今年5本目となる出演映画『アイミタガイ』の公開スタートした藤間爽子さん(30歳)。
三代目・藤間紫の名跡を継いだ日本舞踊家の藤間さんですが、放送中の主演ドラマ『つづ井さん』(読売テレビ)も好調で、女優としても快進撃を続けています。
黒木華さん演じる主人公を軸に、さまざまな人の想いが繋がっていくヒューマンドラマ『アイミタガイ』で、キーパーソンを演じた藤間さんにインタビュー。舞踊家としてではなく、俳優としてのデビューは朝ドラ『ひよっこ』だった藤間さんに、これまで実に3作品(『ひよっこ』『ちむどんどん』『ブギウギ』)に出演してきた朝ドラの思い出も聞きました。
大切にしていかなきゃなと感じたタイトルと、込められた意味
――『アイミタガイ』とは不思議なタイトルで、聞いたことがありませんでした。(※「相身互い」……人が互いに助け合うことを指す)
藤間爽子さん(以下、藤間):私も聞いたことがありませんでしたが、ステキな言葉だなと感じましたね。こうしたステキな言葉は、きっと他にもあるんだろうなと思いますし、大切にしていかなきゃと感じますね。私も今回の映画で知ることができてよかったと思います。
――藤間さんが演じた叶海は、黒木華さん演じるウェディングプランナーの梓の親友ですが、映画が始まってほどなく亡くなってしまいます。しかし梓の心の中心にいつもいる存在で、後半に従って両親も知らなかった人物像が見えてきます。とても重要なキャラクターですが、どんな思いで臨みましたか?
藤間:たしかに叶海は重要な役です。でもこの物語は、いろんなエピソードのすべてが、映画を観終わると、ぜんぶ繋がっていたということの良さ、人と人との繋がり、互いに影響を与えたり、受けていたこと、しかも意図せずにそうなっていた、ということのステキさを感じさせてくれます。なので演じる役柄の重要性といったことは、特別意識していなかった気がします。
自分へのご褒美にカメラを購入。毎日が充実
――叶海はカメラマンですが、藤間さんがカメラを渡されて「好きなものを撮っていいよ」と言われたら何を撮りたいですか?
藤間:私、少し前にカメラを買ったんです。
――この作品から影響を受けてですか?
藤間:この作品の前の現場でもカメラを持っている方たちがたくさんいらして、すごく楽しそうにしていたので、ずっと欲しいと思っていたんです。それで、「最近、自分にお金を使っていなかったな」と思ったので、「ご褒美だ!」と思って、家電量販店に行って、そこのリーダーさんに「誰でもいい感じに簡単に撮れるカメラ」を聞いて、おススメを買いました。
――どんなものを撮っているんですか?
藤間:人も自然もいろいろ撮るんですが、カメラを持っていると、日ごろ気に留めていなかったところや良さに目が行くんです。「こんなところに道があったんだ」とか。
ちょっと前に沖縄に行ったんですけど、そのときに海や、月や夕焼けの写真を撮ったりしたんです。すごくいいグラデーションが収められたりして、お気に入りの1枚になりました。カメラを持っていると、こんなに日々の生活が充実するんだなと、最近楽しいです。
朝ドラ『ひよっこ』でオーディションには落ちたけれど
――続けて藤間さんご自身について教えてください。日本舞踊紫派藤間流の家元でもありますけれど、このところ、女優業が引っ張りだこです。そしてその女優としてのデビューは連続テレビ小説『ひよっこ』です。
藤間:そうか、『ひよっこ』がデビューになりますかね。友達役のオーディションがあって、参加したんですけど、落ちてしまって。それで白石加代子さんの若い時の役で少し出させていただいたんです。でもセリフもないし、ただの回想で、元芸者で踊れるということを見せたいからと。デビューといっていいのかどうか。
――とはいえ、反響は。
藤間:すごかったです。朝ドラってやっぱりすごいんですよね。特にうちのお弟子さんは、朝ドラを欠かさず見てらっしゃる方が多くて。出るとも伝えていなかったので、みんなビックリしてました。普通に見てたら、名前が出て来てビックリしたと(笑)。
元々はなかった『ブギウギ』のお座敷シーン
――そして『ちむどんどん』。
藤間:初めてセリフのある役でお芝居をさせていただいて、『ブギウギ』でお芝居も踊りも両方できました。
――私は日本舞踊を観るほうも全くの素人ですが、『ブギウギ』で藤間さんがお座敷のシーンで登場した瞬間に、「本物は違う!」としびれました。
藤間:嬉しいです。元々ああいったシーンは作る予定はなかったけれど、作ってくださったみたいなんです。ありがたいですよね。
『ブギウギ』は大阪局で制作されていて、主演の趣里さんはずっと大阪にいましたが、私はちょこちょこ通いでした。子どものときから後半になって顔つきがどんどん変わっていくのが、すごいなと思ってました。
『ブギウギ』スズ子との再会シーンで趣里からの提案が
――藤間さんもひとりの人物の一生を、通して演じてみたいですか?
藤間:そうですね。一度はやってみたいです。『ブギウギ』ではスズ子との再会のシーンが、一番印象に残っているんですけど、それも、タイ子のその間は描かれてません。趣里さんとも会っていなかったので、しっかり感情が乗せられるか、実は緊張していました。
でもあの撮影では、とても趣里さんに感謝しています。私の気持ちを汲み取って事前のテストをなしに「もう撮りましょう」と提案してくれて。長回しだったんですけど、本番になった瞬間に、子どものころに戻って涙が止まらなくなりました。趣里さんのおかげだったと本当に感謝しています。
――今回の『アイミタガイ』に通じることではないですが、趣里さんだったからという“縁”を感じますか?
藤間:“縁”でいえば、趣里さんのお父様(水谷豊)と、私の母(島村佳江)は、昔共演してるんですよ。「私たちの親って、昔共演してるんだよね!」って、そんな話をして盛り上がって、それで今自分たちがこうして共演してるんだなって、自分の中でグッときてました。
御年91歳、草笛光子の出演シーンも見どころ
――ところで、藤間さんのおばあ様の初代・藤間紫さんも晩年まで舞台に立たれていましたが、『アイミタガイ』に出演の草笛光子さん(91歳)も先輩として素晴らしいですね。藤間さんは、今年は『九十歳。何がめでたい』でも共演されています。
藤間:『アイミタガイ』では残念ながら共演シーンはなかったんですけど、完成作を観たら、本当に素晴らしかったですね。
――草笛さん、美しいドレスを着て、ピンヒールを履いて。
藤間:本当ですよね! ピンヒールでスッと背筋を伸ばして歩かれて。今回はピアノを弾く役柄で、クランクイン前に練習されたと聞きました。本当にすごい先輩だなと思います。
――最後にもうひと言。『アイミタガイ』を藤間さんがご覧になって、感じたこと何かひとつお願いします。
藤間:今って、何でも意味のあることを見つけて従おうとするけれど、後になってから、「影響されていたんだ」とか、「そういうことだった」と気づくくらいのほうがいいのかなって。そういう人生のほうがいいんじゃないかなと最近思います。そんなことを感じさせてくれる映画でもあるなと思います。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
(C) 2024「アイミタガイ」製作委員会
『アイミタガイ』は11月1日より全国公開中
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi
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