園については東京に住む私よりも詳しいくらいで、ムン監督の頭の中では、随分前からどこでどう撮るかというプランができあがっていました」
――井の頭公園は撮影許可を取るのが難しそうですが。
チェ「実際に最初は難しいと言われましたが、先ほど申し上げたとおり監督にはすでにプランがあったため、どうしてもここでの撮影は譲れないということで、交渉を重ねた末、なんとか撮影OKになりました。ところが問題は人数制限で、スタッフと出演者合わせて10人以下で、という条件が出されました。池がある公園はほかにもあると、ロケ地の変更を促す声もありましたが、監督はやっぱりどうしても井の頭公園で撮りたい。最終的には30人限定で許可をもらって、スタッフが交代しながら撮りました」
遠藤肇(以下、遠藤)「井の頭公園は武蔵野市と三鷹市にまたがる都立公園なんです。それぞれ自治体にフィルムコミッションがありますが、都立公園の管轄は東京都の建設局なので東京ロケーションボックスが間に入って交渉するんです。僕らが関わることで、ちょっと条件を緩和してもらえることが多い。ただ、桜が咲く時期に撮りたいというので、困りました。花見の時期、都立公園は取材以外の撮影は基本的に禁止なんです。人が集まり過ぎるので。それをなんとか許可してもらうため何度もお願いに通って、手を変え品を変え少しずつ条件を緩和してもらって、撮影ができる状態まで持っていったというのが真相です」
――各自治体のフィルムコミッションと「東京ロケーションボックス」が一緒に動くんですか?
遠藤「そうです。お互いに情報共有しながら一緒にサポートします。」
――桜のシーンは特に印象的でした。
チェ「そうして粘り強く交渉したのに、今年は例年よりも桜の開花が遅く、井の頭公園での撮影予定の日に全然咲いてくれなかった。なんとかまた交渉してスケジュールをずらしていただきました。それが逆によかった。本来は3月末か4月頭に撮影予定だったのですが、そのころだったら学校の春休み期間にあたるので、もっと多くの花見客であふれていたと思います。開花が遅れて、新学期が始まり、平日は花見客が比較的少なかった」
遠藤「我々は海外からの映画やドラマの撮影に関して、積極的に来てくださいと誘致しているので、ぜひとも桜の季節に井の頭公園での撮影を成立させてあげたいと思って、一生懸命動きました。最近は海外作品のロケに助成金も出しています」
――桜のシーンは全部、井の頭公園で撮ったのですか?
チェ「ほとんどは井の頭公園ですが、主人公2人が花見に行って、座って桜を眺めながら仲が深まっていくシーンは、埼玉県の川越水上公園です。川越では小泉今日子さんが出演するシーンも撮りました」
■「作品を観て、ロケ地巡りに東京へ来てもらうという効果を期待しています」(遠藤)
――海外作品の誘致に積極的なのは、観光地としてのPR効果を狙ってということでしょうか?
遠藤「そうです。二次効果というのですが、東京で撮影された映画やドラマが世界に公開、配信されたりして、東京の魅力を知ってもらうということ。作品を観て、ロケ地巡りに東京へ来てもらうという効果を期待しています。特に海外作品に関しては一次効果も狙っています。予算規模の大きな作品だとたくさんのスタッフが来るので宿泊費などもかなり大きな金額になります。アメリカや中国の作品だと予算が桁違いに大きいこともあります」
――「愛のあとにくるもの」は韓国から何人くらいの関係者が来日したのですか?
チェ「40~50人くらいです。韓国の最近のドラマにしては予算規模が大きいほうではないんですが、日本の普通のドラマに比べて2倍くらいの時間をかけて丁寧に撮りました。日本での撮影期間は約2か月です。日韓両国の視聴者が観て納得できる作品をつくろうというのが目標でした。日韓のスタッフがそれぞれの国の事情を話し合いながら、台本を何度も直しながら作り上げました」
――韓国での反響はいかがですか?
チェ「最近の韓国のドラマは刺激の強い作品が多いのですが、本作は様々な感情を表現していて、セリフも日本語が多いので、韓国の視聴者に受け入れられるか、僕らも予測することがなかなか難しかったです。でも、配信が始まると予想以上に評価が高くてびっくりです。監督含めみんな大喜びしています」
■「実はラーメン店のロケ地調整も、井の頭公園の次に大変だったんです」(チェ)
――井の頭公園、吉祥寺、川越、そして京都でも撮っていますよね。そのほかのロケ地は?
遠藤「上野でも撮りました。本編では吉祥寺の設定ですが、東上野のコリアンタウンにあるラーメン店で撮りました。僕も撮影の時に行きましたが、上野なのに店の外に貼ってあるポスターは吉祥寺と書かれたものばかり。もちろん撮影用ですが。台東区は都内でも特にフィルムコミッションが活発なところで、撮影による経済効果の数字を区の議会に報告するなどとても熱心です」
チェ「実はラーメン店のロケ地調整も、井の頭公園の次に大変だったんです。最初の台本では、ラーメン店とコンビニが向かい合っているという設定でした。ただ、東京のラーメン店は非常に狭い店が多く、撮影に適したラーメン店で、かつコンビニが向かいにある所を何か月も探し回ったけれど見つからず。ある時、上野の辺りでロケハンを終えて喫茶店でホットサンドを食べながら僕が言ったんです。『コンビニじゃなくて、ホットサンドを売るキッチンカーでもいいんじゃないですか?』って(笑)。それなら前にキッチンカーを停めるスペースのあるラーメン店を探せばいい。監督も納得して、それで見つかったのが上野のラーメン店でした」
――ほかに撮影で苦労したことは?
チェ「韓国からのスタッフはみんな、日本の春はもっと暖かいものだと思っていましたね。今年の春は寒くて、みんな日本で厚手の服を買って寒さをしのぎました。また、井の頭公園での撮影は残念ながら雨が多く、よく見ると雨が映っていると思います。雨と寒さとの戦いでしたね」
――東京で特に撮影希望の多いスポットは?
遠藤「歌舞伎町や渋谷のスクランブル交差点は昔から海外からの撮影希望が多く寄せられていましたが、以前は制限が厳しくてほとんど認められなかった。でも我々が規制緩和の方向で努力して、一定の制限のもとで撮影できるようになってきました。またどんどん撮影の相談をしていただきたいです」
チェ「最近は韓国の制作会社などから東京で撮りたいという問い合わせがたくさん来ているので、ぜひよろしくお願いします」
取材・文/成川彩
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